文献情報
文献番号
202006088A
報告書区分
総括
研究課題名
MID-NETⓇを活用したリアルワールドデータに基づく新型コロナウイルス感染症治療薬の評価手法の開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2082
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
宇山 佳明(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療情報活用部)
研究分担者(所属機関)
- 野中 孝浩(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療情報活用部)
- 石黒 智恵子(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療情報活用部)
- 駒嶺 真希(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療情報活用部)
- 一丸 勝彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療情報活用部)
- 原田 紗世子(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療情報活用部)
- 陰山 卓哉(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療情報活用部)
- 岸塲 真理(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療情報活用部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
18,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
SARS-Cov-2による感染症(以下「COVID-19」という。)の治療に用いられる医薬品(以下「COVID-19治療薬」という。)について、MID-NET®を活用してリスク・ベネフィット評価を適切かつ効率的に実施するため、先行研究で用いられている対象集団、曝露・対照、アウトカム、共変量の各種設定について、MID-NET®における利用可能性を検討するとともに、医薬品ごとのベネフィット/リスク評価を探索的に実施して課題を整理し、今後の調査計画の立案に資することを目的とする。
研究方法
MID-NET®に含まれる、COVID-19 に対する診療や治療の記録を有する患者(以下「COVID-19 患者」という。)の特徴を明らかにするため、COVID-19 又はその関連疾患における、疾病及び関連保健問題の国際統計分類 第 10 版(以下「ICD-10」という。)(2013年版)の記録の有無、COVID-19 病原体検査(以下「COVID-19 検査」という。)の結果値の記録の有無等によりコホートを同定し、COVID-19 に対する診療や治療時に記録され得る ICD-10、COVID-19 検査の陽性結果を有する患者における COVID-19 治療薬の処方状況、入院治療を要する患者集団の患者背景(例:年齢、処方された COVID-19 治療薬、肝又は腎機能)等を評価した。
また、入院治療を要した患者集団のうち、COVID-19 治療薬の処方があった患者集団における入院日数及び対象とする COVID-19 治療薬の処方日数を集計した。
また、入院治療を要した患者集団のうち、COVID-19 治療薬の処方があった患者集団における入院日数及び対象とする COVID-19 治療薬の処方日数を集計した。
結果と考察
ICD-10の記録件数の月別推移において、COVID-19検査の結果値又はその実施に係る算定記録を有する患者では、U07.1「コロナウイルス感染症2019,ウイルスが同定されたもの」と同様にB34.2「コロナウイルス感染症,部位不明」等の関連疾患のICD-10も2020年4月以降にその記録件数が増加していた。B34.2等を活用する際には、COVID-19患者以外も特定され得るため、COVID-19の診療に特異的な他の情報と組み合わせる等の対応が必要ではあるものの、COVID-19患者を漏れなく抽出するためには、これらの関連疾患も含めて集団を特定する必要があると考えられた。COVID-19検査の記録状況については、本邦におけるCOVID-19に関するPCR検査の実施患者数の推移に対応するような増加・減少傾向が観察されたものの、陽性結果が記録される前に既にU07.1等のICD-10で診療が記録されている場合も認められ、他機関で実施されたCOVID-19検査結果等が含まれないなど、MID-NET®でのCOVID-19検査に関する記録は一部である可能性が示唆された。そのため、入院治療を要する患者集団の定義において、COVID-19検査の陽性結果の代わりにCOVID-19の入院治療に係る加算の活用を検討したところ、COVID-19の入院治療に特異的でない加算の扱いには留意する必要があるものの、入院加算を活用することで入院治療を要したCOVID-19患者をより適切に抽出できる可能性が示唆された。また入院時や入院翌日から退院日までの肝又は腎機能障害の発現について検討したところ、入院時に肝又は腎機能障害を発現している患者が一定程度存在し、入院後には重症度が悪化している割合が高かったことから、COVID-19治療薬によるリスク・ベネフィット評価においては、入院時の患者背景や治療薬の影響等を考慮した上で、処方開始前からの変化量等を指標にすることが適切と考えられた。
入院治療を要した患者に処方されているCOVID-19治療薬としては、ファビピラビルやデキサメタゾンの処方割合が高かった。今回の調査では、処方時点のICD-10を問わず集計対象としているためにCOVID-19以外の治療用途が含まれている可能性があるものの、処方患者数の多かったCOVID-19治療薬の患者集団における入院期間や処方日数については治療薬間でばらつきが認められ、用途の違いが影響したものと考えられた。また、処方日数の結果から、MID-NET®において各治療薬の処方期間を定義する際には、治療薬ごとに対象期間内での処方状況や記録状況を考慮することの重要性が示唆された。
入院治療を要した患者に処方されているCOVID-19治療薬としては、ファビピラビルやデキサメタゾンの処方割合が高かった。今回の調査では、処方時点のICD-10を問わず集計対象としているためにCOVID-19以外の治療用途が含まれている可能性があるものの、処方患者数の多かったCOVID-19治療薬の患者集団における入院期間や処方日数については治療薬間でばらつきが認められ、用途の違いが影響したものと考えられた。また、処方日数の結果から、MID-NET®において各治療薬の処方期間を定義する際には、治療薬ごとに対象期間内での処方状況や記録状況を考慮することの重要性が示唆された。
結論
MID-NET®を活用してCOVID-19治療薬のベネフィット/リスク評価を実施することは可能と考えられたが、本研究での結果を考慮した解析計画とすることで、より適切な調査の実施につながることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2021-06-04
更新日
-