経鼻粘膜投与型インフルエンザワクチンの臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200817005A
報告書区分
総括
研究課題名
経鼻粘膜投与型インフルエンザワクチンの臨床応用に関する研究
課題番号
H19-トランス・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 秀樹(国立感染症研究所 感染病理部第二室)
研究分担者(所属機関)
  • 真鍋 貞夫(財団法人阪大微生物研究会観音寺研究所)
  • 喜田  宏(北海道大学大学院獣医学研究科)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所ウイルス第3部)
  • 清野研一郎(聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
90,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
経鼻粘膜投与型のインフルエンザワクチンの実用化に向け、製剤の決定、投与方法を決定し安全性を確認する事を目的とする。製造用候補株の検討とライブラリー化を行い合成二本鎖RNA製剤やα-GalCerを粘膜アジュバントとしてNIBRG14全粒子不活化ワクチンの経鼻接種後の応答を調べる事を目的とする。
研究方法
インフルエンザウイルス株A/VN/1194/2004(H5N1)を用いて3-4歳のカニクイザルを用い経鼻免疫後感染実験を行った。アジュバント候補であるPoly (I:C)とAmpligenの毒性試験はGLP施設を用いラットを用いた単回皮下投与毒性試験及び反復経鼻投与毒性試験、イヌを用いた単回経鼻投与毒性試験及び反復経鼻投与毒性試験を行った。
結果と考察
カニクイザルを用いNIBRG14 全粒子不活化ワクチンとpolyI:polyC12U (Ampligen)の経鼻接種で特異的IgG 抗体の上昇が認められたその際副反応は認められなかった。また攻撃感染の実験では経鼻免疫後高病原性鳥インフルエンザA/Vietnam/1194/04 (H5N1)の攻撃感染に対し感染防御する事が示された。インフルエンザウイルスの感染を防御する最も効果的な戦略は感染部位である上気道の粘膜上に粘膜免疫を誘導する事である。ヒトに免疫機構の近いカニクイザルで粘膜ワクチンの感染防御効果が示せた事は臨床応用へ向けて大きな進歩である。また粘膜アジュバントの非毒性試験ではラットを用いた単回経鼻投与毒性試験及び反復経鼻投与毒性試験ではPoly (I:C)またはAmpligenを投与したラットは、一般状態、体重、剖検所見、病理組織学的検査のいずれにおいても対照群と比較して異常は見られなかった。イヌを用いた単回経鼻投与毒性試験及び反復経鼻投与毒性試験においてもPoly (I:C)またはAmpligenを投与したビーグル犬は、一般状態、体重、剖検所見、病理組織学的検査のいずれにおいても対照群と比較して異常は見られなかった。dsRNAアジュバントの経鼻接種時の安全性が示された。
結論
ヒトに免疫機構が類似している霊長類であるカニクイザルにおいて合成二本鎖RNAアジュバント併用全粒子不活化インフルエンザワクチンの経鼻接種により高病原性鳥インフルエンザによる攻撃感染に対し感染防御しうる粘膜免疫及び全身性の免疫が誘導された。ワクチン接種によると思われる副作用は認められず、接種方法としても安全である事が示唆された。また非毒性試験によりdsRNAアジュバントの経鼻接種での安全性が示された。

公開日・更新日

公開日
2009-05-26
更新日
-