高齢者医療とQOL改善に対するグレリンの臨床応用とその基盤的研究

文献情報

文献番号
200821031A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者医療とQOL改善に対するグレリンの臨床応用とその基盤的研究
課題番号
H19-長寿・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
寒川 賢治(国立循環器病センター研究所 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 一和(京都大学医学研究科)
  • 千原 和夫(神戸大学大学院医学研究科)
  • 芝崎 保(日本医科大学大学院医学研究科)
  • 村上 昇(宮崎大学農学部)
  • 中里 雅光(宮崎大学医学部)
  • 土岐 祐一郎(大阪大学大学院医学研究科)
  • 赤水 尚史(京都大学医学研究科)
  • 児島 将康(久留米大学分子生命科学研究所)
  • 永谷 憲歳(国立循環器病センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
14,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢に伴う成長ホルモン(GH)分泌低下はソマトポーズと呼ばれ、骨格筋や骨量の低下、内臓脂肪型肥満を来たし生活の質(QOL)を低下させる。研究代表者が発見したグレリンは、GH分泌促進作用に加え、摂食・エネルギー代謝調節、抗炎症にも作用する。本研究はこれまでのグレリン研究を基盤として、高齢者医療とQOL改善に対するグレリンの臨床応用を目指し、基礎と臨床の両面から研究を展開する。
研究方法
1)グレリンの脂肪酸修飾と、それを行うアシル基転移酵素の遺伝子発現調節、2)グレリンの分泌調節機構、3)加齢に伴う体脂肪蓄積におけるグレリンの生理的役割、4)高齢ラットへのグレリン受容体作動薬の筋や骨に及ぼす作用、5)遺伝子改変動物を用いたグレリンおよびデスアシルグレリンの生理学的意義の検討、6)体重減少を伴う慢性閉塞性肺疾患(COPD)、人工股関節置換術後、胃切除術後、慢性下気道感染症へのグレリンの臨床効果
結果と考察
グレリンの脂肪酸修飾とアシル基転移酵素の遺伝子発現に明らかな関連性を認めなかった。グレリン分泌は、機械的刺激より化学的刺激で抑制されており、環境要因やストレスに対する恒常性維持機構に関与している可能性が示唆された。ラットの加齢に伴う体脂肪蓄積には、GH分泌低下に加え、グレリン/グレリン受容体系を介する褐色脂肪組織の機能低下が関与していた。高齢ラットへグレリン受容体作動薬を持続投与すると骨塩量増加、ヒラメ筋筋線維断面積減少を認めた。デスアシルグレリン過剰発現マウスでは、成長、体組成、摂食、GH系に異常を認めなかったが、インスリン感受性は亢進していた。一方、グレリン欠損マウスでは消化管運動機能低下などの自律神経機能異常を認めたことから、新たな生理作用であると考えられる。COPDに対するグレリンの二重盲検無作為化比較試験(RCT)を開始した。人工股関節置換術後患者および胃切除後患者に対するRCTでは、グレリン投与群で有意な体脂肪量減少、除脂肪体重増加、摂食量増加となどの有用な効果を認めた。慢性下気道感染症患者に対するグレリンの反復投与試験では、摂食量や体重の増加、酸素化能や運動耐容能の改善、喀痰量や痰中好中球数の減少などを認めた。
結論
グレリンの分泌および発現調節、生理作用に関する基礎的な研究成果に加え、臨床分野においてもグレリン治療の適応疾患拡大に向けた重要な成果を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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