輸血用血液製剤と血漿分画製剤の安全性と安定供給を確保するための新興・再興感染症の研究

文献情報

文献番号
202025020A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血用血液製剤と血漿分画製剤の安全性と安定供給を確保するための新興・再興感染症の研究
課題番号
20KC1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所ウイルス第1部第3室)
  • 大隈 和(関西医科大学)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 比嘉 由紀子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 前野 英毅(一般社団法人日本血液製剤機構 研究開発本部 中央研究所 感染性病原体研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
10,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトや物資の国際的な移動の急速な増加や地球温暖化のためにデング熱やジカ熱などの蚊媒介ウイルス感染症が東南アジアや中南米諸国で流行し、毎年輸入感染例が報告されている。これらのウイルスを媒介する蚊が国内に存在しているため国内でも発生する可能性がある。また、E型肝炎ウイルスに加えて重症熱性血小板減少症やダニ媒介脳炎などダニ媒介のウイルス感染症も広く国内に存在していることも明らかになっている。これらの病原体は、いずれもウイルス血症を起こすことから血液製剤を介して感染する可能性がある。また、令和2年度は国内外で新型コロナウイルスのパンデミックが発生した。血液中からウイルスが検出されることは少ないが血液製剤で実施されている不活化法に対する反応性を評価することにした。一方、血液製剤の安全性確保上で重要なB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、パルボウイルスは、未だ培養系がないので動物由来のモデルウイルスが不活化法の評価に使用されている。本研究班では、これらの病原体を検出する検査診断法の開発と標準化、スクリーニング法の標準化、さらにHBV、HCV、E型肝炎ウイルス(HEV)、パルボウイルスの効率良い培養系の開発を実施した。これらを実施することによって血液製剤の安全性の向上と安定供給を目指した。
研究方法
蚊媒介性ウイルスのウイルス学的特性の解析では、デングウイルス、ウエストナイルウイルスを含むフラビウイルス共通プライマーを作成し、ブタ血清を用いて日本脳炎ウイルスの評価を行った。SFTSウイルスの検出法確立に関する研究では、SFTSVのデータベースを基に大規模スクリーニング用のプライマーとプローブのセットをデザイン・作製し、検出感度を評価した。赤血球製剤の病原体不活化法の開発では、「Pheophorbide a」の細胞への毒性を解析した。また、分子生物学的手法を用いてB型肝炎ウイルスの産生株と高感受性株を作成を目指した。また、HEVの不活化に関する研究では、リバースジェネティクス法を用いて得られた高濃度HEVを用いて、エルコール分画と乾燥加熱による不活化効率を解析した。ダニ媒介感染症の予防の研究では、マダニの吸血源動物種の解析とウイルスの検出を行なった。HCVの不活化の研究では、野生株を用いたin vitro培養系を確立するために宿主蛋白質Sec14L2を高発現させ、HCV陽性血漿を感染させ感染の有無を解析した。また、実ウイルスを用いたウイルス除去・不活化の研究では新型コロナウイルスの60℃液状化熱に対する感受性を武漢株や変異株を用いて解析した。
結果と考察
フラビウイルス共通プライマーを用いた核酸増幅検査では、ブタの血清から日本脳炎ウイルス1型の遺伝子を検出することができた。これまでにデング1型から4型までのウイルス遺伝子を検出できることも明らかにしている。また、血液からのSFTSの検出法の開発では、プライマー350セットから最終的に3セットのプライマー・プローブセットを選定でき、感度や特異性に問題がないことが確認できた。赤血球製剤の病原体不活化法の開発では、「Pheophorbide a」がB細胞に毒性を与える可能性が示唆された。HBVの培養系ではHBVを産生する複数の株を樹立し、効率良く感染する2つの細胞株も得られた。HEVの不活化効率の検討においてエタノール分画工程やフィブリノゲンの乾燥加熱ではウイルス除去/不活化効果に「有効」とされるLRV=4に満たなかったことを明らかにした。ダニ媒介感染症の予防の研究では、マダニの吸血源動物種の検出でユニバーサルプローブにより吸血源動物の分類群をスクリーニングし、次いでNGS解析による動物種を同定する効率的な検出系の構築を試み、本検出系で多様な動物種の検出が可能であることが確認された。また、渡り鳥飛来地で採取したマダニから新規ウイルスを含む多種のウイルスが検出され、鳥に付着したダニによって感染地域が拡大する可能性が示唆された。実ウイルスによる研究では、新型コロナウイルスは変異株を含めて60℃液状化熱によって速やかに不活化されることを証明した。さらにSec14L2を高発現させた細胞株を用いることで初めてHCV陽性血漿から細胞への感染が得られた。
結論
これら成果は血液製剤の安全性確保と安定供給のために大いに役立つと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202025020Z