国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究

文献情報

文献番号
202025027A
報告書区分
総括
研究課題名
国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究
課題番号
20KC1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
矢野 育子(国立大学法人 神戸大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 入江 徹美(熊本大学 大学院 医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤師免許取得後のキャリアパスとして、研修認定薬剤師を経て、認定薬剤師、領域別専門(認定)薬剤師、領域別高度専門(指導)薬剤師に至るというラダーが日本学術会議から2008年に提言された。現在、これら専門性を有する薬剤師の認定は、個別の職能団体や学会等において行われており、制度設計も様々で認定要件に整合性がないという課題がある。厚生労働科学研究費補助金『6年制薬剤師の輩出を踏まえた薬剤師の生涯学習プログラムに関する研究』2013年度総括・分担研究報告書では、第三者機関による専門薬剤師制度の評価・認証を前提に「専門薬剤師制度整備指針の取りまとめ」が作成された。しかし現状では、領域別認定・専門薬剤師制度は第三者機関によって認証される仕組みにはほとんどなっておらず、薬剤師の専門性と薬学的管理業務との関連についても十分議論されていない。そこで本研究では、これら専門性を有する薬剤師認定制度の改革を実現するために、医療機関や薬局に勤務する薬剤師に求められる専門領域を医療マネジメントの観点から決定するプロセスを考案するとともに、薬剤師の専門性の質を確保するための具体的な仕組みについて提案することを目的とする。
研究方法
現在、薬系職能団体や関連学会により様々な領域別認定・専門薬剤師制度が設けられている。これらの団体が認定している領域別認定・専門薬剤師等の認定要件について学会ホームページ等を用いて調査するとともに、それぞれの専門性を活かした薬学的管理事例を収集し、国民にとって必要な専門領域と専門性を担保するための要件について検討した。その際、名称の整合性についても検討した。
わが国における医師・歯科医師・看護師における専門領域と認定要件、認定のプロセスと現状の問題点について学会ホームページ等や既存資料を用いて調査を行い、専門薬剤師認定の制度設計への応用について検討した。
結果と考察
関連団体が認定している認定薬剤師や専門薬剤師の認定要件について比較調査した結果、薬剤師のキャリアパスとして、1)薬剤師免許取得後にまず目指すべきジェネラルな研修認定薬剤師、2)特定領域の専門的薬剤業務を提供する能力を兼備した領域別認定薬剤師、3)専門的薬剤業務の提供に加え、研究能力を持ち指導的役割を果たすことができる専門薬剤師、の3段階を基本とすることが理想的であることが示された。さらに、薬剤師を指導する管理的立場として専門薬剤師の上位に指導薬剤師を置くこともできるが、専門的薬剤業務の提供に携わる場合には、専門薬剤師としての資格を併せて有する必要がある。また、国民のニーズに応えるためには、認定団体の枠組を超えた新たな仕組みの第三者機関認定による専門薬剤師を育成することが望ましく、そのための認定要件案を提示するとともに、留意点について列挙した。
わが国における医師、歯科医師、看護師における専門制度の設立経緯や体制を調査したところ、各医療職の独自性を反映した違いがあるが、制度設計上の共通の留意点は、専門制度が国民にとってわかりやすい仕組みであること、既存専門制度を有する各所属学会と新たな認証組織との良好な信頼関係・役割分担の構築等であった。また、薬剤師以外の医療職専門制度においても、薬剤師同様の課題(「専門性の標準化・質の担保」と「地域偏在・専門領域の偏在」との両立、資格取得要件の難度等)のあることが示された。
今後、専門性を有する薬剤師の名称の統一と認定要件の標準化を推進し、薬学的管理上必要な薬剤師の専門領域については医療計画を参考に、病院薬剤師と薬局薬剤師の違いを考慮しながら決定し、新たな第三者機関認定の仕組みや、薬剤師卒後研修制度と専門認定制度の連動など、他の医療職の専門制度や海外事例を参考にプロフェショナルオートノミーに基づき、職能団体や学会の枠を超えたダイナミックな変革について検討する必要がある。
結論
専門性を有する薬剤師の名称と認定基準の定義を行い、新しい仕組みで認証すべき仮称:第三者機関認定による専門薬剤師の認定要件案を提示した。国民に分かりやすい専門制度の構築に向け次年度も引き続き検討していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-06-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202025027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,800,000円
(2)補助金確定額
1,963,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,837,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,000円
人件費・謝金 135,000円
旅費 0円
その他 20,000円
間接経費 1,800,000円
合計 1,963,000円

備考

備考
新型コロナ感染拡大のため出張移動が制限されたことなど、研究の推進に影響があったため。

公開日・更新日

公開日
2021-06-18
更新日
2023-05-31