高齢者に対する向精神薬の使用実態と適切な使用方法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200821063A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者に対する向精神薬の使用実態と適切な使用方法の確立に関する研究
課題番号
H20-長寿・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
三島 和夫(国立精神・神経センター精神保健研究所 精神生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 孝子(国立保健医療科学院・福祉サービス部 ・福祉マネジメント室)
  • 兼板 佳孝(日本大学医学部 公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の睡眠障害と随伴精神行動障害に対する睡眠薬、抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬等の催眠・鎮静系向精神薬(以下、向精神薬)の使用実態と臨床転帰を調査し、医学的問題点と対処方策を明らかにすることを通じて、高齢者の睡眠障害に対する向精神薬の使用ガイドラインと応用指針を作成する。
研究方法
1)高齢者における向精神薬処方実態調査のため、約32万人が加入する健保団体の診療報酬データの処方動向解析を行った。2)急性期病棟の入院患者557名(平均年齢 72.8歳)を対象として睡眠障害の罹患頻度と治療実態を調査した。3)高齢者における睡眠・行動障害や向精神薬の影響を評価するための新型携帯型活動量記録計とその睡眠/覚醒判定アルゴリズムの開発を行った。4)高齢者のうつ病・不眠症の併存の実態を明らかにするため、大規模疫学調査データを用いて日本の一般人口の各年齢階層、特に高齢者層における不眠症とうつ病の有病率、およびそれらの併存率を調査した。5)長期投与中の抗精神病薬から認知症高齢者を離脱させる手法の開発に関する多施設共同研究に着手した。
結果と考察
1)日本の一般人口での処方率は睡眠薬2.90%、抗不安薬3.81%、抗うつ薬1.64%、抗精神病薬0.55%と推定された。睡眠薬、抗不安薬の処方率は、男女ともに年齢および併存する身体疾患数に並行して増加し、特に60代以降の女性で処方頻度が高かった。エキスパートコンセンサスとは異なり、高齢者においても向精神薬処方量は十分に減量されていなかった。2)急性期病棟の入院患者の62.7% が不眠症を、22.3%が睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群等のその他の睡眠障害を、6.9%が日中の重度眠気を有することが明らかになった。不眠症患者の33.7%が向精神薬を服用していたが、その半数以上で不眠症状が残遺していた。向精神薬の多剤併用は日中活動量を有意に抑制していた。3)判別分析法により睡眠覚醒判定一致率86.9%、判定感度89.4%、判定特異度58.2%の新型睡眠/覚醒判定アルゴリズムを開発し、調査に供した。4)うつ病が併存する不眠症の有病率は5.5%であり不眠症者全体の12.7%を占め、年齢とともに著しく増加した。5)本年度は22名の認知症患者をエントリーし、抗精神病薬からの離脱試験に導入した。
結論
日本の高齢者における向精神薬の使用実態とその背景因子に関する横断的解析結果が得られた。今後は長期使用実態と臨床転帰を明らかにするための縦断追跡調査、向精神薬からの離脱手法の開発研究に着手する。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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