癌幹細胞を標的とする人工ウイルスを用いた癌幹細胞特異的新規Drug delivery activation system(DDAS)の確立 

文献情報

文献番号
200812041A
報告書区分
総括
研究課題名
癌幹細胞を標的とする人工ウイルスを用いた癌幹細胞特異的新規Drug delivery activation system(DDAS)の確立 
課題番号
H20-ナノ・若手-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
大内田 研宙(九州大学大学院医学研究院 先端医療医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 正治(九州大学大学院医学研究院 先端医療医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在まで多くの抗癌剤が開発され一定の効果を示しているが、結果的に薬剤耐性が生じ根治に導くことは依然困難である。また幾つかのDDS(Drug Delivery System)が報告されているが、その細胞選択性に問題が残る。近年、癌幹細胞の同定・解析が進み、この細胞の制御が癌根治を可能にすると期待されている。本研究では治療抵抗性の根幹である癌幹細胞を標的とする新規機能化人工ウイルスを作製し、癌幹細胞特異的新規DDSを開発することを目的とする。
研究方法
本研究では①癌幹細胞特異的分子の同定・機能解析、②薬剤含有幹細胞特異的認識人工ウイルスの作製、③癌幹細胞を標的とする新規人工ウイルスの治療効果の検証を行う。①では、固形癌を対象に、癌幹細胞マーカーを用い手術標本からソートした細胞を使い、免疫不全マウスを用いた腫瘍形成能、癌間質細胞との共培養を用いた浸潤能を評価、さらにマイクロアレイを用い有望な標的分子の同定を行う。②では、我々が開発した古細菌由来のsmall shock protein (Mj285)が形成する蛋白質ナノカプセル(人工ウイルス)を、有望な分子を用いて改変し、人工ウイルスの機能化を行う。③では、作製した新規人工ウイルスの治療効果、有害事象をin vitro、in vivoにて検討する。
結果と考察
膵癌を用いた検討で、CD44は癌幹細胞以外の細胞集団でも発現しており候補となり得なかったが、CD133陽性細胞では腫瘍増大傾向を認めた。しかしCD133単独では十分に癌幹細胞集団を絞り込むことができていない。今後CD24、c-Met、c-kitなどの検討も必要である。また、我々が独自に作製したMj285は、プロテアーゼFactorXaにより特異的に切断され刺激応答的に標的細胞内で崩壊する機能、B型肝炎ウイルス由来のPreS2の導入により膜透過する機能、さらに膵癌の第一選択薬であるgemcitabineを内包化する機能が付加できることを確認した。今後、これらの機能を総合的に付加し新規人工ウイルスを作製、評価し、同時に新たな分子候補の検索も継続する。
結論
最新の分子生物学的手法を用い、癌治療抵抗性の根幹をなす癌幹細胞や、癌の転移浸潤に関わる特定の細胞集団に対する有用な特異的分子の同定とその機能解析を行った結果、複数の候補が挙がった。今後、これらの成果に基づき新規分子治療薬を内包した多機能人工ウイルスを作成し、その機能評価を行い、癌幹細胞特異的新規DDSを確立したい。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-10-29
更新日
-