長寿科学の推進に係るグランドデザインに関する研究

文献情報

文献番号
200821029A
報告書区分
総括
研究課題名
長寿科学の推進に係るグランドデザインに関する研究
課題番号
H18-長寿・一般-042
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 敏彦(日本医科大学 医療管理学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 平尾 智広(香川大学 医学部 医療政策・公衆衛生)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部 社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
  • 佐藤 敏彦(北里大学 医学部 公衆衛生学)
  • 松本 邦愛(東邦大学 医学部 社会医学講座 公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
8,590,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「超高齢社会とはどんな社会か」「超高齢社会の医療システムはどうあるべきか」「長寿医学・長寿研究はどうあるべきか」の3段階を設定、1年度ずつ重点研究対象とした。これらは未来社会領域と未来医療領域の二つに総括でき、4つずつエントリーポイントを想定できる。
研究方法
 統計分析、文献レビュー、現地調査、構造化インタビューにより8領域の研究を行った。
結果と考察
1.未来社会の領域
「未来社会の人類史的意義づけ」は地球規模の捉え方が必要で、高齢化問題は人類史的課題であり、新たな社会の創造、環境問題と地球規模の課題の同時解決が求められる。
「アジアの高齢化」は大東亜共老圏を目指す必要があり、「サードエイジの増大」は高齢社会を支えるのは高齢者の社会的役割支援が必要で、「高齢化対策の街づくり」が以上の課題の出発点であることが判明した。
2.未来医療の領域
「5つのケア」
高齢者の疾病は疾患がその自然史によって変化し、目的や方法の異なった「急性期ケア」「回復期ケア」「長期ケア」「慢性期ケア」「末期ケア」を必要とし、その継続が必須である。提供体制はケアネットワークの形態となる。慢性疾患や障害の存在を前提とする高齢者の医療は、医療の目的が相対化し、本人にとっての医療の価値が最優先される。ここでは予防、治療、介護が連携ではなく融合される。
「進化生態医学」
従来の特定病因論「細胞病理学」は「壊れた機械」の類推を元としている。しかし元来、完璧な機械は存在せず、とりわけ老人においては、細胞と臓器、臓器と全身、身体と社会の「動的平衡」によってバランスがとられている。疾病は「生態病理学的」に捉えることが必須となる。
「長寿研究」
先進的研究・医療機関のBench to Bedside実現には、モデルの立案、組織・個人のネットワーク外部性獲得と連携モデルのシステマティックな運用が必須である。日本でも医療による長寿化を目指すエンハンスメント管理が必要だ。
「国立長寿センターの役割」
日本の健康転換、早期から晩期退行性病変主体の医療システムへの変革をナビゲートし、世界に発信する役割が求められる。

結論
 これから人類が直面し、日本が先導する超高齢社会は、人類が未だかつて経験のない新たな社会に他ならない。医療、そして医療システムは、その社会の一部として、その方法のみならず、目的、概念、それを支える社会システムの新たな創造が必須となる。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
200821029B
報告書区分
総合
研究課題名
長寿科学の推進に係るグランドデザインに関する研究
課題番号
H18-長寿・一般-042
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 敏彦(日本医科大学 医療管理学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 平尾 智広(香川大学 医学部 医療政策・公衆衛生)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部 社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
  • 佐藤 敏彦(北里大学 医学部 公衆衛生学)
  • 松本 邦愛(東邦大学 医学部 社会医学講座 公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 世界に先駆けて超高齢化の進む日本で、持続可能な高齢社会と保健医療システム、高齢者医療を支えるための、長寿科学の在り方のグランドデザインを研究することを目的とする。
研究方法
 第1段階として(1)持続可能な超高齢社会の在り方の研究、第2段階として(2)持続可能な保健医療システムの研究、第3段階として(3)そのための長寿研究や老年医学の在り方に関する研究を行った。超高齢社会の研究については、各分野の専門家による文献レヴューや有識者による討論を通じて、高齢社会における各分野の予測動向と課題を検討した。保健医療システム研究については、患者調査、国民生活基礎調査、全国消費実態調査等を用いて、医療需要や疾病負担の将来予測と、健診・国保・介護保険データの結合による医療費と疾病パターンの定量的分析を行った。また、高齢社会での、地域における効率的効果的な医療供給体制の研究、そして、高齢者の医療もしくは超高齢社会の医療において問題となりえる倫理に関する研究を行った。まず、資源配分に関する哲学的考察として、障害者と高齢者に関する比較考察を行ったと、先進事例のフィールド調査を行った。長寿科学研究と長寿医療研究については、文献と有識者による討論と、インタヴュー調査で行った。
結果と考察
 3年間の研究を通じて、主任研究者は新しい概念である進化生態医学の概念を提出した。病を、環境と機能を相互作用不全としてとらえ、そこから、まちづくり、医療、福祉を考えていくというものである。高齢者は、若年者と異なり、治療の結果、完全な健康体に戻ることは望めず、低下しゆく機能と付き合いながら、最後まで社会生活を営む必要がある。その支援を中核において、医学の再構築をすることで、保健・医療・福祉の新しい連携の形も生まれる。その考えに基づいて、まちづくり社会づくりも行っていくことが有効である。長寿医療センターは、ナショナルセンターとして、人類未踏の高齢社会に向けて医療のみならず世界に向けて発信していく政策センター(研究、教育、情報発信、政策提言)の使命をもつことが判明した。
結論
 これから人類が直面し、日本が先導する超高齢社会は、人類が未だかつて経験のない新たな社会の創造に他ならない。医療、そして医療システムは、その社会の一部として、その方法のみならず、目的、概念、それを支える社会システムの新たな創造が必須となっている。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
200821029C