若年者を対象としたより効果的な薬物乱用予防啓発活動の実施等に関する研究

文献情報

文献番号
202025021A
報告書区分
総括
研究課題名
若年者を対象としたより効果的な薬物乱用予防啓発活動の実施等に関する研究
課題番号
20KC2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
永沼 章(東北大学)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 順子(北里大学薬学部)
  • 関野 祐子(東京大学大学院薬学系研究科ヒト細胞創薬学寄付講座)
  • 花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部第3室)
  • 舩田 正彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 森 友久(星薬科大学 薬品毒性学教室)
  • 山本 経之(長崎国際大学 薬学部 薬理学研究室)
  • 河井 孝仁(東海大学 文化社会学部広報メディア学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
12,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の薬物乱用状況は欧米等と比較すれば非常に低い割合となっている。しかし、近年、薬物をとりまく状況は、カナダで大麻の合法的な嗜好目的使用が可能になったり、インターネットにおいて薬物に関する様々な情報を容易に入手できるようになったり、大きく変化してきている。現在、薬物乱用防止教育が学校において広く行われるなど、国内の様々な機関が連携して薬物乱用防止に努めているが、日本の若者で大麻の乱用が増加しているおそれがあり、また、このような若者が今後、大麻を継続的に乱用したり、大麻から他の薬物の乱用につながったりすることにより、将来、日本で薬物の乱用がさらに進むことが危惧されている。また、大麻草に由来する成分を含む医薬品が欧米で承認されるなど、大麻草由来の成分であっても医療で活用されているものがあり、日本でも、このようなエビデンスを踏まえた大麻由来成分の規制等が望まれている。
このような状況に対応するため、これまで、先行研究「危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究」では、大麻に関する情報収集や、地域における効果的な予防啓発の実施等に関する研究が行われ、その成果は小冊子としてまとめられ活用されている。しかしながら、現在においても、以下のような課題がある。
(1)大麻由来成分の医療での有用性等を含め、大麻に関する様々な研究開発が継続的になされており、それを収集し、根拠に基づく施策の立案等に活用していく必要がある
(2)例えばカナダの大麻規制の変更は若者における大麻乱用の防止等が目的とされているが、規制変更後、実際にどのような社会的影響を与えているか等、外国の状況を継続的に情報収集する必要がある
(3)若者を対象とした、より効果的な予防啓発方法を検討し、実施する必要がある
これらに取り組み、日本の若者による大麻等の薬物の乱用を予防していくことを本研究の目的とする。
研究方法
研究目的を達成するために、7つの分担研究を組織して基礎研究、調査研究および啓蒙活動を行った。
結果と考察
脳の発達に対するカンナビノイドの影響をラット海馬初代神経培養系を用いて検討したところ、樹状突起スパインへのドレブリンの異常集積と神経細胞死が認められ脳の発達に対してカンナビノイドが有害であることが示唆された。さらに、これまで依存形成薬物はアッパー系あるいはダウナー系として区分されてきたが、大麻は多くの幻覚剤とは明らかに異なり両者を併せ持つ極めて珍しい感覚効果を示すこと示唆された。また、大麻の生殖影響に関する文献調査を行ったところ、精子数の減少、月経調節異常及び胎盤形成異常、子宮内胎児発育遅延、低体重児、発育不全、中枢神経系障害などの報告があり、これらの障害機構は外因性カンナビノイドによる子宮内環境の混乱によって胎児の内在性カンナビノイドシステムが影響を受けるためと推察されていた。一方、米国およびカナダについて大麻の使用実態を調査したところ、両国とも年齢制限や使用場所を限定するなどの大麻使用規制を施しているが、コロラド州およびワシントン州においては大麻合法化後に交通事故や大麻食品等の摂取による健康被害が増加しているなど、必ずしも規則が守られていない状況であることが明らかになった。カンナビノイド合成に関して文献調査を行なった結果、活性成分である9-THCについての合成研究が多く最近では立体選択的かつ効率の良い合成法が報告されていることが分かり、最近でも新規の手法を用いたカンナビノイドの合成法が報告されているため今後も引き続き調査していく必要があると考えられた。さらにアンケート調査によって、日本の若年者は大麻の危険性をある程度理解していても大麻使用を強く拒絶する人の割合は必ずしも低くないとの結果が得られ、メディア活用戦略モデルをはじめとして若年者全般への大麻利用の危険性についての広い知識付与のための方法を確立することの重要性が示唆された。また、住民主体の薬物乱用防止対策として主に薬局・薬剤師による支援協力を促進するため、薬物犯罪の実状調査、法制変化の動向分析及び啓発セミナー等を実施した。また、地域住民対象の啓発資材を開発し、薬局等での配布を指導することによって意識変容・行動変容の契機を作ると共に公開講座等で啓発を行った。
結論
各分担研究者が研究計画に沿って基礎研究、調査研究および啓蒙活動を行い、有用な知見を得ることができた。さらに研究を継続することによって本研究目的が達成されるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-07-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-07-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202025021Z