文献情報
文献番号
202026014A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品中の有害物質の規制基準に関する研究
課題番号
20KD2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
- 大嶋 智子(仲村 智子)(地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所 衛生化学部)
- 西 以和貴(神奈川県衛生研究所 理化学部)
- 久保田 領志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
- 井上 薫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国では家庭用品規制法により、21種類の有害物質について指定家庭用品に含まれる有害物質の含有量や溶出量について基準が定められている。これらの有害物質について、現在の分析技術水準から乖離した分析機器や有害な試薬の使用が問題となっており、試験法の改正が求められている。また、対象有害物質について新たなハザード情報や曝露に関する知見を加え、現行基準値の見直しを検討したり、「検出されないこと」とされている有害物質の基準に対して、基準値を設定したりする必要がある。さらに、有害性が懸念される代替物質の使用や、生活様式の多様化に伴う新形態の家庭用品の創出、及び新たな化学物質の使用可能性もあり、健康被害の発生が懸念される。本研究では、先行研究から引き続き、現行の家庭用品規制法における有害物質の改正試験法の開発及び規制基準値改正、並びに現行規制基準では対象外の家庭用品及び有害物質に対する規制基準設定に資する情報収集を目的とする。さらに、GC-MS分析でキャリアガスとして汎用されるHeは世界的に供給不足であり、代替キャリアガス試験法の開発も実施する。
研究方法
試験法の改正を行う有害物質は、塩化ビニル、防炎加工剤3種類(TDBPP、BDBPP化合物、APO)、木材防腐・防虫剤及び有機水銀化合物を対象としている。防炎加工剤及び噴射剤は現行試験法よりも高精度の分析が可能なキャピラリーカラムを用いたGC-MSによる試験法を開発する。木材防腐・防虫剤は、有害物質に指定されているベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[a]アントラセン及びジベンゾ[a,h]アントラセンの3種を含む欧州で規制されている8種類のPAHsについて、GC-MS分析条件の検討と有害試薬を用いない前処理方法による改正試験法の開発を行う。有機水銀化合物は有害試薬を使用しない試験法を開発すると共に、より高感度及び高精度なICP-MSを用いた試験についても検討する。試験法の開発を効率よく行うために、用途別に各分担研究者が測定条件や前処理方法を検討して試験法開発を行っている。代替キャリアガスの検討では、エアゾル中の溶剤3種を対象に、水素及び窒素を代替キャリアガスに用いて先行研究で改正試験法として開発されたHS-GC/MS法を検討した。基準設定に関する研究では、TDBPP及びBDBPP化合物について、国際機関の評価書及び発がん性に関する情報を入手した。
結果と考察
エアゾル製品中の噴射剤である塩化ビニルでは、WCOT及びPLOTカラムを比較し、PLOTカラムの方が良好な分離が得られ分析に有用であることが分かった。VCの捕集方法は、乳酸エチルよりもDMSOが適していると考えられた。防炎加工剤のうちTDBPP及びBDBPP化合物は、先行研究で開発した試験法について様々な素材で有効性を確認し、サロゲート補正分析で良好な回収率が得られ、分析者への安全性にも配慮した試験方法が確立できた。APOはGC-MS測定における検出感度を確認するとともに、サロゲート物質を用いた試験法について重要な知見を得た。木材防腐・防虫剤は、汎用カラムではクリセン及びトリフェニレンの分離等、幾つかのPAHsについて分離が困難であった。そのため、複数種のカラムによる確認分析が必要と考えられた。木材からの抽出方法の検討では、現行法で使用されているジクロロメタンより低毒性の溶媒で検討し、アセトンが有効であることを確認できた。有機水銀化合物は、国際的な水銀分析法に関する情報を収集するとともに、加熱気化全自動水銀測定法について認証物質を用いて妥当性評価を実施し、その有効性を確認した。ヘリウム不足に対応した試験法は、先行研究で開発した溶剤3種のHS-GC/MS試験法について、水素及び窒素ガスをキャリアガスとして使用しても、基準値濃度を十分に測定可能であることを確認した。基準設定に関する研究は、TDBPP及びBDBPP化合物について、国際機関の評価書及び発がん性に関する情報を入手した。両物質とも変異原性を有し動物において発がん性を示すことから、有害性評価値案は発がん性に基づき導出した。
結論
TDBPP及びBDBPP化合物は先行研究で検討した試験法の有効性を確認し、APOはGC-MS条件を検討した。VC及び木材防腐・防虫剤は前処理方法及び測定カラムの検討を行った。有機水銀は各種試験法の調査と総水銀分析法を検討した。現在提案中の溶剤3種の改正試験法における代替キャリアガス(水素及びヘリウム)の有効性を確認した。BDBPP化合物及びTDBPPの有害性評価情報の収集と評価値案の検討を行った。本研究はおおむね当初計画通りに進んでおり、次年度は引き続き改正試験法の開発及び基準値の検討を行うとともに、改正試験法が開発できた有害物質については、妥当性評価試験の実施についても検討する。
公開日・更新日
公開日
2021-10-14
更新日
-