認知機能に着目した新たな介護予防プログラムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200821008A
報告書区分
総括
研究課題名
認知機能に着目した新たな介護予防プログラムの開発に関する研究
課題番号
H18-長寿・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田高 悦子(公立大学法人横浜市立大学 医学部看護学科地域看護学領域)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
2,880,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の全体構想は、高齢者の認知機能に着目した新たな介護予防技術(プログラム)の開発と評価を行うことを目的としたものである。うち、本稿の目的は、都市在住高齢者における介護予防ポピュレーションアプローチとして開発した認知症予防キャンペーンにおける有効性について検討することとした。
研究方法
研究対象は、A県a市 a区a中学校区に在住する65歳以上の地域住民である。研究方法は米国アルツハイマー協会が提唱する「認知症予防に向けた健康づくりの10カ条」を骨子とする日常の生活習慣10項目(健康管理、生活習慣病予防、定期健診、バランスの良い食事、適度の運動、精神活動、人との交流、転倒予防、喫煙・飲酒のコントロール、前向きな生活習慣)における普及啓発による内省支援(評価研究)である。評価方法は、管内在住高齢者から性別・年齢階級別1/2無作為抽出された者に対する質問紙調査(郵送方式)により実施した。なお、本研究は、横浜市立大学医学部研究倫理委員会における審査及び承認を受けた。
結果と考察
調査の結果、回答者数は2817名(全数)(回答率46.1%)、性別では、男性46.9%、女性45.5%であった。本介入における啓発群は19.2%、非啓発群は80.7%であり、啓発群では非啓発群に比べて生活習慣の周知度および実践度の項目の合計点についてともに有意に高かった(周知度:9.2±0.9 vs 8.7±1.8,p<0.0001,実践度:8.3±1.8 vs 7.7±2.3,p<0.0001)。個々の項目については、啓発群では非啓発群に比べて「生活習慣病予防」の周知度が有意に高く(96.3% vs 85.1%,p<0.0001)、また、同実践度も有意に高かった(85.6% vs 75.5%,p<0.0001)。さらに「適度の運動」の実践度も有意に高かった(78.2% vs 67.2%,p<0.0001)。
結論
本研究は横断研究のため因果関係を結論付けることはできないが、情報啓発の有無と好ましい生活習慣の保持については相互に関連していることが示唆される。また、非啓発群は低い生活習慣の周知度・実践度と関連し、認知症のリスクの存在が示唆される。今後は、非啓発群における効果的な啓発方法ならびに生活習慣における支援に関して検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200821008B
報告書区分
総合
研究課題名
認知機能に着目した新たな介護予防プログラムの開発に関する研究
課題番号
H18-長寿・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田高 悦子(公立大学法人横浜市立大学 医学部看護学科地域看護学領域)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の認知機能は、身体的、心理的、社会的機能に深く関連し、その低下は、生活機能全体の低下を招くことが知られている。しかしながらこの高齢者の認知機能の低下は、必ずしも加齢のみによる不可逆性のものではなく、機能の不活用 (Port RL, 1996)や対人交流の不活発さ(Elwood PC, 1999)などが加味した、心身の生活習慣病 (Vance DE,2005)ともいうべき状態であることが指摘されている。本研究は、以上を背景として、高齢者の認知機能に着目した新たな介護予防技術(プログラム)の開発と評価を行うことを目的としたものである。
研究方法
 研究計画は3カ年であり、初年度の目的は、軽度認知機能低下者(Mild Cognitive Impairment : MCI)に対するハイリスクプログラムを開発することとした。また、次年度の目的は、認知機能低下のない自立高齢者に対するポピュレーションプログラムの開発することとした。さらに、最終年度の目的は、これらハイリスクプログラムプログラムとポピュレーションプログラムにおける効果を実証的に評価することとした。
結果と考察
研究の結果、軽度認知機能低下者(Mild Cognitive Impairment : MCI)に対するハイリスクプログラム(PRECEDE-PROCEEDに基づく健康学習支援プログラム)は、介入(プログラム参加)群で対照(非参加)群に比して認知機能(前頭葉機能:Frontal Assessment Battery)ならびにQOL(MOS Short-Form 12-Item Health Survey)における有意な改善を示した。また、認知機能低下のない自立高齢者に対するポピュレーションプログラム(認知症予防に向けた生活習慣の内省啓発に向けたキャンペーンプログラム)は、啓発群では非啓発群に比して「生活習慣病予防」の周知度ならびに実践度における有意な差を示した。
結論
軽度認知機能低下高齢者におけるPRECEDE-PROCEEDに基づく健康学習支援プログラムは前頭葉機能、身体的健康度関連QOL及び精神的健康度関連QOLの改善に有効である。また、地域一般高齢者における認知症予防に向けた生活習慣内省啓発キャンペーンプログラムは、認知症予防に向けた健康づくりの知識と実践に有効である。今後の地域高齢者における介護予防施策では両プログラムの両輪的展開が必要である。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200821008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高齢者の認知機能の低下は、加齢に伴う影響があってなお、適切で十分な機能の使用や活発な
対人交流が維持されることによりその維持、向上がはかられ、ひいては生活機能全体(QOL)の維持、向上が可能となるという科学的論拠が得られている。
臨床的観点からの成果
わが国の政策目標「介護予防の推進」に合致し、かつ、実現目標である「自立高齢者の要介護状態への移行及び軽度要介護者の悪化の防止(低減)」を可能にする、具体的で実践的な方策(プログラムとシステム)が確立されている(施策的成果)。さらに、本研究の展開に際しては、高齢者の住み慣れた地域を基盤として、地域特有の文化や土壌を活用することから、地域全体の活性化(地域づくり)も期待される(社会的成果)。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
わが国の政策目標「介護予防の推進」に合致し、かつ、実現目標である「自立高齢者の要介護状態への移行及び軽度要介護者の悪化の防止(低減)」を可能にする、具体的で実践的な方策(プログラムとシステム)が確立されている(施策的成果)。さらに、本研究の展開に際しては、高齢者の住み慣れた地域を基盤として、地域特有の文化や土壌を活用することから、地域全体の活性化(地域づくり)も期待される(社会的成果)。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
田高悦子
認知機能に着目した介護予防プログラムの開発とその評価
公衆衛生 , 73 (4) , 281-285  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-