医薬品の品質確保に着目した再評価のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
199700468A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品の品質確保に着目した再評価のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 則行(日本薬剤師会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 薬物療法等有用性向上推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既承認の医薬品について一層の品質確保を図るためには、品質の面からの再評価が効果的である。しかしながら、承認されている医薬品(医療用・一般用)は3万品目と多数であることから、闇雲に検討するのではなく、優先度の高い品目から効率的に再評価を行うことが必要である。
こうした観点から、本研究では平成8年度において、?繁用されている、?後発品が多品目薬価収載されている、?経口薬である、の3条件を満たす医薬品の中から5成分(各先発品1品目・後発品5品目)を対象品目として溶出試験を実施し、先発品と後発品の溶出挙動の差異に着目した製剤学的同等性についての研究を行った。
厚生省においては、こうした研究結果を参考としつつ、平成9年2月24日「医療用医薬品再評価に関し資料提出を必要とする有効成分の範囲(その29)について」を都道府県に通知し、12成分の医薬品について後発メーカーに溶出試験のデータを提出するよう求めており、さらに2004年までに溶出試験規格のない医療用の後発医薬品(約550成分・5000品目以上)について溶出試験規格を策定することを計画している。
平成9年度の本研究では、こうした状況を踏まえ、引き続き溶出試験を用いた先発品と後発品の製剤学的同等性を研究することとしていたが、具体的内容の検討段階においてこれら研究の前提となるべく「試験データの再現性を確認する研究」を行う必要性が指摘された。このため、国立医薬品食品衛生研究所の協力を得つつ、試験室間の溶出試験結果の誤差についての研究を行うこととした。
研究方法
試験室間の溶出試験結果誤差を検証するために、特定の品目の同一ロットについて、統一した試験方法を定め、一定の条件で、5カ所の試験機関で溶出試験を行い、各試験機関の試験結果のバラツキについて、試験の環境・手順等から検証することとした。
具体的には、?国立医薬品食品衛生研究所で作成した標準製剤(セファレキシン)を用い、条件(装置:回転バスケット法(50rpm)、試験液:pH6.50のクエン酸塩緩衝液、脱気方法:45℃で2時間保持、試料量EG700mg/ベッセル、試験液の採取時間:30分、その他試験液の採取方法、試料溶液調製方法、標準溶液調整法、測定法等)を全機関で統一し、溶出試験を行った。その結果を集計した後、SOPとカリブレータの規格等を全機関に示し、再度試験を行った。
またその他、塩酸ニカルジピン錠(後発品2品目)を用いて同一の試験条件で全機関において溶出試験を行い、溶出試験誤差を検証する研究も行った。
研究実施機関は、平成8年度に引き続き、?慶応義塾大学病院薬剤部、?岐阜大学医学部附属病院薬剤部、?千葉県薬剤師会検査センター、?秋田県薬剤師会試験検査センター、?静岡県生活科学検査センターである。
結果と考察
既承認の医薬品の中には、製剤間、銘柄間で生物学的利用能が異なる製品があるとの報告がなされている。血中濃度のコントロールが必要な医薬品の場合には、こうした品質の違いが安全性の面で問題となる可能性がある。
こうした問題を改善する方策の一つとしては、溶出試験等の規格の整備を図ることが効果的であり、また日常的な品質管理を進める上でも重要であると考えられる。
現在、新有効成分含有医薬品については溶出試験等の規格の整備が義務付けられており、また日本薬局方収載医薬品についても順次、規格の整備が進められている。しかしながら、それ以外の多くの医薬品については、規格が未整備のものが多いことから、必要性の高いものから順次、再評価制度により規格を整備することが重要である。
本研究においては、品質の面からの再評価を優先的に行うべき医薬品の考え方について、医療現場での使用経験等も踏まえて整理するとともに、再評価に際して必要なデータの範囲等、再評価制度に基づいて品質の向上を図るための具体的な方策について検討を行うことされ、平成8年度においては、繁用性の高い5成分の医薬品について溶出試験を行い、?一部の成分について先発品と後発品の溶出挙動に有意差がある、?特に徐放性製剤の場合その差が顕著に見られる製品がある、ことなどが明らかになった。
平成9年度においては、こうした平成8年度の研究成果を踏まえ、引き続き溶出試験を用いた先発品と後発品の製剤学的同等性を研究することとしていたが、具体的内容の検討段階においてこれら研究の前提となる「試験データの再現性を確認する研究」を行う必要性が指摘された。このため、国立医薬品食品衛生研究所の協力を得つつ、試験室間の溶出試験誤差についての研究することとなり、具体的には5カ所の試験検査機関において同一条件でセファレキシンの溶出試験等を行い、試験結果誤差を検証した。
その結果、同一試験条件(?装置、?攪拌速度、?試験液の種類と量等)であっても、その手順(?試験液の調整方法、?脱気方法、?界面活性剤の有無、?その他操作の順番等)及びバリデーション(?溶出試験器の種類、?試験液の温度、?振動に関する試験室環境、?操作を行う者の技術レベル等)が、試験データの再現性に影響を与えていることが明らかになり、さらに製剤の種類(経口通常製剤、腸溶性製剤、徐放性製剤等)によりこれらのうち最も大きな要因となるものが異なることが判明した。今後は医薬品の種類と試験結果の再現性に関して配慮すべき要因の優先順位の関係について、及び後発医薬品の生物学的同等性ガイドラインに定められた「溶出挙動の同等性の判定」の実効性等について引き続き研究を行うことが必要であると考えられる。
結論
各試験室間の溶出試験誤差についての研究を行ったころ、各施設ごとに行った溶出試験結果を比較検討する場合には、日本薬局方による操作手順だけではなく、溶出試験の機器整備、操作方法等の厳格な標準化を図っておく必要性がある。

公開日・更新日

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