文献情報
文献番号
202006086A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症に対する疫学分析を踏まえたクラスター対策等の感染拡大防止策の統括研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2024
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 基(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
- 齋藤 智也(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター)
- 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学研究センター)
- 西浦 博(国立大学法人北海道大学 大学院医学研究科 社会医学講座衛生学分野)
- 押谷 仁(東北大学 大学院医学系研究科)
- 和田 耕治(国際医療福祉大学 大学院医学研究科公衆衛生学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2020年1月から国内流行が始まった新型コロナウイルス感染症については、当初、水際での対策が講じられてきたが、国内の複数地域で感染経路が明らかではない患者が散発的に発生し、一部地域で小規模患者クラスター(集団)が発生した。これを契機とし、厚生労働省新型コロナウイルス対策本部において、「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針(令和2年2月25日)」が示された。クラスター対策を行うことが重要とされ、クラスターが発生した自治体と連携して、クラスター発生の早期探知、専門家チームの派遣、データの収集分析と対応策の検討などを行うため、感染症の専門家で構成されるクラスター対策班専門家チームが設置された。本研究班はこれを引き継いで、同感染症に関するより効率的な科学的知見の収集及びより効果的な政策実施にあたっての科学的根拠の整理並びに感染症拡大防止に係る情報発信を行う体制構築に資することを目的として立ち上げられた。
研究方法
研究体制としては主に厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(以下、アドバイザリーボード)および厚生労働省クラスター対策班(後に疫学データ班)の専門家チームとして、全国自治体が公表する同感染症関連の情報収集、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS)で収集されたデータの分析を行った。これらの分析に際しては感染症疫学的手法を用いた分析、感染症数理モデルを用いた分析を行った。またクラスターの定性的、定量的な分析のためのクラスターマッピングの手法を確立し活用した。国内外の学術論文の体系的レビューを行った。
結果と考察
厚生労働省疫学データ班と連携し、HER-SYSおよび自治体公表データ収集システムの運用に関する技術的サポートを行うとともに、これらのデータを用いてCOVID-19の流行状況を分析し、ほぼ毎週開催されたアドバイザリーボードの公開資料および国立感染症研究所の報告書として公衆衛生情報の還元を行った。
クラスターの定性的、定量的な分析のためのクラスターマッピングの手法を確立し、自治体公表データを用いてデータベースの構築と可視化を行った。2020年3~4月の新型コロナウイルス感染症の流行期初期には輸入例や都道府県間の移動、飲食店やイベント等における集団感染からの流行拡大、後半に病院や福祉施設のクラスターが増加した。緊急事態宣言解除後の6~8月の流行期では、会食、飲酒、歌唱、集団生活等に関連した集団発生事例が確認された。クラスターの発生は、流行時期により異なる年齢層や活動の場で起こり、地域での新型コロナウイルス伝播の特徴や状況を反映していることを明らかにした。また厚生労働省クラスター対策班として全国自治体に派遣されたFETPの知見をまとめて市民に情報提供と注意喚起を行った。クラスター発生場面の情報などを元に、職場、高齢者施設など様々な場面における評価を行い、啓発資料ならびに対策を検討するための資料の作成を行った。
クラスター対策として実施してきた理論の背景として、本感染症が屋内で2次感染が起こりやすいという特徴を捉えるという点で大きな意義を有する。本研究では、流行サイズが分岐過程で記述されるような小規模アウトブレイクのフェーズを過ぎてからも継続的に異質性を加味した流行対策のデザインが可能であることを示した。特に、数理的に子孫の分布を分断することを通じて離散化した次世代行列をコンピュートし、そのことを通じてハイリスク人口に集中した早期の流行対策によって人口全体の2次感染を減少傾向に転じさせることができることを示した。但し、それは流行早期のみに有用である可能性も高く、今後その点を加味した検討を積み重ねることが求められる。
新型コロナウイルス感染症対策においては、感染症危機管理対応において、情報収集分析部門への資源の大量投入の意義が実証された一方、データガバナンスの構造的問題の解決とコミュニケーションへのより一層の資源投入が、今後の感染症危機におけるより迅速でより実効的な対策に不可欠であることを指摘した。
クラスターの定性的、定量的な分析のためのクラスターマッピングの手法を確立し、自治体公表データを用いてデータベースの構築と可視化を行った。2020年3~4月の新型コロナウイルス感染症の流行期初期には輸入例や都道府県間の移動、飲食店やイベント等における集団感染からの流行拡大、後半に病院や福祉施設のクラスターが増加した。緊急事態宣言解除後の6~8月の流行期では、会食、飲酒、歌唱、集団生活等に関連した集団発生事例が確認された。クラスターの発生は、流行時期により異なる年齢層や活動の場で起こり、地域での新型コロナウイルス伝播の特徴や状況を反映していることを明らかにした。また厚生労働省クラスター対策班として全国自治体に派遣されたFETPの知見をまとめて市民に情報提供と注意喚起を行った。クラスター発生場面の情報などを元に、職場、高齢者施設など様々な場面における評価を行い、啓発資料ならびに対策を検討するための資料の作成を行った。
クラスター対策として実施してきた理論の背景として、本感染症が屋内で2次感染が起こりやすいという特徴を捉えるという点で大きな意義を有する。本研究では、流行サイズが分岐過程で記述されるような小規模アウトブレイクのフェーズを過ぎてからも継続的に異質性を加味した流行対策のデザインが可能であることを示した。特に、数理的に子孫の分布を分断することを通じて離散化した次世代行列をコンピュートし、そのことを通じてハイリスク人口に集中した早期の流行対策によって人口全体の2次感染を減少傾向に転じさせることができることを示した。但し、それは流行早期のみに有用である可能性も高く、今後その点を加味した検討を積み重ねることが求められる。
新型コロナウイルス感染症対策においては、感染症危機管理対応において、情報収集分析部門への資源の大量投入の意義が実証された一方、データガバナンスの構造的問題の解決とコミュニケーションへのより一層の資源投入が、今後の感染症危機におけるより迅速でより実効的な対策に不可欠であることを指摘した。
結論
クラスター分析を通して全国自治体の対策支援を行い、またHER-SYSおよび自治体公表データ収集システムのデータを用いて流行状況を分析し、アドバイザリーボードの公開資料および国立感染症研究所の報告書として情報還元を行った。感染症危機管理対応において、情報収集分析部門への資源の大量投入の意義が実証された一方で、データガバナンスの構造的問題の解決とコミュニケーションへのより一層の資源投入が、今後の感染症危機におけるより迅速でより実効的な対策に不可欠であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2022-07-29
更新日
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