薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築および活用に関する研究

文献情報

文献番号
202025030A
報告書区分
総括
研究課題名
薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築および活用に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20KC2006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
藤吉 圭二(追手門学院大学 社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 哲彦(関西学院大学 社会学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、2010年4月に「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」により、「すべての国民に対する医薬品教育を推進するとともに、二度と薬害を起こさないという行政・企業を含めた医薬関係者の意識改革に役立ち、幅広く社会の認識を高めるため、薬害に関する資料の収集、公開等を恒常的に行う仕組み(いわゆる薬害研究資料館など)を設立すべきである」との指摘がなされたことに端を発する。資料館の設立それ自体は本研究班の目的の範疇を超えるが、当の資料館にはどのような役割や機能が求められるか、集積された資料はどのように提供されるべきか、そうした予備的な検討をするために研究班が組織されたと言える。
 これまで研究班では主として被害者団体資料の整理と調査・目録作成を進めてきたが、ここ数年は被害者の証言映像に関して分析、制作両面にわたる研究も加わり、資料館に期待される資料保存機関としての意義および資料展示機関としての意義の双方について検討が進められた。
 本研究は、最終的には戦後の薬害事件に関連する資料を整理・公開して誰もが閲覧・活用できるような「薬害資料データ・アーカイブズ」を構築し、それを通じて薬害を二度と起こすことのないような社会の構築に寄与することを目的とする。このような遠大な目的は、小さな研究班による数年の活動で達成できるものではないが、資料館に期待される機能や役割についての検討は重要であり、少しずつでも確実にそこに近づいていくべく研究活動を進めていかなければならない。
研究方法
 本研究班は被害者団体の資料を整理・調査して団体資料の構成および内容を検討する班と、被害者の証言映像の分析を踏まえて被害の当事者と共に独自の証言映像の作成を試みる班とで構成されている。前者では、これまで歴史学およびアーカイブズ学において蓄積されてきた資料記述を踏まえ、薬害被害者団体が作成、保管してきた資料の目録作成に当たった。後者では、薬害被害当事者の証言映像に関して、社会学の分野で蓄積されてきた言説分析の手法によって分析を進めると共に、近年注目されているデジタルストーリーテリング(DST)の手法を踏まえて独自の証言映像を作成する試みが進められてきた。
 いずれの活動も2020年2月頃からのコロナ感染拡大により、特に当事者のみなさんと協働する研究集会、見学会やワークショップは規模の縮小や見合わせをせざるを得なくなった。ただし、コロナ禍も1年が経過して多くのセクターでオンラインミーティングの環境が整いつつあること、各班の作業自体は堅実に進んでおり、今後も作業自体は順調に進むものと期待できる。
結果と考察
 アーカイブズ資料の保存には、質感や真正性に鑑みデジタル化の後も現物を保存が重視されるが、こと利用、閲覧に関しては、国立公文書館が運営するアジア歴史資料センター(アジ歴)のように、インターネットを利用したオンライン閲覧が主流になりつつある。多くが一点もの、すなわち現物しかない資料によって構成されるアーカイブズ資料は所蔵機関まで出向かないと閲覧できないというアクセス面での壁が図書資料よりも高い。そのような観点からも資料のオンライン閲覧は今後注力していくべき課題であると共に、複数機関が所蔵する類似資料を横断検索できるようにするためにも目録スタイルの調整、すなわち資料記述の国際標準を踏まえた目録作成およびその各団体への周知が必要となる。映像研究班が着手している、当事者とともにつくるDSTによる証言映像についても、関係者の了解を得ることができれば、オンライン公開が検討されてよいだろう。厚生労働省サイト内の「薬害を学ぼう」ページには、ごく短いものだが薬害被害者のインタビュー映像も紹介されている。将来的には被害者だけでなく薬害に関わった他の各セクターからも証言映像が提供されるようになることも求められる。
結論
 薬害研究資料館を「二度と薬害を起こさないという行政・企業を含めた医薬関係者の意識改革に役立」つようなものとするには、薬害に関わる各セクター、すなわち薬品を製造し販売した企業、薬品を処方した医療機関、薬品の流通を認可した行政府、これら総体を対象に資料が収集、保存、公開される必要があることは言うまでもない。現状において本研究班の活動の先にあるのは、薬害被害者団体資料館とでも言うべきものである。しかしながら、それらセクターの資料・情報公開が十分に進んでおらず、それゆえ被害者団体が苦労して集め、保存されてきた各セクターの内部文書はその意味で貴重である。薬害の実態を詳細に知るためには薬害被害者団体が自前で収集し保存してきた資料に、当面なお頼らざるを得ない。資料館を物理的なハコモノと捉えるだけでなく、アジ歴のようなバーチャルな形式でのデジタルアーカイブをも視野に入れる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2021-07-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202025030C

収支報告書

文献番号
202025030Z