口腔内細菌叢の変化を指標にした後期高齢者の老人性肺炎の予知診断システムの開発

文献情報

文献番号
200821037A
報告書区分
総括
研究課題名
口腔内細菌叢の変化を指標にした後期高齢者の老人性肺炎の予知診断システムの開発
課題番号
H19-長寿・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高柴 正悟(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 永田 俊彦(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 佐藤 勉(日本歯科大学 生命歯学部)
  • 野村 義明(鶴見大学 歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
15,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者医療の面において,口腔内の常在細菌が老人性(誤嚥性)肺炎などの重篤な日和見感染症の発症に関与することが知られるようになった。昨今,多くの医療施設で栄養サポートチーム(NST)が組織され,高齢者の肺炎発症予防が取り組まれるようになった。我々は,誤嚥性肺炎の発症予防のため,その発症リスクを捉えることの重要性を勘案し,感染症としてのリスク診断のためのバイオマーカーを捉えることを目的とした。

研究方法
高齢者の口腔内・全身既往歴と歯周病原細菌に対する血漿IgG抗体価との統計学的関連を調べた。
対象は老人関連施設に入所中の高齢患者144名(年齢51~101歳)とした。
標的とした細菌抗原は,代表的な歯周病原細菌であるAa,Ec,Pg,およびPiとした。
血漿IgG抗体価測定は酵素免疫-ELISA法を用いて行った。なお,測定は外注して行った(リージャー長崎ラボラトリー)。
統計解析は各群における血漿IgG抗体価は,Mann-WhitneyのU検定を用いて解析し,P値が0.05未満の場合を有意差ありと判定した。
結果と考察
対象の過半数が脳血管障害を有していた。また,約半数の対象者が嚥下障害を有していた。また,有歯顎群におけるPg菌に対する血漿IgG抗体価は,無歯顎群と比較して有意に高値を示した。次に,歯周病原細菌に対する血漿IgG抗体価と肺炎の発症との関連について検討した。統計解析は,口腔乾燥の有無,嚥下障害の有無,肺炎の既往,および脳血管障害の有無,の4項目をパラメータにして,血漿IgG抗体価のレベルを比較検討した。
肺炎の既往の有無と血漿IgG抗体価のレベルを比較検討した結果から,むしろ肺炎の既往が有る高齢者の方が血漿IgG抗体価のレベルが有意に低いことが分かったこのことは,肺炎の発症は,口腔内の歯周病感染の量というより,老化による免疫反応の衰えのために生じる易感染状態による方が大きなリスク因子である可能性を示唆する。すなわち,歯周病原細菌に対する血漿IgG抗体価の測定は,高齢者の抗体産生性の指標に過ぎないのかもしれない。
結論
老人性肺炎の発症には,歯周病原細菌に対する血漿IgG抗体価のレベルが関連する可能性が統計学的に示された。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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