ナノマテリアルの短期吸入曝露等による免疫毒性に関するin vitro/in vivo評価手法開発のための研究

文献情報

文献番号
202026018A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの短期吸入曝露等による免疫毒性に関するin vitro/in vivo評価手法開発のための研究
課題番号
20KD1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
足利 太可雄(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 祐次(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部・動物管理室)
  • 飯島 一智(横浜国立大学 大学院工学研究院機能の創生部門)
  • 石丸 直澄(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部(歯学系))
  • 大野 彰子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
25,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
短期吸入曝露された各種NMの免疫系に与える影響について、in vitro/in vivo試験法研究の連携体制による毒性メカニズムの解明と評価系の開発を行い、得られた知見を基にin vitro試験法の確立と将来的なOECDガイドライン化を目指すための基盤的知見の収集を目的とする。
研究方法
in vitroにおいてNMが抗原提示細胞株に与える影響の検討、NMの物理化学的性状データの取得と有害性データの情報収集、さらにin vivo短期吸入曝露試験を実施した。様々な特徴を有するナノマテリアルの抗原提示細胞活性化能等の評価によるデータベース作成については、抗原提示細胞の活性化能を評価とする皮膚感作性試験法であり、OECDテストガイドライン化されているh-CLAT (OECD TG442E)を用いて二酸化ケイ素ナノマテリアル5種について検討を行った。ナノマテリアルの物性とTHP-1細胞に与える影響の関連性解析および評価について、今年度は6種の二酸化チタンナノ粒子を対象とした。細胞レベルでの毒性発現メカニズムの解明については、銀ナノ粒子および各種二酸化チタンナノマテリアルを対象に、h-CLATによる評価や、THP-1細胞における活性酸素種の生成および細胞内取り込み量を測定した。異物除去に重要な役割を果たすマクロファージの機能に基づいたナノマテリアルの吸入毒性評価法の基盤となる情報の整備については、Taquann法処理した針状二酸化チタンTiDWを C57BL/6NcrSLC雄性マウスに対し 5日間の連続の全身曝露吸入を行った。ナノマテリアルの免疫制御システムへの影響評価研究については、TiDWを吸入後4週及び8週において肺胞洗浄液(BALF)中の単核球を採取し、蛍光色素標識された各種表面マーカーに対する抗体で発現を解析した。さらに、マウス単球細胞株RAW264.7ならびにヒト細胞株THP-1、マウス線維芽細胞株NIH3T3にTiDWを処理し、MMP-12 mRNAの発現を定量RT-PCRで検討した。
結果と考察
銀ナノ粒子は銀イオン同様、THP-1細胞のCD86およびCD54発現を亢進したが、銀イオンの方がはるかに低濃度で活性が見られ、銀ナノ粒子は細胞培養条件下で銀イオンの溶出が認められたことから、銀ナノ粒子によるTHP-1細胞の活性化は溶出した銀イオンによるものと考えられた。また、種々のナノシリカ粒子はTHP-1細胞のCD54発現を非常に強く誘導し、一部の酸化チタンNMについてはCD54発現の弱い誘導がみられた。さらに、RAW246.7細胞にカーボンナノチューブであるT-CNTを添加した結果、MMP12や線維化に関与する遺伝子mRNA発現が上昇し、THP-1細胞のLPS刺激下でT-CNTを加えると、LPS刺激のみの細胞に比較して有意にMMP-12 mRNA発現が上昇した。以上より各種NMはin vitroにおいて抗原提示細胞の活性化能を有することが明らかとなった。物性と毒性の関係を解析するために、各種二酸化チタンNMについて、公開された文献などからin vivo有害性情報を取得するとともに、成分分析と細孔分布・比表面積測定を行い、データマイニングの結果、多変量解析手法の有用性を見出した。針状二酸化チタンについてTaquann法を用いて短期吸入曝露試験を実施し、病理組織学的評価および免疫機能評価を行ったところ、曝露後8週において、CD54+AMの割合が対照群に比較して有意に増加していた。
結論
今回h-CLAT法を検討した5種のナノシリカは、いずれもin vitroで抗原提示細胞を強く活性化することを明らかとした。一方、二酸化チタンナノ粒子については、一部においてTHP-1細胞のCD86およびCD54発現増加傾向は見られたものの、明確な陽性とは言えなかった。また、銀ナノ粒子によるTHP-1細胞の活性化は溶出した銀イオンによるものと考えられた。さらに、カーボンナノチューブT-CNTを用いたin vitroの実験によって、マクロファージからのMMP-12を介した慢性炎症機転が示唆された。6種の二酸化チタンNMについて、物性は成分分析と細孔分布・比表面積測定の実施により、各種二酸化チタンナノ粒子のナノ特異的な物性を明らかにした。物性と有害性データとを紐づける関連性解析については、多変量解析手法の有用性が見出された。吸入暴露試験では、針状酸化チタンTiDWの高分散乾燥検体の調製方法を確立した。この検体を用いて、肺胞マクロファージの免疫機能解析を行った結果、NMの形状および性状によって免疫反応に相違がある可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2021-08-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-08-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202026018Z