文献情報
文献番号
202027005A
報告書区分
総括
研究課題名
災害発生時の分野横断的かつ長期的なマネジメント体制構築に資する研究
課題番号
19LA2003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 池田 和功(和歌山県新宮保健所)
- 相馬 幸恵(新潟県村上三条地域振興局健康福祉環境部)
- 菅 磨志保(関西大学 社会安全学部)
- 原岡 智子(活水女子大学 看護学部)
- 冨尾 淳(東京大学 大学院医学系研究科)
- 池田 真幸(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,993,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
新型コロナウイルス感染症の流行も踏まえながら、保健医療福祉活動の総合的なマネジメントの具体的な方策を確立することを目的とした。
研究方法
保健医療調整本部等に関する検討(新型コロナウイルス感染症対応における保健医療調整に関する情報収集)、令和元年の風水害における保健医療調整本部等に関する調査結果の分析(実事例に基づく調査)、産学民官の連携に関する調査(大阪府北部地震における茨木市の災害脆弱性と建物被害、支援需要の発生と対応状況に関する地理空間分析、令和2年7月豪雨災害・熊本県人吉市・八代市坂本町における被災者生活実態調査、鳥取県中部地震における鳥取県版「災害ケースマネジメント」事業の検証に向けた調査)、指揮・統制・調整・コミュニケーション(C4)に関する海外の情報収集(新型コロナウイルス感染症の対応を中心にした文献・資料等の調査)、分野横断的な情報共有・連携の課題(保健部局とNPO、災害ボランティアの連携等の検討)、避難所・在宅者等の情報把握・支援の検討(在宅等避難者の情報把握及び支援方法についての検討)を行った。
結果と考察
【保健医療調整本部等に関する検討(新型コロナウイルス感染症対応における保健医療調整に関する情報収集)】各自治体では、新型コロナウイルス対策本部及びその下部組織や保健医療調整に関する組織が設置され、Web会議が活用されていた。対策本部等の設置や、CSCA(指揮・統制、安全、情報伝達、評価)の重要性は自然災害も新型コロナウイルス感染症も共通である。他部局や他自治体からの応援、民間の人材派遣の活用、業務の民間委託が行われており、今後の自然災害においても重要である。
【令和元年の風水害における保健医療調整本部等に関する調査結果の分析】一定程度の被害の発生が見込まれる場合には、状況把握のために多様な手段での情報収集や数量的な集計による分析が行われていた。状況把握と、効果的な研修や訓練との関連がみられた。河川氾濫や人的被害、住家被害の発生した地域では、支援組織による応援があった。事前の計画やマニュアル策定において具体的に各種の連携について検討することが重要と考えられる。
【産学民官の連携に関する調査】令和2年7月豪雨における人吉市・八代市坂本町における被災者生活実態調査の結果、人吉市においては、浸水高や地域が同じであっても、世帯構成や自営の店舗の被災など生活状況によって、再建の見通しに差が出ている。災害対応のマルチセクター化に向けた情報連携と、平常時に利用しているものが災害時の対応にも活用されるように、災害対応のフェーズフリー化に対応した制度の拡充と適切な支援需要推計が重要である。
【指揮・統制・調整・コミュニケーション(C4)に関する海外の情報収集】米国では、医療提供体制確保の本部として、Medical Operations Coordination Cells (MOCCs)の設置が進められ、患者の移動、スタッフの配置、物資の要請について分析・対応が行われている。また、連邦緊急事態管理庁(FEMA)による全国調整で、市民部隊(Citizen Corps)、また医療予備部隊(Medical Reserve Corps, MRC)と呼ばれるボランティアが全国規模で編成され、自然災害から感染症に至るまで様々な緊急事態に対応している。
【分野横断的な情報共有・連携の課題】災害時のNPO等と行政(市町村、保健所等)との連携の課題について、災害時に、保健所など保健部局とボランティア、NPO等との連携事例は少なく、今後の連携が望まれる。災害時支援ボランティア・NPO等と行政(市町村、保健所等)との連携好事例として、ぐんまDWAT(災害派遣福祉チーム)、平成30年7月豪雨における坂町被災者アセスメント調査における行政とNPOの連携、熊本地震におけるNPOと専門職との連携事例(「火の国会議」など)についてまとめた。
【避難所・在宅者等の情報把握・支援の検討】災害時避難行動要支援者の避難支援等について、4つの自治体に聞き取り調査を行い、平時の準備、避難勧告時の対応、発災時の動き、課題等について把握した。平時から協働できる地域の関係団体を把握し、協力体制を構築するとともに、関係機関間の情報の共有化が重要である。個別支援計画作成の推進、早期に対応しなければならないニーズを持つ対象の明確化と具体的支援、在宅避難者自身からの情報発信などの課題が抽出された。
【令和元年の風水害における保健医療調整本部等に関する調査結果の分析】一定程度の被害の発生が見込まれる場合には、状況把握のために多様な手段での情報収集や数量的な集計による分析が行われていた。状況把握と、効果的な研修や訓練との関連がみられた。河川氾濫や人的被害、住家被害の発生した地域では、支援組織による応援があった。事前の計画やマニュアル策定において具体的に各種の連携について検討することが重要と考えられる。
【産学民官の連携に関する調査】令和2年7月豪雨における人吉市・八代市坂本町における被災者生活実態調査の結果、人吉市においては、浸水高や地域が同じであっても、世帯構成や自営の店舗の被災など生活状況によって、再建の見通しに差が出ている。災害対応のマルチセクター化に向けた情報連携と、平常時に利用しているものが災害時の対応にも活用されるように、災害対応のフェーズフリー化に対応した制度の拡充と適切な支援需要推計が重要である。
【指揮・統制・調整・コミュニケーション(C4)に関する海外の情報収集】米国では、医療提供体制確保の本部として、Medical Operations Coordination Cells (MOCCs)の設置が進められ、患者の移動、スタッフの配置、物資の要請について分析・対応が行われている。また、連邦緊急事態管理庁(FEMA)による全国調整で、市民部隊(Citizen Corps)、また医療予備部隊(Medical Reserve Corps, MRC)と呼ばれるボランティアが全国規模で編成され、自然災害から感染症に至るまで様々な緊急事態に対応している。
【分野横断的な情報共有・連携の課題】災害時のNPO等と行政(市町村、保健所等)との連携の課題について、災害時に、保健所など保健部局とボランティア、NPO等との連携事例は少なく、今後の連携が望まれる。災害時支援ボランティア・NPO等と行政(市町村、保健所等)との連携好事例として、ぐんまDWAT(災害派遣福祉チーム)、平成30年7月豪雨における坂町被災者アセスメント調査における行政とNPOの連携、熊本地震におけるNPOと専門職との連携事例(「火の国会議」など)についてまとめた。
【避難所・在宅者等の情報把握・支援の検討】災害時避難行動要支援者の避難支援等について、4つの自治体に聞き取り調査を行い、平時の準備、避難勧告時の対応、発災時の動き、課題等について把握した。平時から協働できる地域の関係団体を把握し、協力体制を構築するとともに、関係機関間の情報の共有化が重要である。個別支援計画作成の推進、早期に対応しなければならないニーズを持つ対象の明確化と具体的支援、在宅避難者自身からの情報発信などの課題が抽出された。
結論
各分担研究を総括すると、CSCA(指揮・統制、安全、情報伝達、評価)、特に、平時からの関係性の構築、Web会議を含めて情報システムを活用した情報共有、支援・受援を含めた必要な人員の確保、民間と行政との連携などが重要である。実効性を高めるためには、具体的な経験やノウハウを抽出して共有することが重要となる。
公開日・更新日
公開日
2022-05-13
更新日
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