アルツハイマー病の根本的治療薬開発に関する研究

文献情報

文献番号
200821069A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の根本的治療薬開発に関する研究
課題番号
H20-長寿・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
道川 誠(国立長寿医療センター アルツハイマー病研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 悦朗(弘前大学医学部)
  • 西道 隆臣(理化学研究所脳科学総合研究センター)
  • 富田 泰輔(東京大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病(AD)はアミロイドβ蛋白(Aβ)の産生、凝集・沈着の増加を原因とする神経変性疾患である。従って、その根本的治療薬開発にはAβ代謝系を標的にした介入が有効である。本研究班は、Aβ代謝系における複数の標的(Aβの産生・分解・重合への介入、HDL療法の確立)の攻略を目的とする。研究終了時までに前臨床試験を終了し、AD病理・認知機能に対する新規治療薬の有効性を確認するとともに、5年後の治験実施、10年後の実用化への基盤成果を得ることを目指す。
研究方法
治療薬開発目的に、薬剤ライブラリーを用いて薬剤探索する。脂肪酸組成を変えた餌によるAD発症予防法開発では、アルツハイマー病モデル動物実験を行う。ヒトの病理に近いピログルタミル化Aβを蓄積するノックインマウスを作成する。変異APP, PS, Tau遺伝子を導入したトリプルTgマウスの尾静脈へ投与を開始し、記憶障害評価、生化学的・免疫組織学的方法により神経変性を評価する。
結果と考察
道川は(1)薬剤ライブラリーを用いてABCA1発現・機能増強を誘導する薬剤を探索し、187個の化合物ならびに6種類の漢方薬を同定した。(2)脂肪酸を豊富に含んだ餌でAPPトランスジェニックマウス(Tg)の長期飼育(17ヶ月)し、その脳解析を行った結果、炎症性サイトカインの産生抑制作用があることを明らかにした。(3)H20年度は、ACE-KoとAPP-Tgマウスの交配マウス脳を解析し、ACE-Koマウス脳ではAβ沈着が増強することを示すデータを得た。富田は(1):γセクレターゼ活性に影響を与える新規化合物を複数同定した。(2)スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の合成酵素であるSphingosine kinase阻害剤がAβ産生を特異的に抑制することを発見した。西道は、(1)ピログルタミル化Aβを選択的産生する遺伝子改変マウスを作成することに成功した。(2)ネプリライシン活性制御因子を探索し、複数の薬剤探索に成功した。現在製薬会社において開発中である(この経緯は2008年11月30日NHKのサイエンスゼロで放映された)。松原は、(1):予防的受動免疫療法の抗体効果発現機序解析を行い、主な作用発揮部位が後シナプスのスパインであることを示す結果を得た。
結論
Aβ代謝系における複数の標的(Aβの産生・分解・重合への介入、HDL療法の確立)への介入方法確立のため、複数の介入点における候補薬剤をそれぞれ同定した。また、抗体療法は、すでに前臨床試験を終了した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-22
更新日
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