文献情報
文献番号
202025033A
報告書区分
総括
研究課題名
妊婦・授乳婦における医薬品の安全性に関する情報提供の在り方の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20KC2009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
村島 温子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
研究分担者(所属機関)
- 林 昌洋(虎の門病院 薬剤部)
- 濱田 洋実(筑波大学医学医療系 総合周産期医学)
- 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
- 佐瀬 一洋(順天堂大学大学院医学研究科臨床薬理学教室)
- 伊藤 直樹(帝京大学 医学部小児科学講座)
- 高橋 邦彦(東京医科歯科大学 M&Dデータ科学センター )
- 登美 斉俊(慶應義塾大学 薬学部)
- 後藤 美賀子(国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
妊娠中ならびに授乳中の薬物治療の安全性について、一般医療者や一般女性が、信頼できる情報にアクセスしやすい環境を整えていくための方法を明らかにすること、製薬会社の市販後調査ないしは妊娠と薬情報センターを中心とする相談事例の症例データベース、リアルワールドデータの解析、薬物動態学的アプローチによる精緻な評価方法まで、それぞれの長所を生かしながら有用な安全性情報を構築していくことを目的とした。
研究方法
一般医療者ならびに一般女性のニーズにあった、妊娠中ならびに授乳中の薬物治療の安全性情報の提供方法を開発するために、一般医療者・一般女性を対象にアンケート調査を行った。一般医療者対象にはm3.comのサイト、一般女性に対してはアプリを用いて行った。日本産科婦人科学会専攻医指導病院599施設を対象に、「産科以外の学会作成の診療ガイドラインにおける妊娠項目の記述(他学会GL)」の認知率、活用率とその問題点について問うアンケートを行った。また、産科ガイドライン作成委員会に「妊娠・授乳と薬」関連2項目の修正案を作成すべく班会議で議論を行った。これまで行ってきた、妊娠と薬情報センターなどの相談症例データベース用いた解析を実施し、本邦初のエビデンスの創出を行った。妊婦・授乳婦におけるレセプトデータなどのリアルワールドデータ(RWD)の必要性、信頼性、妥当性について規制調和の観点から検討した。妊娠中・授乳中の安全性に関する評価方法を一般化ならびに精緻化するために、薬物動態学に基づく評価方法として、今年度はトランスポーター発現情報を組み込んだ胎盤透過の生理学的薬物動態モデルを構築し、ex vivo還流実験で得られた胎盤透過の経時推移からin vivoにおけるヒト胎児-母体濃度比を推定する方法を検討した。授乳婦の薬物治療の安全性について、母乳中への薬剤移行性や乳児側の要因を考慮して評価する方法を検討するとともに、母乳中の薬物濃度の測定を進めた。
結果と考察
一般医療者へのアンケートの有効回答数は1049例で、専門科は多岐にわたっていた。相談薬は妊娠中・授乳中ともに鎮痛解熱剤や抗生物質・抗ウイルス薬、感冒薬などの急性期の薬剤が多かった。妊娠と薬情報センターを半数の医師が知らなかった。今後、学会や医師会からの情報発信やWeb情報の拡充、SNSでの周知を希望する声が多くみられた。一般女性に対するアンケートでは601人の回答を得た。当該分野の基礎知識を問う問題では正答率は半数に満たなかった。また、妊娠期38%、授乳期68%で服薬に関する不安を感じていた。妊娠期・授乳期ともに相談先として産婦人科医が多かったが、授乳期は薬剤師への相談は30%と産婦人科医の次に多かった。授乳期では40%が服薬の中止あるいは授乳の中止を指示されていた。7割が妊娠と薬情報センターを知らないと回答した。これらの結果から、一般女性がアクセスしやすい媒体への情報提供や、医療者に向けた教育活動などが必要であると考えられた。医療者へ情報提供の在り方としては、現場では迅速に情報が必要な状況が想定された。他学会Gに関するアンケートでは、316施設から回答を得、認知率、活用率はそれぞれ9. 8〜29.1%、6.6〜22.5%であった。産科ガイドラインとの齟齬があるガイドラインが存在し、妊娠・授乳期診療で必要な薬剤が適切に使用できていない問題があることから、他学会GLの作成において産婦人科(医)が関与をするべきとの意見が回答者の95%から出された。この結果を関連学会の学会誌に発表したことで、今後の他学会G作成に大きく貢献すると考えられる。産科ガイドライン2023年版の「妊娠・授乳と薬」関連2項目の修正提案を作成した。妊娠と薬情報センターと虎の門病院の相談症例データベースを用いて、妊婦禁忌の制吐剤であるドンペリドンを妊娠初期に使用した519例という、世界に類を見ない多数例を対象にした解析によって、本剤曝露児の先天異常の発生率が上昇しないことを明らかにし、英文誌に発表した。この結果は、妊娠期の薬物療法に関するガイドラインや妊婦服薬カウンセリングの根拠情報となるとともに、医療用医薬品添付文書における注意喚起の内容に、影響を及ぼす可能性が考えられる。妊婦・授乳婦におけるRWDの必要性、信頼性、妥当性について検討し、当該分野において難しいと考えられてきたレセプトデータなどのRWDを用いたエビデンス創出の可能性を示すことができた。ex vivo還流実験で得られた胎盤透過の経時推移から、in vivoにおけるヒト胎児-母体濃度比を推定できることを明らかにした。また、5種類の薬剤の母乳中の濃度測定を行い、英文雑誌に発表した。
結論
本研究により、妊婦・授乳婦における医薬品の安全性に関する情報提供に関する問題を明らかにし、解決方法につながる成果が出せた。
公開日・更新日
公開日
2025-05-26
更新日
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