認知症高齢者の自動車運転に対する社会支援のあり方に関する検討

文献情報

文献番号
200821054A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症高齢者の自動車運転に対する社会支援のあり方に関する検討
課題番号
H19-長寿・一般-025
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 由美子(国立長寿医療センター 研究所 長寿政策・在宅医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 学(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 上村 直人(高知大学医学部附属病院 神経科精神科)
  • 新井 明日奈(国立長寿医療センター 研究所 長寿政策・在宅医療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,260,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成19年改正道路交通法により、75歳以上の高齢者に対して認知機能検査が導入されることとなった一方で、認知症高齢者における運転中止に伴う本人及び家族介護者の困難に対する社会支援のあり方については、未だ十分に検討されていない。そこで、本研究では、認知症高齢者の運転中止が必至となった場合、その中止を円滑に進め、地域での自立した生活が継続されるための社会支援のあり方を提示することを目的として、社会医学的及び老年精神医学的、両観点からの分析及び評価を実施した。
研究方法
社会医学的観点からは、運転中止後の認知症高齢者の日常生活を地域がどのように支援しているのかについて、全国の市区町村における移動・外出及び生きがいづくりに係る支援事業の実施状況から検討した。また、運転に対する一般生活者の認識について、年齢層・免許保有状況別に解析した。一方、老年精神医学的観点からは、医師に対する調査を通じて、認知症患者の運転状況の実態を全国レベルで把握し、運転免許更新に係る診断書作成に関する医師の現状について検討した。
結果と考察
1)高齢運転者に対する運転免許更新時の認知機能検査のあり方、及び、医師が診断書作成時に実施する認知症患者の運転能力の評価方法について、検討を要することが示された。2)運転を継続している認知症患者の運転目的を鑑みると、自動車に代わる移動手段が確保されない状況で運転を中止した場合、運転中止後の生活に多大な支障が生じる可能性が高いことが示唆された。3)高齢運転者は、運転に対して、移動手段としての機能に加えて質的機能についても重視していることが明らかとなった。4)全国の市区町村において、高齢者及び認知症高齢者に対する移動・外出支援事業、及び生きがいづくり等支援事業について、積極的に取り組む自治体が存在する一方で、全国的な普及には至っていないことが明らかになった。
結論
認知症高齢者が運転中止による移動制約や精神的な負の影響を被ることのないよう、運転免許制度に係る法整備の一層の充実と、家族介護者や主治医等関係者間の連携による支援及び地域における、高齢者全般あるいは認知症等の疾患や障害を有する高齢者に対する、移動・外出支援事業及び生きがいづくり等支援事業の充実について、具体的実現に向けた検討が求められるものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-22
更新日
-