催奇形性物質に係る雄性生殖を介した新規発生毒性評価法の開発

文献情報

文献番号
202025032A
報告書区分
総括
研究課題名
催奇形性物質に係る雄性生殖を介した新規発生毒性評価法の開発
課題番号
20KC2008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
桑形 麻樹子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部第二室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サリドマイド被害の重篤性に鑑み、より安全側に立脚して服用中の避妊を男性にも求めている。本来、エビデンスに基づいた安全性確保を担保すべきであるが、そのために必要な催奇形性物質に係る雄性生殖を介した新規発生毒性評価法が確立していない。本研究では薬物動態や薬物応答性の種差を考慮しつつ、催奇形性誘発懸念物質の体内動態を基盤とする医薬品毒性評価法の確立に向けて、ヒトへの外挿可能性を踏まえた毒性試験プロトコールを完成させることを目的とする。
具体的には、令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)にて実施した情報収集をもとに立案した、即ち、雄性生殖を介した種差及び薬物動態を加味し精液移行性に特化して評価する発生毒性試験計画(膣内投与試験)を実証する。なお、催奇形性陽性対象物質として本課題ではサリドマイドを用いる。
研究方法
初年度は、文献調査に基づき、ウサギに対するサリドマイドによる母動物および胎児への影響を検討し、250 mg/kg体重/day の四肢発現期のへ経口投与が催奇形性作用を誘発する用量であることを確認した。この用量を基準として、雄ウサギを用いた単回あるいは14日間反復経口投与時のサリドマイド及び主代謝物である5-水酸化体サリドマイドの血漿中及び精漿中への移行推移を確認した。さらに、ウサギにサリドマイドを経口投与した後の血中濃度推移を再現する薬物動態モデルを構築した。
結果と考察
胚・胎児発生に及ぼす影響に関する投与条件を検討した結果、得られた結果は既報と概ね一致し催奇形性(屈曲肢、短鼻、眼球突出、欠指など)が確認できた。アザラシ肢症は、既報通り認められなかった。この誘発の検討のためには、別途、妊娠ウサギの匹数を、ガイドラインの推奨動物数の規模での検討が必要と考える。
2~500 mg/kg体重/dayを用いた単回あるいは反復投与による薬物動態試験の結果、最高血漿中濃度は20,000 ng/mLであり、血中半減期は24時間以内であったことから、蓄積性はない、あったとしてもごくわずかであること、精漿中濃度が血漿中濃度を上回る状況は極めて稀であることが明らかとなった。
得られた結果から、ヒトにおいて250 mg/kg体重/dayを2週間以上連日投与した状況でも、血液中濃度はすでに定常状態に達し、20 µg/mL程度を大きく上回る可能性は少なく、この状況において精漿中濃度は20 µg/gにほぼ等しいか若干下回ると推定された。サリドマイドの投与により精液量やpHに大きな変化が生じる可能性は少ないと考えられた。
今回の結果をヒトにおける精液量を4 mL程度、射精回数を2回として外挿すると、精液を通して女性が曝露されるサリドマイド量の最大値は160 µg/日、女性の平均体重を50 kgとして3.2 µg/kg体重/dayであると推定される。この用量での安全性を検討するための膣内投与試験における投与量としては、対象となる毒性が次世代に及ぼす影響であり不可逆であること並びに種差を考慮し、係数100倍を乗じて0.4 mg/kg体重/dayを、雌ウサギを用いた膣内投与試験の投与量として立案することにした。
また、サリドマイド経口投与後のウサギ血中動態を再現記述する簡素な薬物動態パラメータ値を決定した。ウサギへの経口投与によるサリドマイド動態評価の過程で、250 mg/kg体重/dayの反復投与時と比較し、単回投与時にはサリドマイドの血中曝露が継続する知見も得られた。
結論
250 mg/kg体重/dayのサリドマイドは、雌ウサギに対して催奇形性を発現する用量であることを確認した。また、同用量の雄ウサギを用いた単回あるいは反復経口投与試験の結果から、血漿中得られた結果から、膣内投与試験の投与量を設定した。
サリドマイドの体内動態を再現する簡素な1-コンパートメントモデルから、詳細な生理学的薬物動態モデルの構築に向けた薬物動態学的取組みを継続するとともに、来年度は膣内投与試験を実施し、サリドマイド膣内曝露により母動物および胎児血液中へのサリドマイドの移行を調べ、胎児への形態変化との関連を調べる予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202025032Z