化学物質の動物個体レベルの免疫毒性データ集積とそれに基づくMulti-ImmunoTox assay(MITA)による予測性試験法の確立と国際標準化

文献情報

文献番号
202026002A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の動物個体レベルの免疫毒性データ集積とそれに基づくMulti-ImmunoTox assay(MITA)による予測性試験法の確立と国際標準化
課題番号
H30-化学-一般-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
相場 節也(国立大学法人 東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
  • 大森 崇(神戸大学医学部附属病院 臨床研究推進センター)
  • 木村 裕(国立大学法人 東北大学 大学院医学系研究科 皮膚科学教室)
  • 中島 芳浩(国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康医工学研究部門)
  • 安野 理恵(国立研究開発法人産業技術総合研究所細胞分子工学研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)既にOECD テストガイドライン(442E)に承認されているIL-8 Luc assay に加え、Multi-ImmunoTox assay (MITA) を構成するIL-2 転写活性抑制評価試験(IL-2 Luciferase reporter assay; IL-2 Luc assay)とIL-1β転写活性抑制評価試験(IL-1 luciferase reporter assay; IL-1 Luc assay)の国際validation study を行い、MITA の多項目免疫毒性評価系としてOECD テストガイドライン化を目指す。
2)免疫毒性のデーターベースを構築する。
3)上記データベースに基づき,MITAを用いた化学物質の免疫毒性別クラスター分類における各クラスター免疫毒性の特性を明らかにする。
研究方法
1) IL-2転写活性抑制試験 (IL-2 Luc assay) のOECDテストガイドライン化に向けて,SPSFを提出し申請手続きを開始した。2) IL-1β転写活性抑制試験(IL-1 Luc assay)に関しては,validation試験を終了しVMT会議における意見を参考にvalidation reportを作成し,review panelによる評価を受けた。3) MITAの有用性を確認する目的で,MITAによる化学物質の評価を引き続き行いdata setの拡充を図った。4) MITAでは評価できない,骨髄抑制,リンパ球増殖抑制をきたす化学物質を評価するIL-2依存性細胞株を用いた試験法の開発をおこなった。5) MITAの複数項目に関して効果発現最低濃度 (Lowest observed effect level;LOWEL)を基にクラスター分類を行い,それにより化学物質の免疫毒性特性を明らかにした。6) MITAのOECDテストガイドライン化にむけてin vitro免疫毒性試験に関するdetailed review paperの作成に協力した。7) IL-8 Luc assayの特異性を改善するためのプロトコールの改変とOECDへの修正ガイドラインの提案、ならびにTHP-G8細胞をより長期安定性を確保する目的での人工染色体を用いた新たな細胞株を樹立する。
結果と考察
1) MITAを構成する試験法の一つであるIL-2 Luc assayに関してvalidation試験、validation reportの作成、peer review panelの評価を終了し2020年11月にSPSFをOECDに提出した。2)IL-1 Luc assayに関してもphase I, phase IIのvalidation試験を終了し,2020年海外からのliaison委員を交えたvalidation management team (VMT)会議の意見を参考にしてvalidation reportを作成し現在liaison委員からの意見をとりまとめている。一方,3)上記validation 試験にて評価した50化学物質,validation report作成にあたりMITAにて評価した60化学物質に関して免疫毒性データを収集し免疫毒性データベースを構築した。4)細胞分裂を抑制することにより免疫毒性をきたす化学物質スクリーニング系の開発を行いPhase 1 validationを終了した。5)IL-1 Luc assayを加えてclusteringを試みた。6) MITAのOECDテストガイドライン申請に向けて作成中のin vitro免疫毒性試験法の現状とMITAの有用性に関するdetailed review paper作成に協力するとともにSection VIIIにてMITAの概略を紹介した。7) IL-8 Luc assayに用いる細胞の長期安定性を確保する目的で改良を行った。
結論
本課題においては、当初の目標どおり、1)IL-2 Luc assayはOECDにSPSFを提出済み、2)IL-1 Luc assayに関してはValidation reportを作成済み、3)約100の化学物質に関して免疫毒性に関するデータベースを作成した。4)免疫毒性物質のclusteringに関しては、あらたにIL-2 Luc LTTを開発し、これらとIL-2 Luc assay、IL-1 Luc assayとの組み合わせにより新しい知見を得ている。

公開日・更新日

公開日
2021-08-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-08-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202026002B
報告書区分
総合
研究課題名
化学物質の動物個体レベルの免疫毒性データ集積とそれに基づくMulti-ImmunoTox assay(MITA)による予測性試験法の確立と国際標準化
課題番号
H30-化学-一般-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
相場 節也(国立大学法人 東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
  • 大森 崇(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 医療統計学分野)
  • 木村 裕(国立大学法人 東北大学 大学院医学系研究科 皮膚科学教室)
  • 中島 芳浩(産業技術総合研究所 健康医工学研究部門)
  • 安野 理恵(国立研究開発法人産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)既にOECD テストガイドライン(442E)に承認されているIL-8 Luc assay に加え、多項目免疫毒性試験法Multi-ImmunoTox assay (MITA) を構成するIL-2 転写活性抑制評価試験(IL-2 Luciferase reporter assay; IL-2 Luc assay)とIL-1β転写活性抑制評価試験(IL-1 luciferase reporter assay; IL-1 Luc assay)の国際validation study を行い、MITA の多項目免疫毒性評価系としてOECD テストガイドライン化を目指す。
2)National Toxicology Program (NTP)のDori Germolec 博士とミラノ大学のEmanuela Corsini 博士の協力を仰ぎ、NTP ならびにEuropean Centre for Ecotoxicology and Toxicology of Chemicals のデータベースおよびPubMed を利用した文献検索に基づき免疫毒性のデーターベースを構築する。3)上記データベースに基づき,MITAを用いた化学物質の免疫毒性別クラスター分類における各クラスター免疫毒性の特性を明らかにする。
研究方法
IL-2 Luc assayに関しては、海外からのliaison memberとの会議を対面ならびにWebで行いvalidation試験を遂行した。IL-1 Luc assayに関しては、東北大学,産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門,産業技術総合研究所工学研究部門の参加3施設にてPhase I, II validation試験を行い、validation reportを作成した。またその過程で、米国National Toxicology Program (NTP)の協力を仰ぎ、約100種類の化学物質に関して文献的情報を収集し免疫毒性データベースを作成した。
結果と考察
1) IL-2 Luc assay validation reportのSPSF提出: 2020年11月13日に、改定したIL-2 Luc assay のvalidation reportならびにSPSFをWorking group of the National Coordinators for the Test Guidelines Program (OECD)に提出した。またvalidation試験の詳細に関しては、Toxicol in Vitroに報告した(Kimura et al. 2020)。2) IL-1 Luc assay validation report作成: 2019度に終了したIL-1 Luc assay Phase I, Phase II試験の結果ならびにlead laboratoryのin-houseデータを元にVMT委員と討議を重ねvalidation reportを完成させた。現在、VMT委員と議論している。その結果を踏まえてpeer review panelの評価を受ける予定である。昨年度から問題になっていたIL-1 Luc assayの予測性に関しては、Toll-like receptorやIL-1受容体の下流にある受容体のうちIRAK4、Myd88などIL-1 Luc assay以外には評価できないシグナル伝達物質が存在することを証明し、IL-1 Luc assayの有用性が確認できた。3)免疫毒性物質データベースの作成: IL-1 Luc assayおよびIL-2 Luc assayのvalidation試験を行うのと並行し、validationで用いた化学物質、data setに含まれる化学物質に関する免疫毒性データを収集しデータベースを作成した。
結論
本課題においては、当初の目標どおり、1)IL-2 Luc assayに関してはOECDにSPSFを提出した。2)IL-1 Luc assayに関してはValidation reportを作成を完成した。3)約100の化学物質に関して免疫毒性に関するデータベースを作成した。4)免疫毒性物質のclusteringに関しては、あらたに細胞分裂を阻害する免疫抑制物質を評価できるIL-2 Luc LTTを開発し、これらとIL-2 Luc assay、IL-1 Luc assayとの組み合わせにより新しい知見を得た。

公開日・更新日

公開日
2021-08-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-08-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202026002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アレルギー、自己免疫、免疫抑制など、人体に有害な影響を及ぼす化学物質による免疫毒性は、消費者、生産者はもとより厚生労働行政にとっても重大な課題となっている。本研究では、約100の化学物質に関し、免疫毒性に関するデータベースを作成した。また、それらを利用して、我々が開発した多項目免疫毒性評価システム (Multi-ImmunoTox assay)を構成するIL-1 Luc assay、IL-2 Luc assayのvalidation 試験を3施設で実施し良好な施設内、施設間再現生を確認した。
臨床的観点からの成果
我々が開発したIL-2 転写活性抑制評価系 (IL-2 Luc assay)と細胞分裂抑制物質評価系(IL-2 Luc LTT)の組み合わせは、現在移植や全身性自己免疫疾患治療に用いられているほぼ全ての免疫抑制剤の作用を高い精度で評価することができる。このことは、この評価系の組み合わせにより新たな免疫抑制剤のスクリーニング系が構築できることを示唆している。
ガイドライン等の開発
我々が開発した皮膚感作性試験法IL-8 Luc assayは現在OECD TG442Eとして承認されている。本研究課題では、さらにその修正案をOECDに提案している。またIL-2 Luc assayはOECDにValidation reportを提出しTG承認に向けて審査中である。IL-1 Luc assayに関しては、Validation reportを作成中である。
その他行政的観点からの成果
我々が開発してきたMITA、特にそのなかでもIL-2 Luc assay、IL-2 Luc LTT、IL-1 Luc assayにより自然免疫、獲得免疫に作用し免疫抑制を引き起こす化学物質の動物を用いないhigh throughput評価系の構築が可能となり、行政における化学物質毒性評価の一助となる。
その他のインパクト
MITAのOECDテストガイドライン化を円滑にすすめるため、OECDが免疫毒性に関するdetailed review paperの作成に着手し、その中の1章にMITAの解説を執筆した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-30
更新日
2023-04-28

収支報告書

文献番号
202026002Z