高齢者の切迫性尿失禁に対する膀胱壁内A型ボツリヌストキシン注入療法の多施設臨床試験と腹圧性尿失禁に対する新規治療法の開発

文献情報

文献番号
200821030A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の切迫性尿失禁に対する膀胱壁内A型ボツリヌストキシン注入療法の多施設臨床試験と腹圧性尿失禁に対する新規治療法の開発
課題番号
H19-長寿・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 菊夫(国立長寿医療センター 手術・集中医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤百万(名古屋大学大学院医学系研究科 病態外科学講座)
  • 橋本有弘(国立長寿医療センター 再生再建医学研究部)
  • 山本徳則(名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科学)
  • 上住 円(国立長寿医療センター 再生再建医学研究部・細胞再生研究室)
  • 宋 時栄(徳島文理大学 神経科学研究所)
  • 丸山彰一(名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科学)
  • 松尾清一(名古屋大学大学院 医学系研究科 病態内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,410,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者のQOLを大いに傷害する切迫性、腹圧性尿失禁に対する新規治療の確立を目指す。前者には抗コリン薬が有効であるが、効果が不十分であったり、認知症悪化、堪えがたい口内乾燥、便秘など高齢者には優しくない副作用がある。難治性の切迫性尿失禁に対しては、A型ボツリヌストキシン膀胱壁内注入療法の臨床試験を行う。女性の骨盤底筋のゆるみや男性の前立腺手術後の括約筋トーヌス低下が原因となって生じる腹圧性性尿失禁には、自己骨格筋幹細胞や脂肪細胞由来幹細胞を用いた再生医療の確立を目指す。
研究方法
I.切迫性尿失禁の原因となる非神経因性難治性過活動膀胱と脊髄損傷による神経因性膀胱過活動に対するA型ボツリヌストキシン膀胱壁内注入療法の臨床試験を開始した。II.効率がよく安全性の高い自己骨格筋幹細胞培養法、移植細胞品質管理システム、移植細胞の安全性検定系確立を目指し、実験を実施した。III.ラット膀胱頸部移植モデルを用いて脂肪組織由来間葉系細胞の尿道閉鎖圧上昇、移植細胞の安全性評価を行い、サイトリ社脂肪幹細胞分離装置を用いて自己脂肪組織由来幹細胞の臨床を開始した。
結果と考察
I.前者に3例、後者に6例が登録された。いずれの試験でも尿失禁の改善を認め、有望な治療法であると考えられた。II.ヒトから採取された骨格筋細胞を低密度培養することにより、安全性の高い、増殖・分化能を持つ筋幹細胞が得られた。CD56の発現を目安に品質管理が可能となると考えられ、将来の臨床応用に重要な知見が得られた。III.ラットモデルの移植実験で有効な尿道閉鎖圧が得られたため、2例に対して自己脂肪組織由来幹細胞を用いた治療を行った。副作用なく、現時点で経過観察は短いものの良好な結果を得ている。
結論
I.A型ボツリヌストキシン膀胱壁内注入療法は極めて有望な治療となりうるため、臨床試験を進めて有効性・安全性を確認していきたい。症例登録を早めるため、研究協力者を増やす予定である。II.自己骨格筋による括約筋再生の検討では大変にポジティブな結果を得たので、国立長寿医療センターにCPCができた時点で臨床へのトランスレーションを果たしたい。III.基礎実験で脂肪組織由来幹細胞の注入により平滑筋への分化、尿道閉鎖圧の上昇が認められため、臨床に応用して良好な結果を得た。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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