文献情報
文献番号
202027024A
報告書区分
総括
研究課題名
岩手県における東日本大震災被災者の支援を目的とした大規模コホート研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-健危-指定(復興)-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
坂田 清美(岩手医科大学 医学部衛生学公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
- 祖父江 憲治(岩手医科大学)
- 酒井 明夫(岩手医科大学)
- 小笠原 邦昭(岩手医科大学 医学部脳神経外科学講座)
- 滝川 康裕(岩手医科大学 医学部内科学講座消化器内科肝臓分野)
- 小山 耕太郎(岩手医科大学 医学部小児科学講座)
- 大塚 耕太郎(岩手医科大学 神経精神科学講座)
- 鈴木 るり子(岩手医科大学 医学部衛生学公衆衛生学講座)
- 田中 文隆(岩手医科大学 内科学講座腎・高血圧内科分野)
- 石橋 靖宏(岩手医科大学 医学部内科学講座脳神経内科・老年化分野)
- 西 信雄(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国際栄養情報センター)
- 鈴木 康司(藤田医科大学 医療科学部臨床検査学科)
- 米澤 慎悦(公益財団法人岩手県予防医学協会)
- 佐々木 亮平(岩手医科大学 教養教育センター人間科学科体育学分野)
- 下田 陽樹(岩手医科大学 医学部衛生学公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
75,120,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の目的は、平成23年度に研究に同意した被災地住民約1万人に健康調査を実施することにより、健康状態の改善度・悪化度を客観的に評価し、1.被災者に適切な支援を継続的に実施すること、2.震災の健康影響を縦断的に評価できる体制を構築することにある。本年度は、平成23年度から令和2年度にかけて収集してきた健診結果を用いて、被災地住民に生じている健康課題を明らかにした。
研究方法
東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県大槌町、陸前高田市、山田町、釜石市平田地区を対象に健康調査を実施した。ベースライン調査は、平成23年度に行われた。対象地域の18歳以上の全住民に健診の案内を郵送し、健診会場にて研究参加の同意を得た。ベースライン調査には10,475人が参加した。平成24年度は7,687人、平成25年度は7,141人、平成26年度は6,836人、平成27年度は6,507人、平成28年度は6,157人、平成29年度は5,893人、平成30年度は5,638人、令和元年度は5,420人、令和2年度は4,284人が健診を受診した。
健康調査の項目は、身長、体重、腹囲、握力、血圧、眼底検査、心電図検査、血液検査、尿検査である。これまで毎年実施していた呼吸機能検査は、新型コロナウイルス感染症の流行を考慮して令和2年度は中止した。また、大槌町では歯科健診も実施している。
問診調査の項目は、被災者の生活や健康状態、心情を考慮し、時期に応じて項目の修正を図ってきた。平成23年度の項目は震災前後の住所、健康状態、治療状況と震災の治療への影響、震災後の罹患状況、食事調査、喫煙・飲酒の震災前後の変化、仕事の状況、睡眠の状況、ソーシャルネットワーク、ソーシャルサポート、現在の活動状況、現在の健康状態、心の元気さ(K6)、震災の記憶(PTSD)、発災後の住居の移動回数、暮らし向き(経済的な状況)、活動状況(65歳以上の受診者を対象)である。以降の調査において、頭痛の問診、震災による死別や家屋被害、現在の居住環境、教育歴、日中の眠気(エプワース眠気尺度)の項目を追加した。
健康調査の項目は、身長、体重、腹囲、握力、血圧、眼底検査、心電図検査、血液検査、尿検査である。これまで毎年実施していた呼吸機能検査は、新型コロナウイルス感染症の流行を考慮して令和2年度は中止した。また、大槌町では歯科健診も実施している。
問診調査の項目は、被災者の生活や健康状態、心情を考慮し、時期に応じて項目の修正を図ってきた。平成23年度の項目は震災前後の住所、健康状態、治療状況と震災の治療への影響、震災後の罹患状況、食事調査、喫煙・飲酒の震災前後の変化、仕事の状況、睡眠の状況、ソーシャルネットワーク、ソーシャルサポート、現在の活動状況、現在の健康状態、心の元気さ(K6)、震災の記憶(PTSD)、発災後の住居の移動回数、暮らし向き(経済的な状況)、活動状況(65歳以上の受診者を対象)である。以降の調査において、頭痛の問診、震災による死別や家屋被害、現在の居住環境、教育歴、日中の眠気(エプワース眠気尺度)の項目を追加した。
結果と考察
10年間の健康状態、生活習慣、社会的支援の推移を分析したところ、心の健康、睡眠の問題、飲酒、喫煙、社会的支援の不足といった多くの指標で、初年度以降、問題を有するものの割合は減少、あるいは横ばいの推移となっていた。一方で、高血圧、糖尿病の有所見者は徐々に増加している傾向がみられた。
現在の居住形態と健康状態、生活習慣、社会的支援の関連性を検討した結果、災害公営住宅の居住者において、男性では精神的健康の問題、睡眠の問題、主観的健康状態不良、運動量が少ない者、社会的支援が不足している者の割合が多い傾向が認められた。女性では精神的健康の問題、主観的健康状態不良、喫煙者、運動量が少ない者、社会的支援が不足している者が多い傾向が認められた。このように災害公営住宅居住者においては、震災前と同じ住居に居住している者とくらべて健康状態、生活習慣、社会的支援の問題が男女ともに多くみられた。また近年の傾向として、災害公営住宅の居住者においてより多くの問題がみられるようになっており、新たな生活環境におけるサポートやケアが必要であると考えられた。
災害公営住宅居住者の訪問調査の分析では、高齢者においては特に既存コミュニティの有無にかかわらず、新たな土地でソ―シャルキャピタルやソーシャルネットワークを築くことが難しいことが示された。地域に出るきっかけづくりを含む、長期的な高齢者支援のあり方について早急な取り組みが求められると考えられた。
現在の居住形態と健康状態、生活習慣、社会的支援の関連性を検討した結果、災害公営住宅の居住者において、男性では精神的健康の問題、睡眠の問題、主観的健康状態不良、運動量が少ない者、社会的支援が不足している者の割合が多い傾向が認められた。女性では精神的健康の問題、主観的健康状態不良、喫煙者、運動量が少ない者、社会的支援が不足している者が多い傾向が認められた。このように災害公営住宅居住者においては、震災前と同じ住居に居住している者とくらべて健康状態、生活習慣、社会的支援の問題が男女ともに多くみられた。また近年の傾向として、災害公営住宅の居住者においてより多くの問題がみられるようになっており、新たな生活環境におけるサポートやケアが必要であると考えられた。
災害公営住宅居住者の訪問調査の分析では、高齢者においては特に既存コミュニティの有無にかかわらず、新たな土地でソ―シャルキャピタルやソーシャルネットワークを築くことが難しいことが示された。地域に出るきっかけづくりを含む、長期的な高齢者支援のあり方について早急な取り組みが求められると考えられた。
結論
岩手県の東日本大震災被災者の生活は落ち着きを取り戻しつつあることがうかがえた。一方、災害公営住宅居住者では依然として健康状態や生活習慣、社会的支援に問題を抱える住民の割合が多くみられ、新たな生活環境におけるサポートやケアが必要であることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2022-07-01
更新日
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