かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究

文献情報

文献番号
202025006A
報告書区分
総括
研究課題名
かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究
課題番号
H30-医薬-指定-008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
安原 眞人(帝京大学 薬学部 地域医療薬学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 赤池 昭紀(京都大学薬学研究科)
  • 亀井 美和子(帝京平成大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,620,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国は、地域包括ケアシステムによる医療・介護の総合的な展開において質が高く良質な医療提供体制の構築を推進しているが、適切な薬物療法を提供するためには、薬局や薬剤師等が、医療の高度化にも対応できる専門性を持ちながら、多職種と連携することが必要となる。近年、提唱されている「プロトコールに基づく薬物治療管理」(PBPM)は、医療機関と薬局の連携にも効果的な枠組みである。本研究では、地域包括ケアシステムの下で、かかりつけ薬剤師・薬局が、多職種・多機関と連携したPBPMに基づく高度薬学管理機能を患者に対して発揮する方策を検討し、その実践によるアウトカムを評価検討する。研究計画3年目となる本年度は、PBPMによる薬局と病院の連携を実践する地域の拡大を図るとともに、前年度に制作・配布した連携を担う薬剤師の教育用DVDの活用状況を調査する。分担研究班では、登録販売者のあり方について提言の取りまとめ(赤池班)、オンライン診療に伴う緊急避妊薬調剤に関する研修プログラムを整備する(亀井班)。
研究方法
本研究は、日本医療薬学会、日本臨床腫瘍薬学会、日本病院薬剤師会、日本薬剤師会の 4 団体を中心に、関連諸団体の協力を得て実施した。令和2年4月の診療報酬改定で、質の高い外来がん化学療法の評価とがん患者に対する薬局での薬学的管理等の評価に関する加算が新設された。本研究班が提唱するPBPMに基づく医療機関と薬局の連携はこれらの加算要件を満たすものと考えられることから、各地の厚生局に加算を届け出た施設数を調査した。前年度に作成した薬薬連携を担う薬剤師教育用DVDは令和2年3月末に各都道府県の薬剤師会・病院薬剤師会と全国の薬科大学・薬学部に配布された。DVDの利用状況に関するアンケートを令和3年1月末に郵送し、2月25日までに寄せられた回答を集計した。赤池班では、前年度までに行ったアンケート調査やヒアリング結果を踏まえて、登録販売者の資質向上のあり方に関する提言をとりまとめた。亀井班では、前年度対面による集合研修形式で実施した「オンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤に関する研修会」がCOVID-19パンデミックの影響で開催困難な状況となったため、Web開催可能となるよう教材を整備し、動画収録等を行った。
結果と考察
研究協力者が所属する病院と地域単位の薬局との間で、PBPMによる経口抗がん薬管理が展開中である。令和2年4月の診療報酬改定で新設された連携充実加算と特定薬剤管理指導加算2では、医療機関と薬局の密接な連携が加算要件とされ、本研究班が提唱するPBPMの枠組みが該当する。令和3年2月1日現在の加算届出施設数は、連携充実加算を届け出た病院は727件(全病院の8.8%)、特定薬剤管理指導加算2を届け出た薬局は6500件(全薬局の10.9%)であった。医療機関と薬局の連携を担う薬剤師の教育用DVDを視聴した各都道府県の薬剤師会・病院薬剤師会へのアンケート調査では、DVDが参考になったとの肯定的評価が91%を占め、89%が薬薬連携の推進に役立つと回答した。一方、薬科大学・薬学部へのアンケート調査では、学生が本DVDを視聴した大学は5校にとどまった。視聴できなかった理由の大半はCOVID-19パンデミックの影響であった。赤池班では、登録販売者の資質向上のあり方について、登録販売者の資質向上の意義、登録販売者に係る環境の変化、登録販売者に求められる専門性、登録販売者制度における課題、登録販売者の資質向上のあり方、の5項目からなる提言をまとめた。亀井班では、前年度作成した研修プログラムを改訂し教材を整備するとともに、Web配信可能な動画ファイルを制作した。
結論
地域や施設の状況に応じて連携のスタイルには様々なバリエーションがあるが、PBPMの枠組は外来がん治療の質の向上に有効である。本研究で制作した教育用DVDが活用されることで、各地区でかかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携が進むことを期待したい。赤池班でとりまとめた提言は、登録販売者の資質向上を通して適正な医薬品の販売制度の運用とセルフメディケーションの推進に役立つものと期待される。亀井班が制作した動画ファイルは、全国すべての地域で薬局がオンライン診療における緊急避妊薬の調剤に対応できるようWeb研修等での活用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202025006B
報告書区分
総合
研究課題名
かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究
課題番号
H30-医薬-指定-008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
安原 眞人(帝京大学 薬学部 地域医療薬学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 赤池 昭紀(京都大学薬学研究科)
  • 長谷川 洋一(名城大学薬学部)
  • 亀井 美和子(帝京平成大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国は、地域包括ケアシステムによる医療・介護の総合的な展開において質が高く良質な医療提供体制の構築を推進しているが、適切な薬物療法を提供するためには、薬局や薬剤師等が、医療の高度化にも対応できる専門性を持ちながら、多職種と連携することが必要となる。近年、提唱されている「プロトコールに基づく薬物治療管理」(PBPM)は、医療機関と薬局の連携にも効果的な枠組みである。本研究では、地域包括ケアシステムの下で、かかりつけ薬剤師・薬局が、多職種・多機関と連携したPBPMに基づく高度薬学管理機能を患者に対して発揮する方策を検討し、その実践によるアウトカムを評価し、PBPMによる薬局と病院の連携を実践する地域の拡大を目指した。
また、三つの分担研究班では、登録販売者のあり方(赤池班)、今後の薬剤師の需給見通しと薬剤師に関わる専門性(長谷川班)、オンライン診療に伴う緊急避妊薬調剤に関する研修プログラム(亀井班)についてそれぞれ検討を行った。
研究方法
本研究は、日本医療薬学会、日本臨床腫瘍薬学会、日本病院薬剤師会、日本薬剤師会の4団体を中心に、関連諸団体の協力を得て実施した。先行研究となる「薬剤師が担う医療機関と薬局間の連携手法の検討とアウトカムの評価研究」で開始した2種類の経口抗がん薬(S-1、カペシタビン)に関するPBPMの実証研究を継続するとともに、上皮増殖因子受容体阻害薬とマルチキナーゼ阻害薬を対象薬に追加した。薬局の医療機関や地域の多職種との情報共有の現状を把握するため、アンケート調査を実施した。抗がん薬治療患者に対する医療機関と薬局の連携について、PBPMによる望ましい連携のモデルケースをドラマ仕立てで示すDVDを作成し、各都道府県の薬剤師会、病院薬剤師会と全国の薬科大学・薬学部に配布し、10ヵ月後にアンケート調査を実施した。令和2年度診療報酬改定で新設された連携充実加算及び特定薬剤管理加算2について、各地方厚生局の公開情報から届出施設数を調査した。赤池班では、登録販売者試験の「試験問題の作成に関する手引き」を見直し、店舗販売業者等及び外部研修実施機関にアンケート調査を行い、関係団体にヒアリングを実施した。長谷川班では、薬剤師の需給動向把握のための情報収集を行い、平成30年度から25年間の動向を需要と供給に分けて予測した。亀井班では、オンライン診療における緊急避妊薬を調剤するために薬剤師が受けるべき研修内容を検討し、研修プログラムと教材を作成した。
結果と考察
本研究で構築したPBPMによる薬局と医療機関の連携システムは、がん患者の診療を行う医療機関の近隣の薬局に限らず、地域で様々な医療機関からの処方箋を受けている薬局でも活用できることが示された。薬局の情報共有に関する調査では、調剤に必要とする情報を薬剤師が患者本人から聞き出している場合が多数を占め、薬学的管理に必要な患者情報を医療機関と共有できるシステムの必要性が示された。研究班が制作したDVDは、視聴者から肯定的な評価が得られ、各地域での医療機関と薬局の連携や薬剤師教育の場での活用が期待される。令和3年2月1日時点で、連携充実加算の届出施設数は全病院の8.8%、特定薬剤管理指導加算2を届け出た薬局は全薬局の10.9%であった。
登録販売者について、資質向上の意義、環境の変化、求められる専門性、制度における課題、資質向上のあり方、の5項目からなる提言をとりまとめた。
薬剤師の需給動向について、薬剤師の総数としては、今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くが、長期的には供給が需要を上回ることが見込まれる。この推計は薬局や医療機関における薬剤師の業務の実態が現在と変わらない前提で推計したものであり、今後、薬剤師に求められる業務への対応や調剤業務等の効率化等の取組によって、薬剤師の必要性は変わりうるものであることに留意する必要がある。
オンライン診療における緊急避妊薬を調剤する薬剤師が受けるべき研修プログラムを整備し、Web研修にも利用できる動画を作成した。
結論
PBPMの枠組は外来がん治療の質の向上に役立ち、医療機関と薬局の個別の連携のみならず、地域単位での連携の展開にも有効である。本研究で制作した教育用DVDが活用されることで、各地区でかかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携が進むことを期待したい。赤池班の提言は、登録販売者の資質向上を通して適正な医薬品の販売制度の運用とセルフメディケーションの推進に役立つものと期待される。長谷川班の薬剤師需給動態予測については、現在さらに詳細な調査が行われている。亀井班が制作した動画ファイルは、全国すべての地域で薬局がオンライン診療における緊急避妊薬の調剤に対応できるようWeb研修等での活用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202025006C

収支報告書

文献番号
202025006Z