医薬部外品成分の白斑誘導能の評価体系に関する研究

文献情報

文献番号
202025015A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬部外品成分の白斑誘導能の評価体系に関する研究
課題番号
19KC2005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 伊藤 祥輔(藤田医科大学 医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,340,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまでの研究により、白斑誘導性のロドデノール(RD)などの4-置換フェノール類がチロシナーゼにより代謝され、オルトキノン体に変換されることやRDユーメラニンやその前駆体などの代謝物の構造と性質を明らかにした。また、感受性の増強を図った細胞の応答を指標とする方法を検討し、白斑誘導性化合物の代謝は必ずしも細胞毒性の増強をもたらさないことが判明した一方で、ヒトチロシナーゼ強制発現細胞を用いて代謝物の解析を検討し、細胞レベルにおいてヒトチロシナーゼによるRDの代謝とグルタチオン(GSH)付加体の産生を追跡することができた。更に、各種4-置換フェノール類の代謝物を、生成するオルトキノンをSH含有ペプチドを共存させて、in vitroでペプチドと結合したカテコールとして検出することができた。これらの性質を利用した医薬部外品成分の白斑誘導能の評価法を構築する。
研究方法
(A)フェノール類をチロシナーゼで酸化した後に共存させたSHペプチドと結合させ、ペプチド付加物として生成物を検出する方法の条件検討を行う。4位にアルコキシを持つ基質について、反応条件調整による生成物の単純化を検討する。(B)白斑発症と強く相関する細胞応答に着目した評価系を構築する。白斑誘導性4-置換フェノール類に共通して認められる「チロシナーゼによる代謝活性化」を、細胞を用いて代謝物(オルトキノン体のシステイン(Cys)/GSH付加体)の解析により評価する方法の検討を進める。(C)RDと同様に4-置換フェノール構造を有する物質で、医薬部外品の有効成分として配合される可能性のあるエクオール(EQ)及びラズベリーケトン(RK)について、チロシナーゼの基質となってオルトキノンを産生するかどうか検討する。
結果と考察
(A)ブトキシ基以上の分子量を持つ置換基を持つ基質の場合、SHペプチド濃度が低い場合はペプチドが1個付加したカテコール、2個付加したカテコール、これらよりm/zが2小さいイオンとして検出される生成物の4種が検出されたが、SHペプチド濃度が高い場合はm/zが2小さいイオンとして検出される生成物が著しく減少した。これらのピークはrearrangementが起きやすい構造であり、SHペプチドの濃度が高い場合にこれらの分子ができにくいことが考えられる。生成物が単純化される利点があると言える。(B)ヒトチロシナーゼ高発現293T細胞に白斑誘導性の4-置換フェノールであるRKおよび4-tertブチルカテコール(4-TBC)を暴露するとオルトキノン体のGSHあるいはCys付加体が顕著に産生されたが、2-S-システアミニルフェノール(2SCAP)の場合には検出されなかった。白斑誘導性4-置換フェノール・カテコールでのオルトキノン体チオール付加代謝物の顕著な産生に比較し、2-置換フェノールでは代謝物産生は認めらなかったことは本方法の有用性を支持している。今後さらに対象を広げ、白斑誘導能との関連を解明し、本法の有用性を明らかにする。(C)EQの細胞内代謝検討において、システインおよびGSHの二付加体DiCys-EQ-ジカテコールおよびDiGS-EQ-ジカテコールがEQ濃度依存的に細胞中で生成し、培地に放出されることが示された。EQのうち約4%が代謝されて付加体を形成した。この代謝率は他の白斑形成フェノール体に比べてやや高値であった。DBL-キノンの試験管内での代謝については、反応は極めて速く進行するが、LC-MSにより解析し、二量体、三量体の生成が示された。EQの2個のOH基がいずれも酸化され、di-キノン体を経て二付加体が生成することは、EQオルトキノンの高い反応性を示している。また、生成したカテコール基のうちの1つが、RDの酸化により生成するクロマン骨格(RD-環状カテコール)を持つことから、RDと同様に細胞毒性をもたらす可能性が示唆される。RKの活性代謝物であるDBL-キノンからの二量体、三量体の形成は、オルトキノンと共役二重結合との間のイオン型Diels-Alder反応によるものと考えられる。
結論
SHペプチド濃度を高くすることにより、分子量が2小さいイオンとして検出される生成物が著しく減少し、生成物の単純化ができたと考えられた。白斑誘導性4-置換フェノール類に共通する代謝活性化について、細胞を用いた評価法の確立に向けて、ヒトチロシナーゼ高発現細胞を用いて化合物構造と代謝物生成の関係を解析し、本法の有用性を示した。EQが細胞内でチロシナーゼにより酸化され、EQ-di-キノンを生成し、チオール類と結合することが示された。これによりEQは細胞内タンパクと結合して細胞傷害性を惹起する可能性が示唆された。DBL-キノンは速やかに二量体、三量体を形成することから、RKによる白斑形成の原因物質である可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
2023-07-18

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202025015B
報告書区分
総合
研究課題名
医薬部外品成分の白斑誘導能の評価体系に関する研究
課題番号
19KC2005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 伊藤 祥輔(藤田医科大学 医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ロドデノール(RD)配合薬用化粧品(医薬部外品)による白斑の発症に関しては、チロシンと共通の4-置換フェノールの構造を持ち、チロシナーゼの阻害活性を期待されたRDがチロシナーゼにより代謝され、オルトキノン体に変換されることが判明しており、この代謝と白斑発症との関連が示唆されている。本研究では、in vitroでのチロシナーゼとの反応性、チロシナーゼを発現させた細胞での代謝物の解析、医薬部外品に使用される可能性のある物質のチロシナーゼによる代謝物の構造と性質の解析を行って白斑誘導能の評価法の構築を目指す。
研究方法
4-置換フェノール類をチロシナーゼで酸化した生成物を共存させたSHペプチドと結合させて検出するLC-MSで検出する方法について、基質の反応性評価及び生成物の単純化が実現できる反応条件を検討する。白斑発症と強く相関する細胞応答に着目した評価系構築を目的に、白斑誘導性4-置換フェノール類に共通する「チロシナーゼによる代謝活性化」を、[1]細胞を用いて代謝物であるオルトキノン体のシステイン(Cys)/グルタチオン(GSH)付加体の産生の解析、[2]細胞の薬物感受性増強により評価する方法について検討する。医薬部外品の有効成分として配合される可能性のある4-置換フェノールとして、サプリメントであり皮膚適用時のシミに対する効果が期待されているエクオール(EQ)及び白斑形成が知られるラズベリーケトン(RK)についてチロシナーゼの基質となるかどうか検討する。
結果と考察
(A)4位がメチル基又は第一級アルキル基の場合、基質量が大きく減少し、SHペプチドが1個付加したカテコールが生成した。アルコキシ基の場合は一付加体及び二付加体が生成し、分子量が大きい場合はこれらよりm/zが2小さいイオンとして検出される生成物が生成し、SHペプチド濃度を高くすることで生成物が単純化された。第二級アルキル基、第三級アルキル基又はアリール基の場合、生成物は非常に少なかった。置換基の構造によりチロシナーゼとの反応性が異なると考えられる。二付加体形成においてもオルトキノンの生成とSH基の結合というメカニズムは共通している。(B)ヒトチロシナーゼ高発現293T細胞に白斑誘導性4-置換フェノール類を暴露すると、RD、4-S-システアミニルフェノール(4SCAP)と同様に、モノベンジルエーテルヒドロキノン(MBEH)、4-tertブチルフェノール(4-TBP)、RKあるいは4-tertブチルカテコール(4-TBC)でオルトキノン体GSH/Cys付加体が顕著に産生された。一方、2-置換である2-S-システアミニルフェノール(2SCAP)では検出されないことを確認した。メラノーマ細胞のメラニン合成系下流遺伝子TYRP1の低下は4SCAPの細胞毒性発現に全く影響を与えなかった。化合物構造と代謝物生成の関係を解析し、本方法の有用性を支持する結果を得た。(C)EQは2個のフェノール性OH基がいずれもチロシナーゼにより酸化され、2種類のモノカテコール体及びジカテコール体が生成した。モノカテコール体の一つはRD-環状カテコールと同じクロマン骨格を持ち、同様の細胞毒性が示唆される。SH化合物の一付加体及び二付加体が生成した。酸化により生成させたEQオリゴマーはGSHをGSSGに酸化させるプロオキシダント活性を持ち、その活性はレスベラトロールオリゴマーよりも高かった。CysおよびGSHの二付加体がEQ濃度依存的に細胞中で生成し、培地に放出された。代謝率は他の白斑形成フェノールに比べてやや高値であった。EQからのdi-キノン体を経た二付加体生成はEQオルトキノンの高い反応性を示している。RKの活性代謝物であるDBL-キノンは試験管内で代謝され、二量体、三量体が生成した。オルトキノンと共役二重結合との間のイオン型Diels-Alder反応によるものと考えられる。
結論
SHペプチド共存下での4-置換フェノールのチロシナーゼによる酸化において、置換基の構造により反応性及び生成物の構造に明らかな違いが見られた。SHペプチド濃度の調整により生成物の単純化ができると考えられた。白斑誘導性4-置換フェノール類に共通する代謝活性化の評価方法として、ヒトチロシナーゼ高発現細胞を用いてのチオール付加体解析の有用性を支持する結果を得た。EQのチロシナーゼ酸化はEQ-キノン、次いでEQ-オリゴマーを産生し、EQ-di-キノンがチオール類と結合することが示された。EQが細胞内タンパクと結合することにより、またEQ-オリゴマーが細胞内抗酸化物質を酸化(枯渇)することにより細胞傷害性を惹起する可能性が示唆された。DBL-キノンの速やかな二量体、三量体形成から、RKによる白斑形成の原因物質である可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202025015C

収支報告書

文献番号
202025015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,340,000円
(2)補助金確定額
2,340,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,323,334円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 16,666円
間接経費 0円
合計 2,340,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
-