高磁場MRIとオールインワンナノデバイスによる癌微少病変の非侵襲的診断・治療システムの開発

文献情報

文献番号
200812024A
報告書区分
総括
研究課題名
高磁場MRIとオールインワンナノデバイスによる癌微少病変の非侵襲的診断・治療システムの開発
課題番号
H19-ナノ・一般-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
石坂 幸人(国立国際医療センター 難治性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 伊知男(放射線医学総合研究所 分子イメージング)
  • 長谷川 正勝(名糖産業名古屋研究所 参与)
  • 河野 健司(大阪府立大学 工学部)
  • 山下 克美(金沢大学 薬学部 )
  • 濱田 洋文(札幌医科大学 分子医学遺伝子治療)
  • 中釜 斉(国立がんセンター 研究所)
  • 津田 洋幸(名古屋市立大学 分子医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
43,504,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. MRIによる癌微少病変の特異的な検出
2. 感温性リポソームによる局所DDS
からなる、診断と治療が一体化したナノデバイスを創成する。
研究方法
a.磁性体ナノ粒子への抗体結合方法の改良
平成19年度の研究終了時点で抗体結合型磁性体ナノ粒子の安定性が究めて脆弱であることが判明した。そこでデキストランの長さを調製することで、抗体結合型磁性体ナノ粒子の安定性の改善を行った。

b.新たな温度応答性リポソームの作成
 1分子中にガドリニウムキレートを8個保持したデンドロン脂質を合成し、この分子を含有した感温性リポソームを作製した。さらにこのリポソームを担癌マウスに投与し、各正常組織中のシグナルと腫瘍特異的なシグナルの強度の時間変化を観察した。
結果と考察
a. 抗体結合型磁性体ナノ粒子を用いたMRIイメージング:MRIの安定性及び抗体結合率が改善され、再現性がより期待できるプローブの作製が可能になった。
b. 新たな単クローン抗体を用いたin vivoイメージング:ヌードマウスの皮下に膵臓癌細胞株とコントロール腫瘍細胞である乳癌細胞を移植することで作製した担癌マウスを実験に供した。そして新たに得た単クローン抗体を用いて蛍光イメージングを行い、抗体が選択的に膵臓癌細胞株移植腫瘍組織に集積することを明らかにした。

b.新たな温度応答性リポソームの作成
 ガドリニウム脂質含有感温性リポソームを作製し、これを担癌マウスに投与後体内動態を観察した。その結果腫瘍におけるMRシグナルは一定時間、保たれたが、肝臓や腎臓では一過性にリポソームが集積し、時間とともに減弱することが分かった。これらの結果から、このリポソームを用いることで、適切なタイミングや標的部位を検知することが可能となり、理想的ながん化学療法を可能にするものと期待される。
結論
AIOナノデバイスの作成に向けた諸要素の整備:本年度の研究成果により、本プロジェクトの目標である動物モデル膵臓癌に対するMRI検出と局所DDSの可能性が大きく広がった。次年度は、ガドリニウム付加型温度応答性リポソームの作成、ラット膵臓癌に反応性を示す新たな単クローン抗体結合型リポソームの作成を行い、ナノ粒子に対する単クローン抗体の最適な結合様式に関する情報を統合することで、本課題の目標を達成する。 

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-