文献情報
文献番号
200817014A
報告書区分
総括
研究課題名
創傷治療に被覆材、組織接着剤、止血剤としての新規医療薬品の開発研究
課題番号
H20-トランス・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 公二(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 石原 雅之(防衛医科大学校 研究センター)
- 前原 正明(防衛医科大学校)
- 清澤 智晴(防衛医科大学校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
21,416,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
培養皮膚移植の有用性・安全性については証明されているが、生着性が低いことが難点であった。培養皮膚移植に際し、移植用皮膚片の固定ならびに接着を向上させることが、生着率および治療効果の向上につながると推察される。我々はキトサンを化学的に修飾することで可溶性を高め、紫外線照射数秒で軟ゴム状にゲル化する光硬化性キトサンゲルを開発した。本研究は培養皮膚の組織接着剤としての適応、内視鏡を併用した消化器粘膜切除術への充填材・出血抑制剤としての適用、肝臓等内臓出血における止血剤としての適用について検討し、光硬化性キトサンゲルの新規医療薬品としての可能性について検討した。
研究方法
重層化開始後7日目の三次元培養皮膚をヌードマウス背部に移植し、光硬化性キトサンゲル0.1?2%の濃度で、紫外線の照射は30-120秒の間でそれぞれ検討した。止血剤としての適用について、ヘパリン投与ラット肝臓左葉に直径3mmの貫通創を作製し、光硬化性キトサンゲルスポンジ(PC)とタココンブ(TC)で比較検討した。ブタを用いて内視鏡を施行し、胃前庭部大弯側の粘膜下層に0.75%光硬化性キトサンゲルないしは高張生理食塩水を注入し、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行した。ESD施行1,4,8週間後にも内視鏡を行い、人工潰瘍の創傷治癒を観察した。
結果と考察
0.25%以下の濃度では培養皮膚接着効果はなく、1%以上であれば移植床と培養皮膚間のゲルが厚くなり培養皮膚が脱落した。0.5%のゲルで紫外線60秒程度が至適条件であった。今後はラットなどの動物を用いた検討が必要である。ヘパリン投与ラットにおいて止血時間はPC群の方が短い時間で完了した。TC群は8匹中3匹の死亡例がみられたが、PC群では死亡例はみられなかった。キトサン群はタココンブ群を凌駕する有効性をもつことが示され、安全で有効な止血剤となりうる。ESD時に使用した光硬化性キトサンゲルは、不溶性ゲルとして筋層上部に存在し、筋層への通電および出血を物理的に防止していた。ブタ胃粘膜下層に注入した光硬化性キトサンゲルは8週間で消失していた。光硬化性キトサンゲルを用いたESDは安全かつ容易な手技であり、粘膜下層注入物質としての新規医薬品となりうると思われる。
結論
本研究により光硬化性キトサンゲルは培養皮膚の組織接着剤、内視鏡を併用した消化器粘膜切除術への充填材・出血抑制剤、肝臓等内臓出血における止血剤、創傷被覆剤として有効かつ安全であり新規医療薬品としての可能性が期待できる。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
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