ナノバブルと超音波を用いた高周波超音波三次元画像診断・分子導入システムの開発

文献情報

文献番号
200812020A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノバブルと超音波を用いた高周波超音波三次元画像診断・分子導入システムの開発
課題番号
H19-ナノ・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小玉 哲也(東北大学 大学院医工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小野 栄夫(東北大学 大学院医学系研究科病理形態学分野)
  • 森 士朗(東北大学病院 歯科医療センター)
  • 松村 保広(国立がんセンター 東病院 臨床開発センター)
  • 藤川 重雄(北海道大学 大学院工学研究科)
  • 福本 学(東北大学 加齢医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
35,983,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では, 超音波造影性薬剤封入型ナノバブルと超音波を用いて, がんの微小血管に特徴的な血管周囲へのバブルの溢出・貯留効果をバブルの軌跡として捉えて三次元画像を構築し, その構築画像の特徴からがんの診断をおこない, 同時に輝度の集積部への超音波照射によりバブルを破裂させ, 封入された抗腫瘍分子をがん組織に導入可能な高周波超音波三次元画像診断・分子導入システムを開発する.
研究方法
1.音響性ナノバブルの作製
音響性ナノバブルを作製し, 走査型電子顕微鏡で形態を観察する.
2.臨床試験導入用動物実験モデルの作製
ルシフェラーゼ発現性腫瘍細胞を使用し,肝転移および所属リンパ節転移のマウスモデルを作製する.
3.がんの早期診断法の開発
腫瘍内血管を流れるバブルを高周波超音波で探知し, 大型計算機で輝度情報を処理する.
4.分子導入法システムの開発
腫瘍血管内を流れるバブルの輝度値をトリガー信号にして超音波照射が可能な分子導入システムを開発する.
5.分子導入機序の解明
ナノバブルバブル崩壊で発生する衝撃圧の作用にともなう細胞膜変形を分子動力学シミュレーションで解析する.
結果と考察
1.音響性ナノバブルの形態学観察
作製した音響性リポゾームを走査型電子顕微鏡で観察し, ガスと液体が封入されていることを明らかにした.
2.臨床試験導入用動物実験モデルの作製
腫瘍細胞を脾臓に移植し, 門脈経由で形成された肝転移モデル系の確立した.また,MRL/MpJ-lpr/lprマウスを使用し, 腋窩リンパ節に転移可能なリンパ節転移モデルの開発に成功した.
3.がんの早期診断法の開発
腫瘍血管内を流れるバブルの輝度情報から血管を抽出することができた.
4.分子導入法システムの評価
低出力超音波とマイクロバブルを使用した分子導入法による抗腫瘍効果を生体発光イメージング法で明らかにした.
5.分子導入機序の解明
分子動力学シミュレーションから,脂質二重膜の脂質分子の頭部と尾部は, 衝撃波が入射する二重層の上流層側内で観察され, 下流層側には観察されないことが示された.
結論
ドラッグキャリアと音響性の機能をもつ音響性ナノバブル,および臨床導入用転移マウスモデルの作製に成功した. 平成20年10月より三次元の血管抽出データからリンパ節転移の早期診断の実用性について,東北大学病院で臨床試験を開始した.理論・数値解析を実施し,ナノバブルと超音波を使用した分子導入機序を明らかにした.

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
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