脂肪細胞由来ホルモン、レプチンのトランスレーショナルリサーチの推進

文献情報

文献番号
200817009A
報告書区分
総括
研究課題名
脂肪細胞由来ホルモン、レプチンのトランスレーショナルリサーチの推進
課題番号
H20-トランス・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中尾 一和(京都大学 臨床病態医科学 内分泌代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 海老原 健(京都大学 臨床病態医科学 内分泌代謝内科)
  • 平田 雅一(京都大学 臨床病態医科学 内分泌代謝内科)
  • 細田 公則(京都大学 医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 益崎 裕章(京都大学 臨床病態医科学 内分泌代謝内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
66,942,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
レプチンは脂肪細胞由来の抗肥満ホルモンで、強力な摂食抑制作用、糖脂質代謝調節作用などを有する。我々はモデルマウスを用いて脂肪萎縮症における糖脂質代謝異常の主な原因はレプチンの作用不足であり、レプチンが脂肪萎縮性糖尿病治療薬として有用であることを明らかにした(Diabetes 50: 1440, 2001)。さらにヒト組替えレプチンを用いて脂肪萎縮症を対象とした臨床試験を行い、糖尿病や脂質異常症に対するレプチン治療効果(N Engl J Med 351: 615, 2004)、3年以上にわたるレプチン治療の長期効果と安全性を明らかにしてきた(J Clin Endocrinol Metab 92: 532, 2007)。脂肪萎縮症は有効な治療法が確立していない難治性疾患であるが、本研究は脂肪萎縮症の画期的な治療法の開発に発展するものと期待される。さらに本研究では脂肪萎縮症にとどまらず「生活習慣病を対象としたレプチンのトランスレーショナルリサーチ」を実施する。レプチン系を標的とした新規治療法の開発が期待される。
研究方法
脂肪萎縮症を対象としたレプチンの医師主導治験の準備を京都大学探索医療センターと協力して行い、治験を実施する。生活習慣病を対象としたレプチンのトランスレーショナルリサーチの一環として今回、糖尿病領域におけるより広範なレプチンの臨床応用を目指して、2型糖尿病におけるレプチンの有用性をモデルマウスを用いて検討した。
結果と考察
我々はこれまでに10例の全身性脂肪萎縮症に対しレプチン治療を導入し、レプチンがインスリン感受性の改善を伴う糖、脂質代謝の改善、インスリン標的臓器である肝臓および骨格筋における脂質含量の低下をもたらすことを明らかにした。またレプチン治療の長期効果と安全性も明らかにした。現在、京都大学探索医療センターと協力し、これまでの症例の報告書作成・集計・解析・モニタリングを行うとともに、治験プロトコルの作成など治験準備を進めている。2型糖尿病モデルマウスをストレプトゾトシン(STZ)と高脂肪食(HFD)を負荷して作製した。2週間のレプチン持続投与によりSTZ/HFDマウスの摂食量は抑制され、体重減少も認められた。血糖値、血中中性脂肪、遊離脂肪酸濃度、総コレステロール濃度は有意な低下を示し、肝臓および骨格筋内中性脂肪含量の低下も観察された。本研究により2型糖尿病におけるレプチンの有用性が示された。
結論
医師主導治験の実施による脂肪萎縮性糖尿病治療薬としてのレプチンの早期確立が期待される。また、2型糖尿病におけるレプチンの新規抗糖尿病薬としての臨床応用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-