市町村保健師の災害時保健活動遂行能力の向上のための教育教材及びその活用マニュアルの作成と検証

文献情報

文献番号
202027015A
報告書区分
総括
研究課題名
市町村保健師の災害時保健活動遂行能力の向上のための教育教材及びその活用マニュアルの作成と検証
課題番号
20LA1002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 安齋 由貴子(宮城大学看護学部)
  • 牛尾 裕子(兵庫県立大学 看護学部)
  • 島田 裕子(自治医科大学看護学部)
  • 江角 伸吾(自治医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中堅期以降の保健師について、健康危機管理能力の獲得状況は他と比べて低いことが明らかになっている。この理由として、保健師からは能力獲得のための具体的な知識・技術等がわからない、教育研修の企画が難しい等の声が聞かれる。市町村やそれを支援する保健所が災害時保健活動に関する現任教育をより主体的に実施していくためには、教育教材を含む具体的な教育方法の検討が必要である。
 本研究の目的は、市町村保健師の災害時保健活動遂行能力の向上のための教育教材及びその活用マニュアルを作成・検証することである。本研究では、特に市町村保健師の課題とされているフェーズ0(初動体制の確立)からフェーズ2(応急対策期-避難所対策が中心の期間)までの災害時保健活動遂行能力(受援を含む)について、先行研究で整理した実務保健師の災害時コンピテンシーを活かして取り組む。また、全国的な感染症のアウトブレイクにおいて、応援派遣人材として期待される市町村保健師の災害時保健活動遂行能力の向上のために新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)対策における保健師の応援派遣及び受援の手引きを作成する。
研究方法
1.災害時保健活動の教育方法に関する文献レビューを行い、教育教材・教育方法の効果や課題を整理した。
2.災害時保健活動に関わる知識の獲得を要する教育内容について、先行研究を参考に抽出し、eラーニング教材を作成した。eラーニング教材のプレ評価方法は、ARCSモデルによるプログラム評価および自由記述による意見感想とした。ARCSモデルでは、学習者の意欲を注意、関連性、自信、満足感の4側面から捉える。本研究では、注意4項目、関連性4項目、自信4項目、満足感2項目の計14項目について4件法により評価した。
3.先行研究で作成された実務保健師の災害時コンピテンシーリストの中から、演習が効果的であると考えられるコンピテンシーとその遂行に求められる知識・技術・態度を、eラーニング講義で学習可能な内容かを基準に抽出し、これを踏まえて演習教材を作成した。
4.2及び3で作成した教育教材に基づき、研修プログラム例を作成した。
5.文献及び本研究班メンバーの実体験等に基づき、応援側・受援側の事前の準備や協議内容、役割分担のポイント等を検討し、チェックリスト等を含むCOVID-19対策における応援派遣及び受援のための手引き案を作成した。他自治体への応援派遣経験がある自治体保健師等を対象に手引き案について、有用性や実行可能性等の観点から、eメールにより意見を求め、手引き案を見直すとともに、1県の受援に際し活用し検証した。
結果と考察
文献検討の結果、日本では保健師の災害時保健活動の能力向上に向けた教育研修プログラムに関する研究はなかった。海外では、既存のスケールやフレムワークを用いて教育研修プログラムを開発し、介入研究によって評価が行われていた。
先行研究を参考に、「災害支援の基本」「避難所活動の基本」「避難所におけるCOVID-19への対応」等を柱とするeラーニング教材を作成し、都道府県から市町村への周知が図られることを目的に、47都道府県の統括保健師等を対象にリモートによる説明会を6回開催した。参加者は45都道府県の93名であった。令和2年度のeラーニング登録アカウント数は118(21都道府県)であった。
作成したeラーニング教材及び演習教材に基づき、フェーズ0~2の市町村保健師の災害時保健活動遂行能力の獲得・向上のための研修プログラム例について、わが国で発生する可能性の高い自然災害である地震と豪雨水害の2パターンを作成した。
COVID-19対策における応援派遣及び受援のための手引き案について、5都道府県の9名の保健師から得た意見に基づき、受援体制の整備と応援体制の整備を分けて示す、応援派遣にあたってのチェックリストを加える等の見直しを行い、完成版を作成した。1県に研究班メンバー2名が赴き、市区型保健所1カ所及び県型保健所2カ所の受援に際し、作成した手引きを活用した.
結論
COVID-19対策における応援派遣及び受援のための手引きの検証の結果、受援の目的の明確化、受援の円滑な開始及び受援側の負担感の軽減等、一定の有用性及び実行可能性を確認できた。課題は、受援や人的資源投入の目的に応じた応援者への依頼業務の例示の必要性等であった。
今後は、作成したeラーニング教材及び演習教材の効果を検証していくとともに、海外で使用されているスケールやフレ-ムワークの適用可能性の検討及び保健師へのヒアリング等を行い、作成した研修プログラム例を洗練していく。また、市町村または都道府県保健師による主体的な災害時保健活動研修の企画・実施に向けて、作成した教育教材を効果的に活用して教育研修を企画・実施できるためのマニュアルを作成・検証していく。

公開日・更新日

公開日
2022-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-05-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202027015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,150,000円
(2)補助金確定額
5,150,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 649,823円
人件費・謝金 590,080円
旅費 161,000円
その他 2,699,097円
間接経費 1,050,000円
合計 5,150,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-02-24
更新日
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