膝痛患者に対する3.0テスラMRIを用いての高精度画像診断技術の確立と膝痛の増悪因子の解明に関する研究

文献情報

文献番号
200821072A
報告書区分
総括
研究課題名
膝痛患者に対する3.0テスラMRIを用いての高精度画像診断技術の確立と膝痛の増悪因子の解明に関する研究
課題番号
H20-長寿・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
越智 光夫(広島大学 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 黒坂 昌弘(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 内尾 祐司(島根大学 医学部)
  • 中田  研(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 佐粧 孝久(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 出家 正隆(広島大学 大学院保健学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、中高年の膝痛を有する患者の画像評価を行い、臨床・環境との関連を検討し、変形性関節症の原因となる軟骨損傷を初期に捉える高精度画像診断技術の確立を目的とする。さらに軟骨損傷の予後を把握し、適切な指導や治療法の開発に結実させ、運動機能を保全・保持することにより、要介護者を減少させることを目標とする。
研究方法
本研究の対象症例は、膝痛を有する、または変形性膝関節症患者と診断され、かつ次の条件を満たす患者とした。1)40歳以上80歳未満の患者。2)本研究の趣旨に同意し、次の検査およびアンケートに協力していただける患者。対象患者に対して、1) インフォームドコンセントの下、患者を登録し、その症状、生活様式を記録する。2) レントゲン像を立位伸展位正面、膝関節20度屈曲位正面での関節裂隙を計測する。研究方法は、2つのカテゴリーに分けて進められた。第一は、初期および中等度の変形性膝関節症に対しては、3.0テスラ-(T)MRIを用いて、通常撮影に加えて、造影・荷重位での撮影を行う。この撮影を経時的に行い、MR像の変化と臨床所見、生活様式との関連について検討する。第二は、高度変形性膝関節症患者に人工膝関節置換術を施行し、採取した組織と同一部位のMR像を比較検討する。
結果と考察
軽度および中等度変形性膝関節症患者に対して施行した3.0T-MRIに荷重や造影剤を負荷することで、通常では捉えにくいより詳細な軟骨損傷を把握できることを確信した。また、高度変形性膝関節症のため人工関節置換術を必要とした40例の患者の術前MR像と同一部位の関節軟骨の病理組織学像を比較検討した。この結果より高精度の3.0T-MRIにより描出された微細な軟骨損傷所見は、病理学的所見と一致していることがわかった。
結論
本研究の初年度で得られた結果より、3.0T-MR像は、造影・荷重位での撮影法を施行することでより詳細な軟骨損傷を描出でき、従来捉えられなかった微細な軟骨損傷を描出可能であることが判かった。高度変形性膝関節症に対して施行した人工関節置換術時に採取した病理組織像をMR像と対比したところ、MR像で示される軟骨損傷の組織学的な変性を推察可能となった。今後は、今回検討した症例の経時的経過を検討し、軟骨損傷の進行度を把握し、かつ、生活・臨床所見の調査を行うことで、早期に変形性膝関節症となる膝痛増悪因子の特定を図る。そして将来的には、軟骨変性の進行の早い症例を初期に捉え、的確な保存治療や生活様式の指導を提供することで、軟骨損傷の進行を抑え、膝痛による身体活動の低下を防ぐことが可能となることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-22
更新日
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