細胞を血行性脳実質内動員する機序の解析およびそのアルツハイマー病治療への応用

文献情報

文献番号
200821062A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞を血行性脳実質内動員する機序の解析およびそのアルツハイマー病治療への応用
課題番号
H19-長寿・若手-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
内村 健治(国立長寿医療センター アルツハイマー病研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病の病態下では骨髄単球由来ミクログリア細胞が中枢神経系に特異的な血液脳関門を通過し血行性に脳内に浸潤することが報告されている。本研究はこの脳内浸潤分子メカニズムを明らかにし、脳移行性細胞を遺伝子搬送体として利用する細胞医薬によりアルツハイマー病新規治療法を開発することを目的とする。
研究方法
本主任研究者は末梢組織への血行性細胞遊走に関わる分子機序を解明した実績を持つ。1)本年度はこれらの研究成果を発展させ、脳血管内での末梢投与ミクログリア細胞の動態を生体内ビデオ蛍光顕微鏡によりライブイメージング解析した。 2)一方、本主任研究者はヘパラン硫酸多硫酸化ドメインがアルツハイマー病モデルマウス脳内重合アミロイドβタンパク(Aβ)沈着部位に異常蓄積することを報告した。本年度はこの特殊なドメインがAβ重合に関わっている可能性をチオフラビンTアッセイにより検討した。
結果と考察
1)脳内移入ミクログリア細胞が血管内細胞ローリングに重要なセレクチンリガンド糖鎖を発現している事をフローサイトメトリーで確認した。生体内ビデオ蛍光顕微鏡法により尾静脈より投与した蛍光標識マウスミクログリア細胞がマウス脳血管内においてローリングや接着といった動態を示すことを明らかにした。セレクチン-糖鎖の分子メカニズムの脳内浸潤における重要性を明らかにした。2)ヘパラン硫酸多硫酸化ドメインがin vitroでAβ重合促進作用を有する事を明らかにした。さらに興味深い事に、当該ドメインを分解する細胞外スルファターゼAβ沈着部位発現多硫酸化ドメインをex vivoで分解する知見を得る事に成功した。細胞外スルファターゼが神経毒性誘導に深く関わる重合Aβの形成を減弱/阻止する可能性が強く示唆された。アルツハイマー病態において、脳移行性細胞に脳内搬送および脳内発現させる候補遺伝子として細胞外スルファターゼ遺伝子が選定された。
結論
セレクチンとそのリガンド糖鎖という特定の接着分子の相互作用がアルツハイマー病態下で観察される細胞脳内浸潤に関わっている可能性が示された。ヘパラン硫酸多硫酸化ドメインがAβ重合沈着に深く関わる事が予想された。生体内ビデオ蛍光顕微鏡観察技術のアルツハイマー病モデルマウス脳内への応用および脳移行性ミクログリア細胞における細胞外スルファターゼ遺伝子発現により脳内Aβ沈着体減弱技術の開発基盤確立が強く期待された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-22
更新日
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