医薬品や医療機器のうち、諸外国では標準的な治療法として用いられていながら我が国では実用化されていない治療法等のエビデンスの確立に係る臨床研究の計画に関する研究-食道がん化学放射線療法後局所遺残再発例に対するタラポルフィリンナトリウム(レザフィリン)及び半導体レーザー(PDレーザー)を用いた光線力学療法の多施設第Ⅱ相試験-

文献情報

文献番号
200818024A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品や医療機器のうち、諸外国では標準的な治療法として用いられていながら我が国では実用化されていない治療法等のエビデンスの確立に係る臨床研究の計画に関する研究-食道がん化学放射線療法後局所遺残再発例に対するタラポルフィリンナトリウム(レザフィリン)及び半導体レーザー(PDレーザー)を用いた光線力学療法の多施設第Ⅱ相試験-
課題番号
H20-臨床研究・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 矢野 友規(国立がんセンター東病院)
  • 石川 秀樹(大阪府立医科大学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
7,997,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本試験の研究目的は、食道癌化学放射線療法後の遺残再発に対する救済治療を新世代PDTで行い、臓器温存が期待できる根治的低侵襲救済治療法を開発する研究組織の構築と研究計画をたてることである。
研究方法
わが国においては、タラポルフィンナトリウム(レザフィリン)及び半導体レーザー(PDレーザー)を用いたPDTは、早期肺癌でのみ承認されており、食道癌や化学放射線療法後の遺残再発に対する救済治療に関しての適応はない。そのため、本研究では、レザフィリンPDTの食道における安全性とPDレーザーの推奨容量を決定する第I相試験と、その至適レーザー照射量による有効性をみる第II相試験を行う体制を整備し、研究計画書を作成する。
結果と考察
「食道癌放射線療法後局所遺残再発例に対するタラポルフィンナトリウム(レザフィリン)及び半導体レーザー(PDレーザー)を用いた光線力学療法の多施設第I/II相試験」を実施するために、国内において食道癌に対する救済治療の経験の多い施設、または食道癌に対するPDTの実施実績の多い施設として5施設(獨協大学、国立癌センター東病院、静岡県立癌センター、大阪成人病センター、兵庫県立癌センター)を選定した。各施設で行っている従来のPDTの実施方法や管理状況を確認し、施設毎による差がないような品質管理の作業を行った。最終的に、上記試験の具体的な実施方法や安全性の担保、個人情報の保守などの倫理的な面まで話し合いを行い、フルプロトコルを完成させた。食道癌に対する化学放射線療法は、臓器および機能温存可能な治療法であるが、局所の遺残・再発率が高く予後の改善には救済治療が必要である。しかし、現在、救済治療として行われている外科手術は、術後合併症の頻度が高く治療関連死が10%を越えるため、リスクの高い治療であることは否めない。本研究により、化学放射線療法後に残存・再発した場合でも、臓器温存のまま根治が期待できる救済治療が確立できれば、根治の望みをつなぐばかりか、5年生存率の革新的な向上を目指す癌医療政策に大きく貢献することも期待できる。
結論
食道癌化学放射線療法後の遺残再発に対する救済治療を新世代PDTで行い、臓器温存が期待できる根治的低侵襲救済治療法の開発を行う研究組織を整備し、研究計画書を作成した。平成21年度から、新たな研究費を獲得し、本試験を実施することが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-10-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200818024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
食道癌に対する化学放射線療法後の救済治療は外科的治療が行われることが多いが、術後合併症の頻度が高く治療関連死が10%を越えるため、安全な治療とは言い難い。本試験で用いるPDTは低侵襲で臓器温存が可能な治療である。臨床的にリンパ節転移がないと判断された症例における化学放射線療法後のリンパ節転移増悪は極めてまれであることから、原発巣のみの遺残・再発では、PDTによる救済治療が期待できる。救済PDTは、レーザー治療のあらたな応用としても期待され、レーザー学会、光線力学療法学会からも注目されている。
臨床的観点からの成果
食道癌に対する化学放射線療法は、臓器および機能温存可能な治療法であるが、局所の遺残再発率が高く予後の改善には救済治療が必要である。しかし、現在、救済治療として行われている外科手術は、術後合併症の頻度が高く治療関連死が10%を越えるためリスクの高い治療であることは否めない。本研究(救済PDT)により、化学放射線療法後に残存・再発した場合でも、臓器温存のまま根治が期待できる救済治療が確立できれば、根治の望みをつなぐばかりか、5年生存率の革新的な向上を目指す癌医療政策に大きく貢献することも期待できる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
食道がんは、難治がんのひとつであり進行期(ステージIII/IV)症例の予後は極めて悪い。これまではの標準治療は外科手術であったが、食道癌の手術は侵襲が大きいため、臓器と機能温存を希望する場合や、耐術能がない場合は、化学放射線療法が選択されることも少なくない。本研究成果で、局所再発が多いという化学放射線療法の欠点が克服され新たな根治的な低侵襲治療が開発されれば、食道癌患者の5年生存率を向上させることができることが期待できる。
その他のインパクト
食道癌に対する治療戦略では、化学放射線療法後の遺残再発に対する救済治療の成績向上は大きな課題である。京都府・滋賀県内の開業医・基幹病院を対象に「食道癌治療の最前線」と称したセミナーを平成21年3月5日に開催し、80名以上の参加があり、食道癌の治療戦略を紹介するとともに救済PDTの重要性も紹介した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yokoyama A, Muto M, et al.
Health risk appraisal models for mass screening for esophageal and pharyngeal cancer: an endoscopic follow-up study of cancer-free Japanese men.
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. , 18 (2) , 651-655  (2009)
原著論文2
Toru Ugumori, Manabu Muto, et al.
Prospective study of early detection of pharyngeal superficial carcinoma with the narrowband imaging laryngoscope.
Head Neck. , 31 (2) , 189-194  (2009)
原著論文3
Manabu Muto, et al.
Narrow Band Imaging of the Gastrointestinal Tract.
J Gastroenterol. , 44 (1) , 13-25  (2009)
原著論文4
Tetsuji Yokoyama, Manabu Muto, et al.
Health risk appraisal models for mass screening of esophageal cancer in japanese men.
Cancer Epidem Biomark & Prev. , 17 (10) , 2846-2854  (2008)
原著論文5
Masakatsu Onozawa, Tomonori Yano, Manabu Muto, et al.
Elective nodal irradiation (ENI) in definitive chemoradiotherapy (CRT) for squamous cell carcinoma of the thoracic esophagus.
Radiotherapy and Oncology. , 1-4  (2008)
原著論文6
Tomonori Yano, Manabu Muto, et al.
Long-term results of salvage endoscopic mucosal resection in patients with local failure after definitive chemoradiotherapy for esophageal squamous cell carcinoma.
Endoscopy. , 40 (9) , 717-721  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-