医療情報データベースの活用推進に関する研究

文献情報

文献番号
202025031A
報告書区分
総括
研究課題名
医療情報データベースの活用推進に関する研究
課題番号
20KC2007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
宇山 佳明(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療情報活用部)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 雅晴(国立大学法人 東北大学 大学院医学系研究科)
  • 中島 直樹(国立大学法人九州大学  大学病院)
  • 鈴木 隆弘(千葉大学医学部附属病院企画情報部)
  • 横井 英人(香川大学 医学部附属病院医療情報部)
  • 安西 慶三(国立大学法人佐賀大学医学部肝臓・糖尿病・内分泌内科)
  • 野村 浩子(一般社団法人徳洲会大阪本部)
  • 木村 通男(国立大学法人浜松医科大学 医学部附属病院医療情報部)
  • 渡邊 真彰(北里大学 北里大学メディカルセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
32,617,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
製造販売後の医薬品安全性評価は、従来、副作用報告、使用成績調査等の結果に基づくことが主であったが、医療情報データベースの整備等によりリアルワールドでの大規模データに基づく評価が可能となりつつある。MID-NET®は、厚生労働省の医療情報データベース基盤整備事業により構築されたデータベースで、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」)による運用管理の下、平成30年度から運用を開始している。MID-NET®は、診療情報明細書(レセプト)、診断群分類(DPC)及び電子カルテの情報が利用可能で、現在では行政による活用の他、臨床研究や製造販売後データベース調査にも活用されており、製造販売後の医薬品安全対策の質の向上が期待されている。医療情報データベースに基づく医薬品の安全性等の評価では、データベースに含まれる情報から対象とする有害事象(アウトカム)を適切に特定する為に、信頼できるアウトカム定義を作成する必要があるが、本邦においてアウトカム定義のバリデーションが実施された例はほとんどない。「MID-NET®データの特性解析及びデータ抽出条件・解析手法等に関する研究」(日本医療研究開発機構 医薬品等規制調和・評価研究事業)(以下「先行研究」)において、MID-NET®を対象にアウトカム定義の作成及びその妥当性の評価を効率的に実施するための検討を実施し、基礎的な検討手法を確立すると共に、バリデーションされた複数のアウトカム定義が作成された。しかしながら、実用化可能なアウトカム定義を増やす為には、更なる検討手法の効率化や具体的なアウトカム定義の作成を継続的に実施する必要がある。本研究は、先行研究の成果を踏まえて、研究の流れを見直しAll possible casesの定義を決定した上で以降の検討を行う等の検討手法の改善及び実用化可能なアウトカム定義の確立を目指し、医薬品安全性評価における医療情報データベースの活用促進と、より科学的な根拠に基づく安全対策の実現に繋げる事を目的とした。
研究方法
安全対策上の必要性や重要性を考慮し、検討の対象とするアウトカムを複数選定した上で、各アウトカムについて、従来法又は機械学習の手法を取り入れて作成したアウトカム定義について、複数医療機関にて妥当性の評価を行った。研究の流れは以下のとおりである。
1)複数拠点で検討対象とするAll possible casesの定義及びアウトカム定義の検討
2)評価基準の作成
3)対象アウトカムについてカルテレビューにより真の症例を特定
4)機械学習及び従来法によるアウトカム定義の作成
5)各アウトカム定義の陽性的中度(以下「PPV」)及び感度の算出並びに評価
6)複数医療機関のPPVの比較及び医療機関間の差異の要因検討
結果と考察
「動脈解離」及び「ケトアシドーシス」については、病名、処置、処方あるいは臨床検査などを組み合わせることで、比較的高い感度及び陽性的中度(PPV)を示すアウトカム定義を作成する事ができ、「肝不全」を除き、「悪性腫瘍」等のその他の検討テーマについても、All possible casesの定義等を作成する事ができた。また、「悪性腫瘍」については、がん登録データを用いて真偽判定を行う際の具体的な手順を決定し、検討においては、がん登録制度の対象となる事象やその運用方法などを理解した上で、特定可能な悪性腫瘍を明確化しておくことが必要と考えられた。「間質性肺炎」、「急性膵炎」については、実行性が高く効率的な検討を可能とする為に対象とする事象の明確化を行った。「肝不全」については、病名を付与する際の診断根拠が明確ではないこと、特異的な治療がないことなど、現時点では、データベースで利用可能な項目から適切なall possible casesを設定することは困難と考えられ、データベースに基づくアウトカム定義を作成する上で客観的な診断基準が確立されているか否かがの重要な要素であると考えられた。
結論
「動脈解離」及び「ケトアシドーシス」については、比較的高い感度及び陽性的中度(PPV)を示すアウトカム定義を作成する事ができ、製造販売後調査等で当該アウトカム定義を利用できる可能性が示唆された。また「肝不全」を除き、「悪性腫瘍」等のその他の検討テーマについてもAll possible casesの定義等を作成することができ、これらの進展を踏まえ、アウトカム定義の作成に向けて更に検討を進める事が適切と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202025031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
40,000,000円
(2)補助金確定額
33,358,000円
差引額 [(1)-(2)]
6,642,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 13,212,639円
人件費・謝金 10,520,054円
旅費 149,860円
その他 2,478,263円
間接経費 6,998,604円
合計 33,359,420円

備考

備考
千円未満の端数については、研究者の自己負担となるため。

公開日・更新日

公開日
2023-06-26
更新日
-