口腔ケア・マネジメントの確立

文献情報

文献番号
200821040A
報告書区分
総括
研究課題名
口腔ケア・マネジメントの確立
課題番号
H19-長寿・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
赤川 安正(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 顎口腔頸部医科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 菊谷 武(日本歯科大学附属病院口腔介護リハビリテーションセンター)
  • 吉田 光由(広島市総合リハビリテーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,430,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食事を通じた栄養摂取は生命維持の基本である。とりわけ高齢者において、低栄養は免疫力を減じ,身体の機能低下を招き,直接的ならびに間接的に寝たきりや死亡の原因になる。低体重は低栄養であることを評価する指標であり,要介護状態や死亡の単独の予後因子となっている。また,これまでに残存歯が20本未満の高齢者は,20本以上ある者よりもBody Mass Index(BMI)が有意に低く,やせ傾向にあるといった報告や,無歯顎高齢者の1年間の体重減少がそれ以外の者よりも有意に多いといった報告も認められる。このように,残存歯の喪失といった口腔の問題が低体重を招く可能性は示唆されているものの,一方で多くの高齢者が多数歯を喪失している現状では必要不可欠と思われる義歯治療による咬合・咀嚼機能の回復が高齢者の栄養改善につながるか否かについては明らかにされていない。
 そこで本研究は,低栄養となる危険性の高い要介護高齢者を対象に義歯治療を行い,その後の体重変化を見ることで,咬合の回復が高齢者の栄養改善につながるか否かを検討することとした。
研究方法
対象者は広島県内の某療養型医療施設入院患者のうち,平成16年10月から平成18年9月までに義歯治療を行った者の中から以下の基準にあてはまるものとした。対象となる義歯治療患者は,残存歯による両側臼歯部の咬合が喪失しているが,義歯により咬合が維持されている者とし,上下顎に残存歯があり部分床義歯を製作したアイヒナーのC1群、片顎が無歯顎で対顎には残存歯があり総義歯と部分床義歯を製作したC2群、上下顎とも無歯顎で総義歯を製作したC3群に分けた。これらの義歯治療終了後6ヵ月後の義歯使用者と不使用者の体重ならびに血清アルブミン値をStudentのt検定により比較した。
結果と考察
 咬合群ごとの義歯使用者と義歯不使用者の体重変化ならびに血清アルブミン値の変化を示す。すべての咬合群において、義歯使用者の体重は義歯不使用者に比べて有意に増加していた(p<0.05)。また、C1およびC2群において、義歯使用者の血清アルブミン値は義歯不使用者に比べて有意に増加していた(p<0.05)。本研究の結果,要介護高齢者の栄養改善に義歯治療による口腔機能の回復が有効である可能性が示された。
結論
口腔ケア・マネジメントは、歯科の専門職が継続的に利用者の生活機能を考慮しつつ関わることができるといったシステムである。これにより、利用者の生活機能や認知機能やADLを総合的に判断した義歯治療が可能となり、歯科医療の必要なものに的確に介入することが可能となる。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-