文献情報
文献番号
200818022A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病冠動脈疾患患者における、積極的脂質低下療法、降圧療法に関する臨床試験計画作成
課題番号
H20-臨床研究・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
植田 真一郎(琉球大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 野出 孝一(佐賀大学 医学部)
- 東 幸仁(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 森本 剛(京都大学 大学院医学研究科)
- 勝亦 百合子(琉球大学 医学部)
- 具志堅 清明(沖縄県企画部 科学技術振興課)
- 平良 秀春(沖縄県企画部 科学技術振興課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
9,130,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
冠動脈疾患患者において、積極的脂質低下療法や血圧を指標としない降圧薬の投与は、欧米では臨床試験の結果から標準とされ、ガイドラインにも記載されているが、本邦では適応外とされている。本邦でもこれらの治療法の、妥当性を問うランダム化臨床試験が必要であり、本研究では計画作成の情報基盤として、患者背景、病歴、検査所見、治療薬の現況、危険因子の管理状況の把握を目的とした調査を実施する。
研究方法
心臓カテーテル検査において75%以上の有意狭窄を有する、2型糖尿病患者が対象。2000名の病歴,CAG、心電図、心エコー、降圧薬、血糖降下薬、スタチン系、非スタチン系抗高脂血症薬、抗狭心症薬、腎機能、脂質、血圧、血糖等をCRCが施設を訪問して記載する。その結果に基づいて糖尿病合併冠動脈疾患患者の臨床試験における、エンドポイント、介入治療(危険因子に関しての強化療法)と対照治療(通常治療)プロトコルの決定、患者選択、除外基準、主要サブグループ解析を設定する。その他生物統計家と共に治療効果とイベント発生の推定による症例数の設計、出力計画、解析計画の作成を行う。
結果と考察
患者背景は米国の冠動脈疾患臨床試験COURAGE研究と比較すると、PCI実施患者が多い(75%, 米国では16%)、糖尿病合併患者では心筋梗塞の既往を持つ患者が米国なみである(37%, 米国では39%) などの特徴があった。リスクファクターの管理状況は血圧133/74mmHg (米国は122/70) ,LDLコレステロール107mg/dl(米国では70)であった。スタチン系薬剤の使用率は66%(米国では96%)であり、使用者、非使用者でLDLコレステロールの値に差が無いことから、本邦の循環器専門医は100から110を目標値としてLDLの管理を行っていることが示唆される。その他β遮断薬の使用が米国よりも少ない(26%,米国では86%)ACE阻害薬の使用が少なく、ARB使用が多い、スタチン系以外の高脂血症薬はほとんど使用されていないなどが明らかになった。
結論
本邦では糖尿病合併冠動脈疾患患者の、危険因子管理において、欧米の臨床試験の結果は必ずしも反映されておらず、約半数の患者では血圧およびLDLコレステロールはガイドライン推奨値を上回ることが明らかになった。介入試験を行うにあたって現実的な目標値は、下四分位点である血圧120/70,LDL 85程度が適切であると思われる。またランダム化臨床試験のみならず、より外的妥当性の高い結果を得るためにLDLや血圧を時間依存性変数としたコホート研究も必要である。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
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