小児先天性疾患および難治性疾患における遺伝子診断法の標準化と国内実施施設の整備

文献情報

文献番号
200822004A
報告書区分
総括
研究課題名
小児先天性疾患および難治性疾患における遺伝子診断法の標準化と国内実施施設の整備
課題番号
H18-子ども・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 勤(国立成育医療センター研究所 小児思春期発育研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学医学部)
  • 池川 志郎(独立行政法人理化学研究所 ゲノム医科学研究センター)
  • 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター 遺伝科)
  • 清河 信敬(国立成育医療センター研究所 発生・分化研究部)
  • 林 泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 新保 卓郎(国立国際医療センター研究所 医療情報解析研究部)
  • 小杉 眞司(京都大学医学研究科 医療倫理学・遺伝子診療部)
  • 掛江 直子(国立成育医療センター研究所 成育政策科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子検査は、多くの小児先天性疾患や難治性疾患の診断・治療を行う上で重要な役割を果たしているが、その臨床的基盤は極めて脆弱である。本研究の目的は、新しい変異検出技術を取り入れた標準的遺伝子診断法の確立と、長期的に遺伝子診断を継続できる国内中核施設の拠点化により、遺伝子診断研究の成果を医療に還元する体制を整備することである。
研究方法
診断拠点と支援体制の整備、および、遺伝子診断の標準化を行った。
結果と考察
遺伝子診断の標準化では、ヌーナン症候群およびその類縁疾患を対象とする遺伝子診断チップを用いた遺伝子診断、インプリンティング疾患迅速診断法の開発、高速遺伝子変異スクリーニング法の開発、遺伝子変異診断法の精度管理、分子細胞遺伝学的診断に必要なプローブの開発と精度管理、小児固形腫瘍小児血液系腫瘍における遺伝子診断法の標準化と精度管理を行った。
診断拠点と支援体制の整備では、成育疾患遺伝子医療システムの構築、遺伝子診断における費用対効果の評価と医療経済的支援体制の確立、遺伝子診断の拠点化に必要な全国的遺伝カウンセリング体制の整備、遺伝子診断の拠点化に伴う倫理的基盤の確立を行った。また、小児遺伝学会と連携して遺伝子診断委員会を、小児内分泌学会と連携して性分化委員会、遺伝子診断予備委員会、希少疾患研究予備委員会を設置した。これにより、学会と協調して臨床的遺伝子診断を進める基盤が整備された。また、委員会として、学会指針の原案を提出した。
このうち、成育疾患遺伝子医療システムの構築は、臨床診断と遺伝子診断に大きく寄与し、全国の患者および医師に有用な情報を発信する拠点となる。今後、関連学会と密接な連携を組み、このシステムを円滑に運営することが重要である。遺伝子診断の支持基盤の整備では、学会との連携が進み、試案を提出できたことが特筆される。
結論
新しい変異検出技術を取り入れた標準的遺伝子診断法の確立と、長期的に遺伝子診断を継続できる国内中核施設の拠点化により、遺伝子診断研究の成果を医療に還元する体制が形成されてきた。また、成育疾患遺伝子医療システムの構築、遺伝子診断チップの開発、高速変異スクリーニング法の開発、遺伝子診断プローブの作製、標準化のための変異パターン同定、腫瘍性疾患の解析システム、遺伝カウンセラーの育成、医療経済的基盤の検討、学会との連携が進められた。

公開日・更新日

公開日
2009-08-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200822004B
報告書区分
総合
研究課題名
小児先天性疾患および難治性疾患における遺伝子診断法の標準化と国内実施施設の整備
課題番号
H18-子ども・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 勤(国立成育医療センター研究所 小児思春期発育研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学医学部)
  • 池川 志郎(独立行政法人理化学研究所 ゲノム医科学研究センター)
  • 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター 遺伝科)
  • 清河 信敬(国立成育医療センター研究所 発生・分化研究部)
  • 林 泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 新保 卓郎(国立国際医療センター研究所 医療情報解析研究部)
  • 小杉 眞司(京都大学医学研究科 医療倫理学・遺伝子診療部)
  • 掛江 直子(国立成育医療センター研究所 成育政策科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子検査は、多くの小児先天性疾患や難治性疾患の診断・治療を行う上で重要な役割を果たしているが、その臨床的基盤は極めて脆弱である。本研究の目的は、新しい変異検出技術を取り入れた標準的遺伝子診断法の確立と、長期的に遺伝子診断を継続できる国内中核施設の拠点化により、遺伝子診断研究の成果を医療に還元する体制を整備することである。
研究方法
診断拠点と支援体制の整備、および、遺伝子診断の標準化を行った。
結果と考察
遺伝子診断の標準化では、遺伝子診断チップを用いた遺伝子診断、インプリンティング疾患迅速診断法の開発、高速遺伝子変異スクリーニング法の開発、遺伝子変異診断法の精度管理、分子細胞遺伝学的診断に必要なFISHプローブおよびMLPAプローブの開発と精度管理、小児固形腫瘍小児血液系腫瘍における遺伝子診断法の標準化と精度管理を行った。
診断拠点と支援体制の整備では、成育疾患遺伝子医療システムの構築、遺伝子診断における費用対効果の評価と医療経済的支援体制の確立、遺伝子診断の拠点化に必要な全国的遺伝カウンセリング体制の整備、遺伝子診断の拠点化に伴う倫理的基盤の確立を行った。また、小児遺伝学会と連携して遺伝子診断委員会を、小児内分泌学会と連携して性分化委員会、遺伝子診断予備委員会、希少疾患研究予備委員会を設置した。これにより、学会と協調して臨床的遺伝子診断を進める基盤が整備された。また、委員会として、学会指針の原案を提出した。
成育疾患遺伝子医療システムの構築は、臨床診断と遺伝子診断に大きく寄与し、全国の患者および医師に有用な情報を発信する拠点となる。今後、関連学会と密接な連携を組み、このシステムを円滑に運営することが重要である。そのための基盤整備が進んでいると考えられる。遺伝子診断の支持基盤の整備では、学会との連携が進み、試案を提出できたことが特筆される。
結論
新しい変異検出技術を取り入れた標準的遺伝子診断法の確立と、長期的に遺伝子診断を継続できる国内中核施設の拠点化により、遺伝子診断研究の成果を医療に還元する体制が形成されてきた。また、成育疾患遺伝子医療システムの構築、遺伝子診断チップの開発、高速変異スクリーニング法の開発、遺伝子診断プローブの作製、標準化のための変異パターン同定、腫瘍性疾患の解析システム、遺伝カウンセラーの育成、医療経済的基盤の検討、学会との連携が進められた。

公開日・更新日

公開日
2009-08-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200822004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新規性分化異常症責任遺伝子MAMLD1 (CXorf6)の同定と機能解析(Nature Genetics 2006)、第14染色体インプリンティングセンターの同定と各遺伝子の臨床的役割の解明(Nature Genetics 2008)、骨軟骨発生におけるSLC35D1の役割の解明(Nature Medicine 2008)など、複数の論文がトップジャーナルに掲載された。また、本研究過程において、同定された内分泌撹乱物質感受性ハプロタイプの同定は、世界初の成果の1つである。
臨床的観点からの成果
遺伝子診断研究の成果を臨床に還元する体制が整備されてきた。また、本研究期間において、きわめて多数の患者の遺伝子診断がさなれ、臨床的に大きく貢献した。また、白血病の遺伝子診断成果が治療法の選択に応用できるようになった。また、小児期の固形腫瘍に対するほぼすべてのキメラ遺伝子検出検査法の全国的スタンダードを確立し、国内の医療機関からの依頼に対応可能な体制を整えた。
ガイドライン等の開発
小児遺伝学会と連携して遺伝子診断委員会を、小児内分泌学会と連携して性分化委員会、遺伝子診断予備委員会、希少疾患研究予備委員会を設置した。そして、小児遺伝学会から「小児遺伝学領域において医学的に臨床的有用性が確立されている疾患・遺伝学的検査」についての小児遺伝学会の見解(案)を発表した。
その他行政的観点からの成果
医療の均てん化に向けて、高品質かつ均一な遺伝子診断サービスの実施、および、臨床診断や治療方針相談システムの整備により、全国の病院・患者に等しく遺伝子診断技術を提供できる基礎が構築された。
細胞遺伝学的診断プローブの開発を、日本人類遺伝学会臨床細胞遺伝学認定士制度委員会における認定士到達目標に反映させ、染色体微細欠失症候群の最新の概念を認定士教育に利用する予定である。
現在進められている遺伝カウンセラーの養成において、具体的ニーズを明確にすると期待される。
その他のインパクト
日経新聞朝刊、日経産業新聞朝刊掲載(新規性分化異常症責任遺伝子CXorf6の同定に
ついて)2006年11月、緒方勤
読売新聞朝刊特集記事2007年2月、日経新聞朝刊掲載2007年1月(内分泌撹乱物質感受
性ハプロタイプの同定について)緒方勤
朝日新聞朝刊掲載、読売新聞朝刊掲載、毎日新聞朝刊掲載(第14染色体インプリンテ
ィング領域の異常による疾患)2008年1月緒方勤
シンポジウム開催: 2007年9月。希少遺伝性疾患の遺伝子診断をめぐって。第52回人類
遺伝学会。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
72件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
本研究費によることを明示した報告はありません
学会発表(国際学会等)
0件
本研究費によることを明示した報告はありません
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
7件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukami M, Wada Y, Miyabayashi K, et al.
CXorf6 is a causative gene for hypospadias
Nature Genetics , 38 (12) , 1369-1371  (2006)
原著論文2
Fukami M, Kato F, Tajima Fukami M, Kato F, Tajima T, et al.
Transactivation function of a ~800 bp evolutionally conserved sequence at the SHOX 3’ region: implication for the downstream enhancer
Am J Hum Genet , 78 (1) , 167-170  (2006)
原著論文3
Homma K, Hasegawa T, Nagai T, et al.
Urine steroid hormone profile analysis in cytochrome P450 oxidoreductase deficiency: implication for the backdoor pathway to dihydrotestosterone
J Clin Endocrinol Metab , 91 (7) , 2643-2649  (2006)
原著論文4
Watanabe M, Yoshida R, Watanabe M, Yoshida R, Ueoka K, et al.
Haplotype analysis of the estrogen receptor a gene in male genital and reproductive abnormalities
Human Reproduction , 5 , 1279-1284  (2007)
原著論文5
Sato N, Kamachi Y, Kondoh H, et al.
Hypogonadotropic hypogonadism in an adult female with heterozygous hypomorphic mutation of SOX2
European Journal of Endocrinology , 2 , 167-171  (2007)
原著論文6
Seishima M, Mizutani Y, Shibuya Y, et al.
Hepatoblastoma in a patient with PTPN11 mutation positive Noonan syndrome
Pediatric Blood & Cancer , 50 (6) , 1274-1276  (2007)
原著論文7
Kagami M, Sekita Y, Nishimura G, et al.
Deletions and epimutations affecting the human chromosome 14q32.2 imprinted region: implications for the phenotypic development in paternal and maternal uniparental disomy for chromosome 14
Nature Genetics , 40 (2) , 237-242  (2008)
原著論文8
Kagami M, Sekita Y, Nishimura G, et al.
Deletions and epimutations affecting the human chromosome 14q32.2 imprinted region: implications for the phenotypic development in paternal and maternal uniparental disomy for chromosome 14
Nature Genetics , 40 (2) , 237-242  (2008)
原著論文9
Fukami M, Dateki S, Kato F, Hasegawa Y, et al.
Identification and characterization of cryptic SHOX intragenic deletions in three patients with Leri-Weill dyschondrosteosis
Journal of Human Genetics , 53 (5) , 454-459  (2008)
原著論文10
Yamazawa K, Kagami M, Nagai T, et al.
Molecular and clinical findings and their correlations in Silver-Russell syndrome: implications for the critical role of IGF2 as the growth determinant and the differential imprinting regulation of the IGF2–H19 domain in bodies and placentas.
Journal of Molecular Medicine , 86 (10) , 1171-1181  (2008)
原著論文11
Iso M, Fumami M, Horikawa R, et al.
SOX10 Mutation in Waardenburg Syndrome Type II
Americam Journal of Medical Gneteics A , 146 (16) , 2162-2163  (2008)
原著論文12
Dateki S, Fukami M, Sato N, et al.
Mutation in a patient with anophthalmia, short stature, and partial GH deficiency: functional studies using the IRBP, HESX1, and POU1F1 promoters
Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism , 93 (10) , 3697-3702  (2008)
原著論文13
Udaka T, Kurosawa K, Kosaki K, et al.
Screening for partial deletions of CREBBP locus in Rubinstein-Taybi Syndrome patients using multiplex PCR / Liquid chromatography.
Genetic Testing , 10 , 265-271  (2006)
原著論文14
Aramaki M, Udaka T, Kosaki K, et al.
Comprehensive screening of CHD7 mutations among patients with CHARGE Syndrome using denaturing high-performance liquid chromatography.
Genetic Testing , 10 , 244-251  (2006)
原著論文15
Samejima H, Torii C, Kosaki K, et al.
Screening for Alagille syndrome mutations in the JAG1 and NOTCH2 genes using denaturing high-performance liquid chromatography.
Genetic Testing , 11 , 216-227  (2007)
原著論文16
Hiraoka S, Furuichi T, Nishimura G, et al.
Nucleotide-sugar transporter SLC35D1 is critical to chondroitin sulfate synthesis in cartilage and skeletal development in mouse and human
Nature Medicine , 13 (11) , 1363-1367  (2007)
原著論文17
Nakashima E, Tran JR, Welting TJ, et al.
Cartilage hair hypoplasia mutations that lead to RMRP promoter inefficiency or RNA transcript instability
Am J Med Genet , 143 (22) , 2675-2681  (2007)
原著論文18
Shimizu R, Mitsui N, Mori Y et al.
Cryptic 17q22 deletion in a boy with a t(10;17)(p15.3;q22) translocation, multiple synostosis syndrome 1, and hypogonadotropic hypogonadism.
Am J Med Genet. , 146 (11) , 1458-1461  (2008)
原著論文19
Shimada A, Taki T, Hayashi Y et al.
KIT mutations, and not FLT3 internal tandem duplication, are strongly associated with a poor prognosis in pediatric acute myeloid leukemia with t(8;21): a study of the Japanese Childhood AML Cooperative Study Group.
Blood , 107 , 1806-1809  (2006)
原著論文20
Chen Y, Takita J, Hayashi Y, et al.
Mutations of the PTPN11 and RAS genes in rhabdomyosarcoma and pediatric hematological malignancies.
Genes Chromosomes Cancer. , 45 , 583-591  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-