文献情報
文献番号
202006084A
報告書区分
総括
研究課題名
コロナ禍における子どもへの影響と支援方策のための横断的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2065
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山野 則子(大阪府立大学 人間社会システム科学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 和田 一郎(花園大学)
- 亀岡 智美(兵庫県こころのケアセンター)
- 木曽 陽子(大阪府立大学)
- 鈴木 勲(会津大学短期大学部)
- 伊藤 ゆかり(大阪府立大学)
- 小倉 康弘(大阪府立大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
17,841,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、新型コロナウイルスにより生じた社会システムの急激な変化による子どもの生活への影響について、調査に基づいて以下2側面において検討し、政策提言を行う。
①保護者調査:子どものいる家庭への新型コロナウイルスの影響の検討
②機関調査:困難を抱える子どもの対応をする機関の実態・対応状況の変化の検討
本研究では、コロナ禍により困難を抱えている子どもの実態を明らかにし、声を上げにくい子どもを主体とした社会的課題を同定し、政策提言を行う。保護者調査によって、親の就労状況の変化などの全体像を把握する。そして機関調査によって、経済的な問題に加えて、虐待や親の精神疾患などの多重的に困難を抱える深刻な子どもに対応する児童相談所、市町村(児童母子相談部門:DVや要保護児童対策地域協議会など含む・母子保健部門・教育委員会:学校)などの機関の実態と対応状況を把握し、保護者、機関の実態を踏まえた対応策について、感染症による特徴的な変化を同定することで、これまでの自然災害に加え、新たに感染症対応に関して独立した子ども支援計画の設定や方向性を示し、また通常課題に対する対策のなかで、より強化すべき方向性を明確化し新たに示す形で提言する。
①保護者調査:子どものいる家庭への新型コロナウイルスの影響の検討
②機関調査:困難を抱える子どもの対応をする機関の実態・対応状況の変化の検討
本研究では、コロナ禍により困難を抱えている子どもの実態を明らかにし、声を上げにくい子どもを主体とした社会的課題を同定し、政策提言を行う。保護者調査によって、親の就労状況の変化などの全体像を把握する。そして機関調査によって、経済的な問題に加えて、虐待や親の精神疾患などの多重的に困難を抱える深刻な子どもに対応する児童相談所、市町村(児童母子相談部門:DVや要保護児童対策地域協議会など含む・母子保健部門・教育委員会:学校)などの機関の実態と対応状況を把握し、保護者、機関の実態を踏まえた対応策について、感染症による特徴的な変化を同定することで、これまでの自然災害に加え、新たに感染症対応に関して独立した子ども支援計画の設定や方向性を示し、また通常課題に対する対策のなかで、より強化すべき方向性を明確化し新たに示す形で提言する。
研究方法
1.保護者調査・子ども調査
事前に3万人のモニターに対してスクリーニングの事前調査を行い、子どもの年齢条件(0~19歳未満の子ども)を満たし、かつ保護者調査・子ども調査の両方(小学校高学年から高校生・高専生等の子どもがいる保護者に限る)、または保護者調査のみ調査協力の同意の得られた保護者(0~19歳未満の子どもを持つ保護者)を抽出した。
•本調査では、調査協力の得られた保護者に対して調査を実施し、保護者調査のみの保護者と、保護者調査と子ども調査の両方ともに協力した保護者に対して実施した。本調査では、貧困の状況が厳しいと考えられる、世帯年収が低いサンプルが少なかったため、年収400万以下の世帯でかつ保護者調査と子ども調査の両方ともに協力することができる保護者に対して、本調査と統一の項目で追加調査を実施した。
2.機関調査
•全市町村(1,741件)の児童相談・母子相談部門・母子保健部門・教育委員会の3部署(調査対象機関は5,223件(全市町村1,741件×3部署))として、困難を抱える子どもへの支援活動の実態を調査した。
•児童相談所調査では、児童相談所(全国の支所を含む児童相談所:237件)と一時保護所(全国の一時保護所:144件)を調査対象として、著しく困難な子どもの把握実態・対応状況の変化を調査した。
事前に3万人のモニターに対してスクリーニングの事前調査を行い、子どもの年齢条件(0~19歳未満の子ども)を満たし、かつ保護者調査・子ども調査の両方(小学校高学年から高校生・高専生等の子どもがいる保護者に限る)、または保護者調査のみ調査協力の同意の得られた保護者(0~19歳未満の子どもを持つ保護者)を抽出した。
•本調査では、調査協力の得られた保護者に対して調査を実施し、保護者調査のみの保護者と、保護者調査と子ども調査の両方ともに協力した保護者に対して実施した。本調査では、貧困の状況が厳しいと考えられる、世帯年収が低いサンプルが少なかったため、年収400万以下の世帯でかつ保護者調査と子ども調査の両方ともに協力することができる保護者に対して、本調査と統一の項目で追加調査を実施した。
2.機関調査
•全市町村(1,741件)の児童相談・母子相談部門・母子保健部門・教育委員会の3部署(調査対象機関は5,223件(全市町村1,741件×3部署))として、困難を抱える子どもへの支援活動の実態を調査した。
•児童相談所調査では、児童相談所(全国の支所を含む児童相談所:237件)と一時保護所(全国の一時保護所:144件)を調査対象として、著しく困難な子どもの把握実態・対応状況の変化を調査した。
結果と考察
1.保護者調査・子ども調査
今回の結果から、経済状況や不本意な在宅生活が、家庭内不和を起こす可能性が高く、それは様々なところに影響することも明らかになった。保護者調査では家庭の中で精神的・身体的・その他の負担が増えた合計の割合は約25%であり、4人に1人が負担を感じていた。また子ども調査では、なんらかのストレスを抱えている子どもは9割弱であり、その内、高いストレスを抱えている割合は3割強であった。
2.機関調査
学校や支援機関では、様々に訪問を伴う作業を実施しているが、コロナによる自粛によって、活動は余儀なく延期されたり、中止されたりした。これは、孤立しがちな保護者や子どもに会話する機会や勇気づける機会を逃したことになる。気になる子どもたちをキャッチできず、結果的には見えないところで、子どもたちのストレスが高くなっていくことを放置せざるをえなくなったものと考える。児童相談所における子どもの問題の特徴的なこととして、ゲーム依存の相談、性的な問題、DVに関係する虐待相談が増えたことであった。精神的負担を感じた保護者が増え、休校の影響は大きい。自粛解除後の手立てが必須であろう。
今回の結果から、経済状況や不本意な在宅生活が、家庭内不和を起こす可能性が高く、それは様々なところに影響することも明らかになった。保護者調査では家庭の中で精神的・身体的・その他の負担が増えた合計の割合は約25%であり、4人に1人が負担を感じていた。また子ども調査では、なんらかのストレスを抱えている子どもは9割弱であり、その内、高いストレスを抱えている割合は3割強であった。
2.機関調査
学校や支援機関では、様々に訪問を伴う作業を実施しているが、コロナによる自粛によって、活動は余儀なく延期されたり、中止されたりした。これは、孤立しがちな保護者や子どもに会話する機会や勇気づける機会を逃したことになる。気になる子どもたちをキャッチできず、結果的には見えないところで、子どもたちのストレスが高くなっていくことを放置せざるをえなくなったものと考える。児童相談所における子どもの問題の特徴的なこととして、ゲーム依存の相談、性的な問題、DVに関係する虐待相談が増えたことであった。精神的負担を感じた保護者が増え、休校の影響は大きい。自粛解除後の手立てが必須であろう。
結論
支援機関においては、平時から、自然災害や新型コロナウイルス感染症のような緊急時においても対応できるような人員体制と支援体制を検討すべきである。
<必要とされる政策>
①必要な子どもに活用される仕掛けのある貧困関連制度づくり
②スクリーニングの導入等、子どものリスクを発見する仕組みづくり(文部科学省・山野研究室2020)
③福祉行政と教育行政の連携のデジタル化
④オンラインカウンセリングなどの導入
⑤子ども食堂のネットワーク化など、地域資源の活用
<必要とされるトラウマケア>
①精神健康に有害であることが知られている3つの要因(恐怖、社会的孤立、スティグマ)への配慮
②トラウマインフォームドケア(亀岡ら,2018)の取組み
③トラウマに関連した問題意識を高め、再トラウマ化を回避し、予防を強化する
<必要とされる政策>
①必要な子どもに活用される仕掛けのある貧困関連制度づくり
②スクリーニングの導入等、子どものリスクを発見する仕組みづくり(文部科学省・山野研究室2020)
③福祉行政と教育行政の連携のデジタル化
④オンラインカウンセリングなどの導入
⑤子ども食堂のネットワーク化など、地域資源の活用
<必要とされるトラウマケア>
①精神健康に有害であることが知られている3つの要因(恐怖、社会的孤立、スティグマ)への配慮
②トラウマインフォームドケア(亀岡ら,2018)の取組み
③トラウマに関連した問題意識を高め、再トラウマ化を回避し、予防を強化する
公開日・更新日
公開日
2024-06-06
更新日
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