悪性黒色腫におけるセンチネルリンパ節の遺伝子診断

文献情報

文献番号
200818013A
報告書区分
総括
研究課題名
悪性黒色腫におけるセンチネルリンパ節の遺伝子診断
課題番号
H19-臨床試験・一般-018
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
師井 洋一(九州大学 大学院医学研究院皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 古江増隆(九州大学 大学院医学研究院皮膚科学分野 )
  • 戸倉新樹(産業医科大学 医学部皮膚科)
  • 岩月啓氏(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学分野)
  • 玉置邦彦(東京大学 大学院医学系研究科皮膚科)
  • 石川治(群馬大学 医学部皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
早期悪性黒色腫においてセンチネルリンパ節を生検し、転移の有無を確認することにより郭清術の適応を決定することが可能となった。摘出したリンパ節の診断おいては、通常のHE染色に加えて免疫組織学的に検討し、さらには1または3種のメラニン産生関連酵素の遺伝子を指標にRT-PCR法を併用して診断精度の向上に努める。この検査により、予後の向上が期待でき、5施設共同でその有用性と安全性を検討する。




研究方法
センチネルリンパ節は悪性腫瘍が最初に転移するリンパ節と考えられ、その生検により、病期を確定し、所属リンパ節の郭清の適応を決定できる。実際には、手術前日にRIリンパシンチグラフィーを施行し、術中には放射性物質を確認しながら、色素法を併用しセンチネルリンパ節を同定、生検する。採取したリンパ節を詳細に検討し、転移の有無を確認後、治療方針を決定する。侵襲の大きい郭清術が不可能な症例においてもこの検査は可能であり、臨床的に腫脹のないリンパ節であっても微小転移が検出される可能性が高まる。以上、悪性黒色腫におけるセンチネルリンパ節の遺伝子診断について安全性を、さらに有用性を検証する。
結果と考察
平成21年2月28日現在、東京大学5例、群馬大学8例、岡山大学9例、産業医科大学15例。九州大学14例と計51例の登録が終了している。上記登録症例のうち1例のみ、有害事象が報告された。術後安静解除時に肺動脈塞栓症を併発した群馬大学の1例であったが、この検査に特異的な有害事象とは言えず、手術後一般に起こりえるものと考えられた。現在まで、偽陽性(検査で陰性でありながら、術後にリンパ節転移を生じた)例は認めていないが、さらに長期の観察が必要である。
2007年に日本皮膚科学会が主導して、全国の大学病院皮膚科および主要皮膚科施設に対しアンケート調査を行った(計81施設回答)。悪性黒色腫におけるセンチネルリンパ節生検は2007年12月の調査実施日までに調査対象施設の90%で施行されており、そのうちパテントブルーを使用している施設は84%で、全国で2902例がすでに施行されていた。パテントブルー使用に関する副作用(有害事象)は1例も報告はなかった。
結論
適応基準に合致した症例を順次登録し、その安全性を検討するとともに、長期予後についても検証していく。現時点では、重篤な有害事象は認められず、安全な検査法、治療法であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-10-29
更新日
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