ナノメディシン分野における難治性眼表面疾患による涙液障害に対する超微細画像技術(ナノレベルイメージング)を応用した涙液再生治療法の開発

文献情報

文献番号
200812010A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノメディシン分野における難治性眼表面疾患による涙液障害に対する超微細画像技術(ナノレベルイメージング)を応用した涙液再生治療法の開発
課題番号
H18-ナノ・若手-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 英樹(鶴見大学 歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坪田 一男(慶應義塾大学 医学部)
  • 村戸 ドール(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は昨年に引き続き;(1)主任研究者である後藤が総括を行うとともに涙液水層再建手術である涙点閉鎖手術における合併症のコントロールおよび涙道内視鏡を使用した涙道再建手術について報告し(2)分担研究者である坪田が安全で効果的な油性点眼の開発として重症ドライアイをきたす疾患であるectrodactyly-ectodermal dysplasia-clefting syndrome(EEC症候群)に対しての涙液油層再生治療について報告し(3)分担研究者である村戸ドールが3次元表色系を応用したナノメーターレベル薄膜である涙液油層の評価のための白色光涙液油層薄膜干渉像からの薄膜厚みtopographyの作成を、それぞれ担当した。
研究方法
(1)経過上涙道内に失われたと考えられた涙点プラグの探索、摘出が検討された。中村氏式釣り針鉤を用いた涙点内側切開による迷入涙点プラグ除去法ぴょび涙道内視鏡を用いた方法が検討された(2)涙液油層欠乏であることが確認された患者に涙液油層再生を目的とした油成分補充療法を行った。様々な油性基材および投与法を考慮し、極少量オフロキサシン眼軟膏眼瞼縁塗布を施行した。(3)DR-1涙液油層干渉像観察装置を使用し、ヒト涙液を観察した。干渉像の色解析を行い薄膜厚みを算出した。
結果と考察
(1)涙点内側切開により行方不明となっていた涙点プラグが探索、発見された。また低侵襲で可能な迷入涙点プラグ探索法、涙道再建法を模索し涙道内視鏡を使用した。今研究ではシース誘導チューブ挿入法(Sheath-guided intubation, SGI)においてシースを涙点から抜去する方法(SGI涙点法)を開発した。(2)EEC患者の涙液油層干渉像は涙液油層欠乏を示した。極少量オフロキサシン眼軟膏眼瞼縁塗布により涙液油層干渉像は改善し、涙液蒸発率は低下した。(3)正常人における涙液油層薄膜厚みは約100 nm、重症ドライアイに伴う難治性眼表面疾患における涙液油層薄膜厚みは0~20nmであった
結論
(1)涙点プラグには合併症として迷入があり、涙石にくるまれたプラグは強度の涙小管炎の原因となっており除去が必要であると考えられた。またこのような原因による涙道閉塞に対して涙道内視鏡手術が発達しており、低侵襲なSGI涙点法を開発した。(2)EEC症候群に対しての極少量オフロキサシン眼軟膏眼瞼縁塗布療法は涙液油層を改善し眼表面湿潤に有効であった。(3)重症ドライアイにおいて観察された涙液油層の減少・欠乏は疾患による眼乾燥の大きな要因になっていると思われた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-10-29
更新日
-

文献情報

文献番号
200812010B
報告書区分
総合
研究課題名
ナノメディシン分野における難治性眼表面疾患による涙液障害に対する超微細画像技術(ナノレベルイメージング)を応用した涙液再生治療法の開発
課題番号
H18-ナノ・若手-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 英樹(鶴見大学 歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坪田 一男(慶應義塾大学 医学部)
  • 村戸 ドール(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在日本のドライアイ患者数は全国で約2200万人といわれ、なかでもシェーグレン症候群・慢性スチーブンスジョンソン症候群に伴うドライアイは視覚障害を伴う難治性眼表面疾患であり、早急な治療法の確立が必要とされている。健常な涙液は油層・水層・ムチン層の三層構造により眼表面を湿潤しているが、その解剖生理、または病理を臨床的に評価する方法は確立していない。本研究ではこれら既存の治療で治癒しない患者の治療の為、涙液油層薄膜・水層薄膜の評価及びその欠乏に対しての治療、すなわち健常な涙液構造の再生による難治性眼表面疾患の治療を目指した。
研究方法
1.眼表面湿潤度定量システムの開発
1-1)非侵襲的涙液貯留量測定法interference meniscometryの開発
1-2)涙液水層厚み定量測定システムの構築
1-3)涙液油層と涙液蒸発率の同時測定、関連調査
1-4)ナノメーターレベル生体薄膜の定量評価:L*a*b*3次元表色系を応用した白色光涙液油層薄膜干渉像からの薄膜厚みtopographyの作成
2.涙液水層再建治療の研究
2-1)涙液水層治療としての成功率のより高い涙点閉鎖術の開発
2-2)涙液水層再建治療合併症の克服及び涙道内視鏡を用いた涙道再建法の研究
3. 涙液油層再生治療の研究
3-1)涙液油層再生治療による涙液蒸発率抑制の研究
3-2)安全で効果的な油性点眼投与法の開発(重症ドライアイ患者への油層治療の臨床応用)

結果と考察
1.眼表面湿潤度定量システムの開発により重症ドライアイ疾患のメカニズムがより詳細に評価され、2.涙液水層再建治療の研究により涙液水層成分の適切な貯留が可能となり、3. 涙液油層再生治療の研究により眼表面湿潤のための涙液最表層油層薄膜の再生が可能であった。
結論
1.眼表面湿潤度定量システムの開発、2.涙液水層再建治療の研究、3. 涙液油層再生治療の研究、を行いよい結果を得た。当該研究では現在臨床的に用いられていないが、重症ドライアイに伴う難治性眼表面疾患の病態評価の為に重要であると考えた涙液水層および涙液油層の評価装置を開発した。これらの知見をもとに涙液水層再建治療を発展させ、また涙液油層の再生治療を開発した。これらの方法は疾患メカニズムの明らかでなかった難治性眼表面疾患の病態を評価し、欠乏する涙液要素を適正に補うことによって、今後重症ドライアイ患者の治療、すなわち眼表面湿潤に貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200812010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
眼表面粘膜を覆い視覚形成の最前線である涙液微細構造の評価およびその欠乏に対しての治療を研究した。
1.眼表面湿潤度定量システムの開発、2.涙液水層再建治療の研究、3. 涙液油層再生治療の研究、を行いよい結果を得た。
臨床的観点からの成果
当該研究では現在臨床的に用いられていないが、重症ドライアイに伴う難治性眼表面疾患の病態評価の為に重要であると考えた涙液水層および涙液油層の評価装置を開発した。これらの知見をもとに涙液水層再建治療を発展させ、また涙液油層の再生治療を開発した。これらの方法は疾患メカニズムの明らかでなかった難治性眼表面疾患の病態を評価し、欠乏する涙液要素を適正に補うことによって、今後重症ドライアイ患者の治療、すなわち眼表面湿潤に貢献することが期待される。
ガイドライン等の開発
世界ドライアイワークショップ成果報告にて当該研究で開発された各種デバイスが登録された。
その他行政的観点からの成果
現代は視覚情報化社会といわれておりコンピューターなどの普及により視覚障害があると生活に多大な支障をきたす。ドライアイ患者数は年々増大しており、その総数は全国で約2200万人と報告されている。そのなかでも難治性眼疾患である重症ドライアイに対して早急な治療法の確立が必要とされている。本研究では、既存の治療で治癒しない患者治療の為、涙液油層薄膜・水層薄膜の評価及びその欠乏に対しての治療、すなわち健常な涙液構造の再生による難治性眼表面疾患の治療を研究した。
その他のインパクト
2008年ドライアイリサーチアワード(日本ドライアイ研究会)受賞、2008年慶應義塾大学医学部三四会奨励賞受賞

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Eiki Goto, Yukihiro Matsumoto, Mizuka Kamoi, et al
Tear Evaporation Rates in Sjogren Syndrome and non-Sjogren Dry Eye Patients
American Journal of Ophthalmology , 144 , 81-85  (2007)
原著論文2
Atsuro Uchida, Miki Uchino, Eiki Goto, et al
Non-invasive interference tear meniscometry in dry eye patients with Sjögren syndrome
American Journal of Ophthalmology , 144 , 232-237  (2007)
原著論文3
Yu Ota, Yukihiro Matsumoto, Murat Dogru, et al
Evaporative Dry Eye and Management of The Ocular Surface Disease in a Patient with Ectrodactyly-Ectodermal Dysplasia-Clefting (EEC) Syndrome
Optometry and Vision Science , 85 , 795-801  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-