文献情報
文献番号
200821004A
報告書区分
総括
研究課題名
小規模な高齢者介護施設等における感染管理に関する研究
課題番号
H18-長寿・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小坂 健(東北大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の調査研究により、全国認知症高齢者グループホーム協会に加盟している施設においてはインフルエンザのワクチンなどの対策は比較的実施されていたが、ノロウイルス感染症は集団感染を経験した施設も多く、その対応や汚物処理などに課題であることが判明した。このため、昨年度に引き続き、1)実際の感染性胃腸炎のアウトブレイク事例を参考としたアウトブレイクの検知と対応について、2)高齢者誤嚥性肺炎患者の咳衝動についての基礎的な研究及び、3)高齢者でのノロウイルスの便からの排出期間とその関係する因子について検討を行った。
研究方法
1) 感染性胃腸炎またはインフルエンザの集団発生が起こった施設に対する実地調査を行った。2) 誤嚥性肺炎患者のうち、認知症やはっきりした麻痺がなく同意が得られた人8人と年齢性別をマッチさせた健常高齢者11人に対して、咳反射と咳衝動を調べた。3)2カ所の高齢者施設においてノロウイルスによる胃腸炎の集団発生がみられた際に、同意の得られた入所者11名を対象に1週間毎に便を採取した。ウイルスの検出はカプシド領域に設定したプライマーを用いたRT-PCRによって行った。
結果と考察
1)本調査事例は、1例が血便を初発症状とするO157感染症、もう1例が下痢・嘔吐を初発症状とするノロウイルス感染症であり、結果的に保健所との連携はなされなかった。
2)咳衝動のほうが咳反射より、誤嚥性肺炎とそうでない人の差が顕著であった。これまでの、誤嚥性肺炎の咳反射の研究はかなりADLが悪い人、認知機能が悪い人、脳梗塞の既往がある人などが中心であった。しかし、今回はそのような人ではなく、いわば要介護になる前の人において調べている。したがって、介護予防としての誤嚥性肺炎対策には、大脳皮質によって制御されていると考えられる咳衝動を回復させることが肝要であることを示唆している。
3)便中へのノロウイルスの排泄は発症から9~32日に及んだ。発症から2週間以上経過した5名の便からは300個から1万個以上のノロウイルスが排泄されており新たな感染源となりえる量であった。嘔吐や下痢の症状は高齢者でも3日前後で治まっているが、症状消失後も長期間にわたり感染者の便の取り扱いに注意することが高齢者施設での手指を介した接触感染を防ぐのに重要であることが明らかになった。
2)咳衝動のほうが咳反射より、誤嚥性肺炎とそうでない人の差が顕著であった。これまでの、誤嚥性肺炎の咳反射の研究はかなりADLが悪い人、認知機能が悪い人、脳梗塞の既往がある人などが中心であった。しかし、今回はそのような人ではなく、いわば要介護になる前の人において調べている。したがって、介護予防としての誤嚥性肺炎対策には、大脳皮質によって制御されていると考えられる咳衝動を回復させることが肝要であることを示唆している。
3)便中へのノロウイルスの排泄は発症から9~32日に及んだ。発症から2週間以上経過した5名の便からは300個から1万個以上のノロウイルスが排泄されており新たな感染源となりえる量であった。嘔吐や下痢の症状は高齢者でも3日前後で治まっているが、症状消失後も長期間にわたり感染者の便の取り扱いに注意することが高齢者施設での手指を介した接触感染を防ぐのに重要であることが明らかになった。
結論
高齢者認知症グループホーム等における感染症と感染管理の課題が明らかになった。今後それぞれの課題について基礎的な研究に基づく対策を確立する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2017-10-03
更新日
-