老化に伴う神経変性疾患の標準的医療確立のための長期縦断疫学研究

文献情報

文献番号
200821033A
報告書区分
総括
研究課題名
老化に伴う神経変性疾患の標準的医療確立のための長期縦断疫学研究
課題番号
H19-長寿・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学 大学院医学系研究科(神経内科学))
研究分担者(所属機関)
  • 田中 章景(名古屋大学 大学院医学系研究科(神経内科学))
  • 平山 正昭(名古屋大学 医学部附属病院(神経内科学))
  • 服部 直樹(名古屋大学 医学部附属病院(神経内科学)・豊田厚生病院)
  • 渡辺 宏久(名古屋大学 医学部附属病院(神経内科学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
14,440,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢に伴う神経変性疾患の標準的医療確立には自然歴やQOLに影響する因子の解明が必要である。本研究は筋萎縮性側索硬化症(ALS) およびパーキンソン病(PD)などの神経変性疾患に対して、多施設共同長期縦断自然歴把握システムを構築し、遺伝子検体を併せて蓄積することで、我が国におけるこれらの疾患の横断的、縦断的臨床像および発症、進行、予後に関与する臨床的、遺伝子的因子を明らかにすることを目的とした。
研究方法
ALSについて、前向き経時的情報収集のために臨床研究コーディネーター(CRC)による電話調査を導入したシステムを構築した。患者から採血を行い匿名化した後、DNA抽出およびB-cell line化を行った。ALSに対する研究状況をホームページ(http://www.jacals.jp/)にて公開し、患者団体主催講演会などにおいても紹介した。PDについては担当医師の評価および経時的なQOL、ADLなどに関するアンケート調査を軸にした体制を構築した。研究成果をもとに患者からしばしば受ける質問に対するQ and A集パンフレットを作成し、患者・家族への配布を進めた。
結果と考察
既に301名のALS患者を登録し、同数のゲノムDNAを保存した。登録患者の経過観察補足率は95%と高率である。ALS重症度スケールであるALSFRS-Rが登録時までに年あたりどの程度下がったかを示すΔALSFRS-Rや、登録時%VCから、一年後の呼吸器無しでの生存を感度65-85%、特異度76-90%で予測可能であることを示した。PDについて同様の多施設共同長期縦断自然歴把握システムおよび遺伝子収集システムを構築し、現在340例の臨床データを集積した。PD治療薬である麦角系ドパミンアゴニストの副作用として重要な心臓弁膜症に関して、心臓超音波検査と血清 BNP 値を併せて評価していくことが、安全に診療を行う上で重要であることを示した。
結論
我々の構築したALS、PDについての長期縦断自然歴把握システムにおいては、臨床現場の負担を増やさず、転医症例についても脱落例を最小限にして長期予後を把握することができる。これらにより標準的医療確立に有用な解析を行いうるのみならず、匿名化された遺伝子リソースとの組み合わせで、発症、進行、臨床病型、予後などと遺伝子多型との相関を解析していく基盤が整備された。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-