骨粗鬆症性骨折の実態調査および全国的診療データベース構築の研究

文献情報

文献番号
200821023A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症性骨折の実態調査および全国的診療データベース構築の研究
課題番号
H18-長寿・一般-035
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
折茂 肇(健康科学大学)
研究分担者(所属機関)
  • 福永 仁夫(川崎医科大学放射線医学)
  • 中村 利孝(産業医科大学整形外科)
  • 白木 正孝(成人病診療研究所)
  • 太田 博明(東京女子医科大学産婦人科)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学)
  • 細井 孝之(国立長寿医療センター先端医療部)
  • 藤原 佐枝子(放射線影響研究所臨床研究部)
  • 坂田 清美(岩手医科大学公衆衛生学)
  • 原田 敦(国立長寿医療センター機能回復診療部)
  • 森 聖二郎(東京都老人医療センター内分泌科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
20,060,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 骨粗鬆症は高齢女性に多発する疾患であり、骨の脆弱化を通じて骨折の発生リスクが増加する。本研究は、診断・治療および新規に発生した骨折に関する情報を全国的に収集するデータベースを構築し、診断と骨折の関連性や治療の影響を検証し、再評価すること目的としている。さらに、2007年における大腿骨近位部骨折発生数について、全国的な調査を行った。
研究方法
a.骨粗鬆症の全国的診療データベース構築:
 本データベースを用いた臨床研究は来院を起点とする前向きコホート研究である。データの収集 や情報の共有にはインターネットを用いるシステムを採用した。その対象は医療機関を受診した 女性の原発性骨粗鬆症もしくは骨量減少の患者であり、かつ研究に関する文書同意を取得した患 者とする
b.大腿骨近位部骨折全国頻度調査
 全国の整形外科を標榜する8234医療機関のうち、全国調査用には4500医療機関を無作為抽出し、 ブロック別推計用には、5613医療機関を抽出した。新発生患者の性、年齢別情報を、郵送法によ り調査した。
結果と考察
a.骨粗鬆症の全国的診療データベース構築
 平成21年2月の時点で、全国の59施設が本データベース事業に参加の意思をしめした。ここまでの 登録症例は、現時点では本研究の研究分担者が所属する施設からのものがほとんどであった。全 国レベルのエビデンスを得るためには、事業へのさらなる呼びかけとともに、臨床医・研究者の モチベーションを向上させるための方策が必要である。
b.大腿骨近位部骨折全国頻度調査
 5613医療機関のうち、3778医療機関より回答が得られ、回収率は67.3%となった。2007年の新発 生患者の推定数は、148,100であった(男性31,300人、女性 116,800人)。前回(2002年)の調 査と比較すると、1.26倍、初回調査の2.78倍に増加した。10歳階級別の罹患率では、60歳代の男 性、60、70歳代の女性において、過去15年間の調査の中で最も低かった。
 ブロック別の標準化発生比では、これまでの調査結果と同様に、男女ともに西高東低の傾向がみ られた。地域差の要因解明は骨粗鬆症の予防にも有用であろう。
結論
 骨粗鬆症とそれに基づく骨折を予防するための診療体系を確立し改善していくためには、全国的な診療データベースが構築し、症例登録を進めた。さらに、2007年における大腿骨近位部骨折発生数について、全国的な調査の結果を確定した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200821023B
報告書区分
総合
研究課題名
骨粗鬆症性骨折の実態調査および全国的診療データベース構築の研究
課題番号
H18-長寿・一般-035
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
折茂 肇(健康科学大学)
研究分担者(所属機関)
  • 福永 仁夫(川崎医科大学放射線医学)
  • 中村 利孝(産業医科大学整形外科)
  • 白木 正孝(成人病研究所)
  • 太田 博明(東京女子医科大学産婦人科)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学)
  • 細井 孝之(国立長寿医療センター先端医療部)
  • 藤原 佐枝子(放射線影響研究所臨床研究部)
  • 坂田 清美(岩手医科大学公衆衛生学)
  • 原田 敦(国立長寿センター機能回復診療部)
  • 森 聖二郎(東京都老人医療センター内分泌科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、骨粗鬆症の診断・治療の実態を把握した上で、新規に発生した骨折に関する情報を全国的に収集するデータベースを構築すること目的とした。また、2007年における大腿骨近位部骨折発生数について、全国調査を行った。
研究方法
a.骨粗鬆症診療に関する医療機関別の調査
 診療の実態、患者数の推定を目的とした医療機関別の調査については、既存の統計調査を用いて
 検討した。
b.骨粗鬆症の診断と治療に関する医師別調査
 骨粗鬆症診療の実態:診断や治療開始の実態の把握するために、全国の病院勤務、開業医師のう ち整形、内科、婦人科を標榜する医師に対して郵送法によるアンケート調査を行った。
c.骨粗鬆症の全国的診療データベース構築:
 データの収集にはインターネットを用いるシステムを採用した。対象は医療機関を受診した女性 の原発性骨粗鬆症もしくは骨量減少の患者であり、文書同意を取得した患者とした
d.大腿骨近位部骨折全国頻度調査
全国の整形外科を標榜する8234医療機関のうち、全国調査用には4500医療機関を無作為抽出し、
ブロック別推計用には、5613医療機関を抽出した。
結果と考察
a.骨粗鬆症診療に関する医療機関別の調査
 既存の統計資料のうち、「国民生活基礎調査」(平成16年)推計された139万3千人が実際に骨粗鬆  症について薬物療法を受けている人数に近いものと考えられた。
b.骨粗鬆症の診断と治療に関する医師別調査
 全国から診療科別にランダムに抽出されたのべ5万人の医師に対するアンケート調査をおこな
 い、診断基準の認知率、薬物療法開始の目安等について調査し結果を検討した。
c.骨粗鬆症の全国的診療データベース構築
 平成21年2月の時点で、全国の59施設が本データベース事業に参加の意思をしめした。全国レベル のエビデンスを得るためには、事業へのさらなる呼びかけ等の方策が必要である。
d.大腿骨近位部骨折全国頻度調査
 5613医療機関のうち、3778医療機関より回答が得られ、回収率は67.3%となった。2007年の新発  生患者の推定数は、148,100であった(男性31,300人、女性 116,800人)。前回(2002年)の調 査と比較すると、1.26倍に増加した。60歳代の男性、60、70歳代の女性において、過去15年間の 調査の中で最も低かった。男女ともに西高東低の傾向がみられた
結論
 骨粗鬆症に関する診療の現状を調査した上で、全国的な診療データベースが構築し症例登録を進めた。2007年における大腿骨近位部骨折発生数について、全国的な調査を行った。

公開日・更新日

公開日
2009-05-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200821023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 骨粗鬆症は骨脆弱性によって骨折危険性が増大した疾患であるが、骨脆弱性が骨量低下のみによっては説明されず、骨質と総称される因子群の解明がまたれている。本研究では骨量以外に骨量を規定する因子を臨床的に明らかにするための全国レベルでの骨粗鬆症診療データベースシステムを構築し、運用を開始した。さらにこのデータベースは現在用いられている骨粗鬆症治療薬の骨折発生予防効果とそれに及ぼす影響因子を検証するためにも活用されることが期待される。
臨床的観点からの成果
 骨粗鬆症の合併症である脆弱性骨折の主要なものは、脊椎圧迫骨折、大腿骨近位部骨折、前腕骨遠位部骨折、上腕骨近部骨折などである。このうち最も重症である大腿骨近位部骨折の全国発生数について2007年の全国調査を行った。この調査は本研究の研究代表者に情報を提供したと考えられる。また、骨粗鬆症の薬物療法に関する全国レベルの調査を医療機関レベルならびに医師レベルで行い、骨粗鬆症診療の現状を把握した。
ガイドライン等の開発
 骨粗鬆症診療に関するガイドラインは本研究の研究代表者が中心となって作成されてきたが、2006年の改訂版では、本症の予防と治療に関するエビデンスが整理され、さらに骨粗鬆症薬物療法の開始基準が提示された。それによると、骨粗鬆症診断基準に合致する患者のみならず骨量減少者についても骨折の危険因子を有する場合には薬物療法を考慮することが提案されている。本研究で構築された骨粗鬆症診療データベースはこのガイドラインの妥当性を検討するためにも活用されることが期待される。 
その他行政的観点からの成果
 大腿骨近位部骨折の全国調査の結果は、この骨折の発生頻度に地域差が存在することを再現性よく示した。すなわち、この骨折の発生頻度は男女ともに「西高東低」であり、東日本に比べて西日本での発生頻度が高かった。本研究では、この地域差を説明することを試み、大腿骨近位部骨折と栄養摂取との関連を解析した。その結果、本骨折の発生頻度とビタミンKの摂取量との間に統計的に有意な負の相関が見出された。このことは、本骨折の予防対策を立案するにあたって、栄養学的側面とくにビタミンK摂取について留意すべきことを示した。
その他のインパクト
 平成19年11月10日に金沢市において、「寝たきり予防をめざした 骨粗鬆症の予防と治療」と題した市民公開講座を開催した(長寿科学振興財団の助成も活用)。演者としては当研究の研究代表者と研究分担者(国立長寿医療センター細井孝之)に加えて、金沢医科大学高齢医学の森本茂人教授が担当した。超音波法による踵骨の骨量測定も行われ、骨粗鬆症の予防と治療に関する効果的な啓発活動が実現できた。また、研究内容は、2009年4月16日付けの「Medical Tribune」誌でも紹介された(34ページ)。

発表件数

原著論文(和文)
1件
骨粗鬆症診療の標準的調査項目および全国的データベース構築の検討
原著論文(英文等)
3件
Association of hip fracture incidence and intake of calcium, magnesium vitamin D and vitamin K
その他論文(和文)
17件
これからの高齢者医療の理念と戦略・骨粗鬆症の薬物療法・高齢者の定義の見直し・ほか
その他論文(英文等)
1件
Preface
学会発表(国内学会)
1件
骨と歯のアンチエイジング
学会発表(国際学会等)
2件
2008 Osteoporosis Expert Meeting 6th Internationl Conference on Bone   and Mineral Research
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-