血管内腔からがん組織への高効率・特異的移行を実現する革新的DDSの創成と脳腫瘍標的治療への展開

文献情報

文献番号
200812034A
報告書区分
総括
研究課題名
血管内腔からがん組織への高効率・特異的移行を実現する革新的DDSの創成と脳腫瘍標的治療への展開
課題番号
H20-ナノ・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
片岡 一則(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西山 伸宏(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 稲生 靖(東京大学医学部附属病院)
  • 狩野 光伸(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膠芽腫に代表される悪性脳腫瘍は、血液-腫瘍関門(BTB)が存在するために薬剤の集積性が著しく低下しており、その治療のためには従来型DDSのがん集積メカニズムであるEPR効果を超越した新しい薬剤のデリバリー戦略が必要である。そこで本研究では、高分子ミセル型DDSの表層に腫瘍血管内皮細胞特異的にトランスサイトーシスを誘起するリガンド分子を搭載し、ミセルの血管内腔からがん組織への移行を促進することによって、脳腫瘍への薬剤の送達効率を高め、画期的な治療効果を実現することを目指している。
研究方法
本研究では上記の目標を達成するために、研究代表者の片岡と分担者の西山がミセル型DDSの創製から生物学的評価までを行う一方で、稲生がDDSの脳腫瘍モデル(同所移植モデル)に対する治療効果を検証し、狩野でDDSの有効性検証のための組織学的評価を行った。
結果と考察
本年度は、リガンド分子をミセル表面に導入するために、新規ブロック共重合体の合成法を確立し、PEG末端に官能基Xを有するDACHPt内包ミセルの調製を行った。また、マウス脳腫瘍モデルとしては、マウスglioblastoma SR-B10.A細胞の同所移植モデルを構築し、その血管構築を免疫染色によって評価したところ、一層のPECAM-1陽性の血管内皮細胞がα-SMA陽性の周皮細胞に覆われた構造がを有しており、血管内皮細胞間にはClaudin-5等のタイトジャンクション分子も存在することが確認された。そこで蛍光標識DACHPt内包ミセルの固形がんへの集積性を評価したところ、皮下移植モデルにおいてはDACHPt内包ミセルのがん組織への脳腫瘍モデルにおいてはDACHPt内包ミセルのがん組織への集積が確認されなかった。
結論
以上のように、同所移植されたSR-B10.A細胞は。血液-脳脳腫瘍関門(BTB)を再現した脳腫瘍モデルとして妥当であることが示唆された。一方、脳腫瘍のヒト臨床検体の解析においても、内皮細胞が周皮細胞に覆われた血管構造が確認されている。このように、臨床検体の脳腫瘍の血管構築まで考慮し、適切なモデルを作製した上でDDSの性能評価を行おうとする試みは本研究が世界で初めてであり、今後は本モデルを利用してリガンド導入DACHPt内包ミセルの機能評価を行っていくことにより、悪性脳腫瘍の治療に有効な新規DDSを創出したいと考えている。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-