地方衛生研究所における感染症等による健康危機の対応体制強化に向けた研究

文献情報

文献番号
202027014A
報告書区分
総括
研究課題名
地方衛生研究所における感染症等による健康危機の対応体制強化に向けた研究
課題番号
20LA1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
高崎 智彦(神奈川県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 皆川 洋子(愛知県衛生研究所  生物学部ウイルス研究室)
  • 大西 真(国立感染症研究所)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
  • 岡本 貴世子(国立感染症研究所ウイルス第三部第二室)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 大石 和徳(富山県衛生研究所)
  • 木村 博一(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 貞升 健志(東京都健康安全研究センター 微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,988,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が猛威を振るう中で令和2年度はやはりSARS-CoV-2ウイルス遺伝子検査を主とした研究内容となった。その状況下でほとんどの実地研修は実施できず、より地方衛生研究所(地衛研)のSARS-CoV-2ウイルス遺伝子検査の現状に即したマニュアル追補版の作成、Web研修や次年度の研修のための動画を作成することとした。SARS-CoV-2のPCRをはじめとする遺伝子検査キットは、かつてないスピードで保険収載され、臨床用から手軽に安価に検査が受けられるキットまで市場に登場しているのが現状である。しかし、マイクロピペットの管理法の習得などいずれ精度管理の必要性が指摘される時期が来る時に備えた。先行研究班で微生物検査担当者を対象にコンピテンシーリストが作成されているが、新型コロナウイルスによるパンデミックを経験して、そのコンピテンシーリストを用いた人材育成が現実的であるかどうかを検討することとした。検査部門の自主的な取り組みとして、ヒヤリハット調査を通年で試行し、検査担当者間で共有するためのプラットフォームを検討することとした。
研究方法
地方衛生研究所(地衛研)の現状に即したマニュアル作成PCRの精度維持にも重要であるマイクロピペットの管理法が、今後の研修の場で活用できるよう地衛研の6ブロックにマイクロピペットリークテスタと容量テスターを各1台配備し、それらの使用法の動画を制作した。細菌検査に係る入門動画、東京都微生物検出情報の音声版を研修用に制作した。検査精度の向上、水準の維持のために地衛研における感染症に関する病原体検査体制を把握するため、食品検査における病原体検査との比較も含めて「地衛研における病原体検査体制に関するアンケート調査」を実施した。先行研究班で作成した微生物検査担当者を対象としたコンピテンシーリストを用いた人材育成に関して、地全協に加盟している83機関(都道府県47機関、市区36機関)にアンケート調査を実施し、都道府県と市区別に集計・解析した。さらに、検査の質の自主管理の取り組みとしてヒヤリハット情報収集を行いその有用性を検討した。
結果と考察
COVID-19の病原体診断は、検査キャパシティーの拡充が最優先される中、地衛研においてもウイルスRNA抽出工程が不要なキットが使用されはじめたため使用されている現状に即して、地衛研のための追補版を追加したことは有用であった。今後も変異株検出用リアルタイムPCR市販キットなども地衛研において比較的高頻度で使われるキットについては追補版の作成で対応したい。
平成28年度の感染症法の改正に伴い、地衛研における病原体検査の質を確保するため、食品検査の分野におけるGLPのような体制を整備する必要が求められている。地衛研では,人員の関係から食品検査と感染症にかかる病原体検査を担当する部署が同一である場合が多い。現在、求められている体制の構築は先行する食品GLPを模する形になるものと思われるが、この体制には膨大な書類作成と確認作業等が伴い、限られた人員の中で両分野の体制を整備し、業務を遂行することは容易ではない。また,区分責任者や検査担当者,部門責任者の業務が,兼任などで対応されることも課題の一つである。新人教育については、コンピテンシーリストを作成して人材育成に活用しているのは都道府県の少数の検査機関に限られていた。新人教育は、実際の検査業務の中で実施され、コンピテンシーの活用までには至っていない実態が明らかとなった.
 ヒヤリハット調査は、検査の質の自主管理法として有用である。継続して実施し、さらにそのプラットフォームを改良する。
結論
COVID-19のような新興感染症に関しては、検査の処理能力を拡大するために、保険適用になったキットのなかで国立感染症研究所と地方衛生研究所の実験室診断マニュアルに近いものを選択可能とし、それぞれについて追補版を作成することが有用である。また、今後は民間検査会社との連携を図るために相互の情報交換や共通のマニュアル作りも必要である。病原体検査体制は整えられている中で、検査の質の自主管理の取り組みとしてヒヤリハット情報収集を行った。今後も継続して実施することが望まれる。しかし新人の教育、技術継承や兼務体制など、人員不足にかかる課題についてさらなる検討が必要である

公開日・更新日

公開日
2022-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202027014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,888,000円
(2)補助金確定額
4,320,000円
差引額 [(1)-(2)]
568,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,405,226円
人件費・謝金 0円
旅費 6,394円
その他 560,120円
間接経費 348,546円
合計 4,320,286円

備考

備考
自己資金 286円

公開日・更新日

公開日
2022-02-25
更新日
-