生体影響予測を基盤としたナノマテリアルの統合的健康影響評価方法の提案

文献情報

文献番号
202026008A
報告書区分
総括
研究課題名
生体影響予測を基盤としたナノマテリアルの統合的健康影響評価方法の提案
課題番号
H30-化学-一般-004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 昌俊(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 林 幸壱朗(九州大学大学院歯学研究院)
  • 中江 大(東京農業大学 応用生物科学 食品安全健康学科 食品安全評価学研究室)
  • 大野 彰子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 戸塚 ゆ加里(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所・発がん・予防研究分野)
  • 花方 信孝(独立行政法人物質・材料研究機構 ナノテクノロジー融合ステーション)
  • 三宅 祐一(静岡県立大学 食品栄養科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
15,204,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、①ナノマテリアルのin vitro安全性評価法の高度化とin vivo実験による当該評価法の検証、②有害性発現経路の確立、③ナノマテリアル毒性試験データベースの作成:試験データ項目の収集・探索・精査、④それらの成果に機械学習などによるin silico生体影響予測を組合せたナノマテリアルの統合的健康影響評価方法を構築することが目的である。最終年度であるため、共通のナノマテリアル(酸化チタンナノ粒子)を使用した点から、まとめる事を目的とした。
研究方法
本研究は、①共培養およびヒト皮膚三次元再構成系などのナノマテリアルのin vitro安全性評価法の高度化とin vivo実験による当該評価法の評価、②in vitro系の実験系からの有害性発現経路の予測、③ナノマテリアル毒性試験データベースの作成:試験データ項目の収集・探索・精査を行なった。
結果と考察
ナノマテリアルのin vitro安全性評価法の高度化に関して、共培養、切片担体培養、ヒト皮膚三次元再構成系を用いて、旧来の二次元培養とは異なる特性およびナノ粒子の性状による細胞反応性の差などを明らかにした。加えて、変異原性試験や小核試験と組み合わせる評価方法を試みた。有害性発現経路の確立に関して、microRNAの発現誘導に着目し、ナノ粒子のROS産生に関わる3種類のmiRNAを抽出し、その標的と思われるタンパク質eIF5を同定した。また、ROS依存性、非依存性の細胞障害の可能性を見出した。機械学習のための予備的準備やナノマテリアル毒性試験データベースの作成、ナノマテリアルの使用状況、安全性などの既存情報の収集・整理を行った。物理化学的性状と毒性を結びつけ、二酸化チタンや酸化シリカナノ粒子を対象に解析を行った。一方入手可能なデータの標準化などの問題も明らかにした。
結論
in vitro系とin silico系の統合を図るべく、共通のナノ粒子(二酸化チタンナノ粒子など)を用い、①ナノマテリアルのin vitro安全性評価法の高度化、③自験、文献などのデータによる生体影響に関するワールドワイドなデータの集積に基づくデータベースの構築の実現化を目指した。特に、③に関しては、二酸化チタンナノ粒子(TiO2 NPs)を対象に、OECDのナノマテリアル安全性評価プログラムにおいて作成されたドシエの評価文書およびナノマテリアルのデータベースeNanoMapperに収載されている物性データと有害性情報の試験データについて収集し、可能な限りの物性について、様々な統計方法による特性解析および毒性評価を行い本解析手法の有用性ついて検討した。ナノマテリアルの安全性評価において、多変量解析法は物性と有害性の関連性について有用な解析手法であることが示唆された。今更ながらであるが、ナノマテリアルの毒性はその工程で含まれる不純物の影響やどの細胞を使用して細胞毒性評価をするかに影響することが判明した。自分たちの特異的なin vitro系評価系による自験データを③に組み込む統合的な評価系の構築の可能性を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2021-11-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202026008B
報告書区分
総合
研究課題名
生体影響予測を基盤としたナノマテリアルの統合的健康影響評価方法の提案
課題番号
H30-化学-一般-004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 昌俊(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 林 幸壱朗(九州大学大学院歯学研究院)
  • 戸塚 ゆ加里(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所・発がん・予防研究分野)
  • 中江 大(東京農業大学 応用生物科学 食品安全健康学科 食品安全評価学研究室)
  • 花方 信孝(独立行政法人物質・材料研究機構 ナノテクノロジー融合ステーション)
  • 大野 彰子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 三宅 祐一(静岡県立大学 食品栄養科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、①ナノマテリアルのin vitro安全性評価法の高度化とin vivo実験による当該評価法の検証、②自験、文献などのデータによる有害性発現経路の確立、③ナノマテリアル毒性試験データベースの作成:試験データ項目の収集・探索・精査、④それらの成果に機械学習などによるin silico生体影響予測を組合せたナノマテリアルの統合的健康影響評価方法を構築することが目的である。
研究方法
本研究は、年ごとに、ナノマテリアルの供給および物理化学的性状解析および評価、本研究グループが使用するナノマテリアルの供給および物理化学的性状の評価を行うおよび文献などのデータについての妥当性の評価、ナノマテリアルのin vitro安全性評価系の高度化および有効性の検証、ヒト3D皮膚再構成系のin vitro安全性評価系を利用して、細胞毒性・遺伝毒性を評価した。これらin vitro安全性評価系および従来の2次元培養系を利用して、ナノマテリアルによる遺伝子・蛋白発現などキーイベントの解析とネットワーク解析を行い、AOPを解明した。ナノマテリアルの安全性評価に関わる試験データ項目の探索・精査、特にQSAR/Read-across解析を行うために有用なナノマテリアル安全評価に関する試験データ項目の探索・精査を行った。
結果と考察
in vitro系とin silico系の統合を図るべく、共通のナノ粒子(二酸化チタンナノ粒子など)を用い、①ナノマテリアルのin vitro安全性評価法の高度化および②自験、文献などのデータによる有害性発現経路の確立に関して、共培養、切片担体培養、ヒト皮膚三次元再構成系を用いて、旧来の二次元培養とは異なる特性およびナノ粒子の性状による細胞反応性の差などを明らかにした。加えて、変異原性試験や小核試験と組み合わせる評価方法を試みた。有害性発現経路の確立に関して、microRNAの発現誘導に着目し、ナノ粒子のROS産生に関わる3種類のmiRNAを抽出し、その標的と思われるタンパク質eIF5を同定した。また、ROS依存性、非依存性の細胞障害の可能性を見出した。特に、③自験、文献などのデータによる生体影響に関するワールドワイドなデータの集積に基づくデータベースの構築の実現化に関しては、二酸化ケイ素、マグネタイト、二酸化チタンナノ粒子(TiO2 NPs)を対象に、OECDのナノマテリアル安全性評価プログラムにおいて作成されたドシエの評価文書およびナノマテリアルのデータベースeNanoMapperに収載されている物性データと有害性情報の試験データについて収集し、可能な限りの物性について、様々な統計方法による特性解析および毒性評価を行い本解析手法の有用性ついて検討した。ナノマテリアルの安全性評価において、多変量解析法は物性と有害性の関連性について有用な解析手法であることが示唆された。今更ながらであるが、ナノマテリアルの毒性はその工程で含まれる不純物の影響やどの細胞を使用して細胞毒性評価をするかに影響することが判明した。自分たちの特異的なin vitro系評価系による自験データを③に組み込む統合的な評価系の構築の可能性を得ることができた。機械学習のための予備的準備やナノマテリアル毒性試験データベースの作成、ナノマテリアルの使用状況、安全性などの既存情報の収集・整理を行った。物理化学的性状と毒性を結びつけ、二酸化チタンや酸化シリカナノ粒子を対象に解析を行った。一方入手可能なデータの標準化などの問題も明らかにした。
結論
in vitro系とin silico系の統合を図るべく、共通のナノ粒子(二酸化チタンナノ粒子など)を用い、①ナノマテリアルのin vitro安全性評価法の高度化、③自験、文献などのデータによる生体影響に関するワールドワイドなデータの集積に基づくデータベースの構築の実現化を目指した。特に、③に関しては、二酸化チタンナノ粒子(TiO2 NPs)を対象に、OECDのナノマテリアル安全性評価プログラムにおいて作成されたドシエの評価文書およびナノマテリアルのデータベースeNanoMapperに収載されている物性データと有害性情報の試験データについて収集し、可能な限りの物性について、様々な統計方法による特性解析および毒性評価を行い本解析手法の有用性ついて検討した。ナノマテリアルの安全性評価において、多変量解析法は物性と有害性の関連性について有用な解析手法であることが示唆された。今更ながらであるが、ナノマテリアルの毒性はその工程で含まれる不純物の影響やどの細胞を使用して細胞毒性評価をするかに影響することが判明した。自分たちの特異的なin vitro系評価系による自験データを③に組み込む統合的な評価系の構築の可能性を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2021-11-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202026008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
共培養、切片担体培養、ヒト皮膚三次元再構成系を用いて、旧来の二次元培養とは異なる特性およびナノ粒子の性状による細胞反応性の差などを明らかにした。変異原性試験や小核試験と組み合わせる評価方法の展開可能性を示した。有害性発現経路の確立に関して、microRNAの発現誘導に着目し、ナノ粒子のROS産生に関わる3種類のmiRNAを抽出し、その標的と思われるタンパク質eIF5を同定した。また、ROS依存性、非依存性の細胞障害の可能性を見出した。
臨床的観点からの成果
ナノマテリアルの安全性評価において、多変量解析法は物性と有害性の関連性について有用な解析手法であることを示した。
ガイドライン等の開発
ConsExpo-nanoを用いて行政関係者および事業者などが手軽にナノマテリアルの曝露リスク評価を行えるようにテクニカルガイダンスを作成した。
その他行政的観点からの成果
ナノマテリアルの安全性評価において、多変量解析法は物性と有害性の関連性について有用な解析手法であることを示した。また、ナノマテリアルの毒性はその工程で含まれる不純物の影響やどの細胞を使用して細胞毒性評価をするかに影響することを示した。
その他のインパクト
中江分担研究者は、2020年2月13,14日に「第36回日本毒性病理学会総会および学術集会」を主催し、ナノマテリアルの毒性評価などについて、啓蒙活動を行なった。大野研究分担者は2021年7月7-9日に「第48回日本毒性学会学術年会」にて、ナノマテリアルの物理化学的性状に基づく毒性評価手法への応用をe-ポスターで発表し、OPLS法による多変量解析の有用性を示した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
37. 林幸壱朗, “骨髄様組織を形成するハニカムスキャフォールド” BIO INDUSTRY, シーエムシー出版, 2月号, 24–33, 2020.
原著論文(英文等)
56件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
64件
第48回日本毒性学会学術年会(2021.7.7-9)にて、ナノマテリアルの物理化学的性状に基づく毒性評価手法への応用をe-ポスターで発表。
学会発表(国際学会等)
16件
その他成果(特許の出願)
5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-11-02
更新日
2022-06-23

収支報告書

文献番号
202026008Z