日本の輸血医療における指針・ガイドラインの適切な運用方法の開発

文献情報

文献番号
202025022A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の輸血医療における指針・ガイドラインの適切な運用方法の開発
課題番号
20KC1002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
松本 雅則(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松下 正(名古屋大学医学部附属病院 輸血部)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学分野)
  • 紀野 修一(日本赤十字社 北海道ブロック血液センター)
  • 奥田 誠(東邦大学医療センター大森病院 輸血部)
  • 岡崎 仁(東京大学医学部附属病院 輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本輸血・細胞治療学会は、科学的根拠に基づいた血液製剤の使用ガイドラインを作成し、これらの成果をもとに、厚生労働省が作成する「血液製剤の使用指針」と「輸血療法の実施に関する指針」も改定された。このように指針やガイドラインが整備されているが、実際の医療現場でどのように利用されているのかは必ずしも充分に検証されていない。このため、国内の様々なレベルの医療環境の中でどの程度で指針が遵守されているのか、また指針遵守のモニタリングを医療機関において輸血管理部門が行なっているか、調査する必要がある。このような調査で明らかになった問題点、特に指針、ガイドラインで遵守できず臨床現場で実施されている点を明らかにし、ガイドラインをより実質化して今後の改定の際に参考にすることを目的とする。
研究方法
令和2年度は以下の5項目について研究を行なった。
1、血液製剤の適正使用や適正な輸血療法の実施を促進するための取組に関する情報収集
2、輸血医療(検査、運搬、保管等を含む)に関する実態把握のための調査
3、海外での事例についての情報収集
4、関連指針の整理を行い、適正使用を促進するために関係者への周知を図る
5、輸血療法実践ガイド(輸血療法実施に関する指針と血液製剤の使用指針の融合)
結果と考察
1、血液製剤の適正使用や適正な輸血療法の実施を促進するための取組に関する情報収集
今年度の血液製剤使用実態調査の回答施設数は4,953 (回答率51.99%) であった。各血液製剤とも使用基準を遵守している割合を把握していたのは全体の約20%の施設のみだったが、それらの施設での遵守率は90%以上と高かった。また、遵守率が把握されている施設の中では大規模施設の方が使用基準の遵守率が若干低めだった。約20%の施設では不適正な輸血オーダーに対する問い合わせを日常的に行っていたが、血漿製剤とアルブミン製剤では問い合わせをしていない施設が約60%に上った。輸血オーダー時の必須項目は、輸血目的が全体の約80%、病名が約40%であった。
2、輸血医療(検査、運搬、保管等を含む)に関する実態把握のための調査
輸血過誤防止対策として自動輸血検査装置の導入の病床別の導入率について、300床以上の医療施設では80%以上の導入率であった。一方、300床未満の施設では約10%であった。輸血用血液製剤を保管する保冷庫について、血液製剤保管管理マニュアル上、条件に則しているものは血液専用保冷庫で自記式記録計付き、警報装置付きと、薬品保冷庫で自記式記録計付き、警報装置付きの保冷庫が該当する。無床の医療機関では、家庭用冷蔵庫・冷凍庫を使用していると38.8%の回答であった。輸血用血液製剤の運搬について、最も多い回答を得たのは発泡スチロールの搬送ケースである(30.6%)。最も温度変化が無く安定した搬送装置ATR(ポータブル保冷庫)(0.8%)であった。
3、海外での事例についての情報収集
海外の輸血ガイドラインの遵守に関する調査研究の主体は、輸血トリガー値に基づく適正/不適正使用の判定であった。オーストラリアとニュージーランドのグループは、赤血球・血小板・血漿・クリオ製剤の投与トリガーに関する多施設前向き観察研究を行った。赤血球輸血では約98%の遵守率であったのに対して、その他の3種の輸血では15~75%の遵守率にとどまった。なぜガイドライン外の輸血を行うのかについて行動理論に基づいた介入方法を検討する必要がある。その代表例が、複数施設のICU医師10名への赤血球輸血に関するTDFを援用したインタビュー調査である。この質的調査から、輸血実践に対する各医師の心理的背景が明らかにされた。
4、関連指針の整理を行い、適正使用を促進するために関係者への周知を図る
5、輸血療法実践ガイド(輸血療法実施に関する指針と血液製剤の使用指針の融合)
実施指針に関する変更について討議した。使用指針も実施指針と統一した記述方法で、一体となった「輸血療法実践ガイド」を作る計画である。現在の使用指針は、学会が作成した科学的根拠に基づいたガイドラインをベースに作成したものであり、そのコアな部分を抜き出すことを考えている。
結論
日本の輸血医療現場での指針/ガイドラインの利用状況について調べたところ、大規模病院では概ね良好であったが、規模が小さくなればそれに従っていないことが推察された。海外の文献による調査では、ガイドラインの遵守に関してはトリガー値を中心に報告されていた。実施指針、使用指針の統合指針に関しては、初年度として原案は作成したが、特に使用指針に関して統一したものでは無いため、今後記載を統一したガイドライン作りが必要であると考えている。そのため、次年度以降にはどのような記載項目が必要であるのかを検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
2021-06-09

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202025022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,900,000円
(2)補助金確定額
3,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,660,680円
人件費・謝金 852,406円
旅費 0円
その他 510,506円
間接経費 900,000円
合計 3,923,592円

備考

備考
自己資金として23,592円

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-