難治性心不全に対する免疫吸着療法の開発

文献情報

文献番号
200818021A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性心不全に対する免疫吸着療法の開発
課題番号
H20-臨床研究・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
池田 宇一(信州大学 大学院医学系研究科 循環器病態学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 啓二(自治医科大学 医学部 循環器内科学)
  • 矢崎 善一(国立病院機構 まつもと医療センター 循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
9,479,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 拡張型心筋症は進行した心不全に陥ると薬物療法には限界があり、最終的には心臓移植しか治療法はない。拡張型心筋症患者の多くに抗β1アドレナリン受容体抗体を始めとする心筋自己抗体が検出され、これら抗体の一部は心不全の増悪因子となっている。そこで欧米では10年程前より心筋自己抗体が含まれるIgG分画を除去する免疫吸着療法が開始され、拡張型心筋症の新たな治療法となりつつあるが、我が国にはまだ導入されていない。そこで我々は我が国への本治療法の導入を目的に、平成20年度厚生労働科学研究費補助金の助成を受け、3施設共同パイロット試験を実施し、日本人の体格に見合った免疫吸着療法のプロトコールを作成した。
研究方法
対象:拡張型心筋症による重症心不全患者(NYHA III?IV度かつ左室駆出率<35%)。
方法:頸静脈または大腿静脈に免疫吸着回路用のダブルルーメン・カテーテルを留置し、血漿分離器(プラズマフローOP、旭化成メディカル)と選択的血漿成分吸着器(イムソーバTR、旭化成メディカル)を接続した回路を用い、2?3時間かけてIgGを吸着した。免疫吸着は、週2回、計5回(3週間)実施した。

結果と考察
パイロット試験に参加した3施設において計9名の患者に免疫吸着療法を実施した。今回日本人の体格に合わせて作成したプロトコールは、免疫グロブリン補充の必要性もなく、血行動態的にも安全に実施が可能であった。免疫吸着療法後、IgG3分画は63.5±36.8→14.6±7.2 mg/dl、抗βアドレナリン受容体抗体は27.8±12.3→18.7±13.4 U/mlへと有意に減少し、それに伴い左室駆出率 (22.8±6.1→29.1±9.1 %)、心拍出係数 (1.71±0.40→1.97±0.41 l/min/mm2) は有意に増加した。
結論
日本人の体格に合わせた免疫吸着療法のプロトコールを作成し、本治療法が拡張型心筋症患者の心不全治療に有効である可能性を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200818021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本人の体格に合わせた免疫吸着療法のプロトコールを作成し、そのプロトコールに基づいて計8名の難治性心不全患者に免疫吸着療法を実施した。吸着療法中は血行動態は安定しており、治療後も免疫グロブリンやフィブリノーゲンの補充を必要としなかった。今回の研究により、拡張型心筋症の病因に抗心筋自己抗体が関与していること、および作成した免疫吸着療法のプロトコールが日本人の拡張型心筋症患者の心不全治療に有効かつ安全であることが明らかになった。
臨床的観点からの成果
日本人の体格に合わせて作成した免疫吸着療法のプロトコールを用いてパイロット研究を進めた。3施設で計8名の患者に免疫吸着療法を実施した。免疫吸着療法後、IgG3分画および抗βアドレナリン受容体抗体は有意に減少し、それに伴い左室駆出率 (22.8±6.1→29.1±9.1 %)、心拍出係数 (1.71±0.40→1.97±0.41 l/min/mm2) の有意な改善を認めた。本治療法が拡張型心筋症による難治性心不全に有用である可能性が示された。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
信濃毎日新聞で本治療法が報道された(平成19年11月19日)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
難治性心不全に対する免疫吸着療法に関する総説
学会発表(国内学会)
3件
日本循環器学会総会一般演題、日本アフェレシス学会総会シンポジウム、日本アフェレシス学会関東甲信越地方会特別講演で免疫吸着療法について紹介した。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
なし
なし
なし  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-