文献情報
文献番号
202025002A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチン等の品質確保を目的とした新たな国家検定システムの構築のための研究
課題番号
H30-医薬-一般-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
脇田 隆字(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
- 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
- 西條 政幸(国立感染症研究所)
- 高橋 宜聖(国立感染症研究所 免疫部)
- 花木 賢一(国立感染症研究所 安全実験管理部)
- 石井 孝司(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
- 染谷 雄一(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 森 茂太郎(国立感染症研究所 細菌第二部)
- 原田 勇一(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,592,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国家検定は、ワクチン、血液製剤等の保健衛生上特に注意を要する医薬品に設けられている制度である。この制度は、WHOにおいても各国の規制当局が実施しなければならない必須要件と定めており、ワクチン、血液製剤等の品質確保において重要な役割を担っている。この一方で、ワクチン、血液製剤等の品質は向上しており、品質向上に合わせた柔軟な国家検定制度のあり方の検討が急務となってきている。本研究では、国家検定をより有効な制度に向上させるために必要な調査、研究を行う。
研究方法
本研究では、1)ワクチンの国家検定においては、すでに導入されている製造・試験記録等要約書(SLP)審査制度の血液製剤、抗毒素製剤等への拡大、2)国家検定に用いられている動物実験の試験精度、再現性等の改善及び動物愛護の観点からの3Rs対応、3)ワクチン等の品質に係るリスクを客観的に評価し、品質リスクに応じて試験頻度及び試験項目を変更可能な国家検定の仕組みの提案、を主として検討した。
結果と考察
1)血液製剤については、令和元年7月よりSLP審査の試行を開始し、試行において明らかとなった問題点はその都度、メーカーや厚生労働省の関係各所と解決をはかり、施行開始とともにSLP審査制度を滞りなく導入することが出来るよう準備を進めた。また、SLP審査の信頼性の向上と効率化を目指し、SLP電子審査システムの構築を検討した。蛇毒抗毒素製剤については、乾燥まむしウマ抗毒素についてSLP審査の試行を行い、その他の抗毒素製剤は、検定申請の頻度や他製剤における経験等を踏まえ、試行を省略する形で進めることになった。
2)動物実験については、人道的エンドポイントの新たな指標として体温に着目し検討したところ、体温測定部位は剃毛が不要な肛門周囲の温度と被毛の薄い腹部の温度が、直腸温度と強い正の相関を認めた。また、体温を指標とした人道的エンドポイントの設定は、ボツリヌス抗毒素力価試験において有効であることが示唆された。はぶ毒素(出血II)に関して、ヒトの血清中には十分な抗出血II価が含まれているという科学的根拠に基づき、生物学的製剤基準からはぶ試験毒素(出血II)関係の記載が削除された。また、狂犬病ワクチン、B型肝炎ワクチン、4種混合ワクチンに含まれるセービン株由来不活化ポリオワクチン、破傷風トキソイドの力価試験について、実験動物を用いて免疫原性を評価するin vivo試験から抗原量を測定するin vitro試験への移行のための検討を進めた。インフルエンザHAワクチンの力価試験については、現在国家検定として実施されているSRD試験において、感染研成績と製造所成績の間に一部乖離が認められた。この原因の究明と適切な対応法の確立が、全ロット試験から一部ロット試験への移行には必要であると考えられた。
3)ワクチンに対する品質リスク評価手法の改善を図るため、これまでに実施した品質リスク評価(試行)に対するアンケート調査に基づいて、共通重要度の導入を行い、各製剤のリスク区分の区分けを試みた。共通重要度の導入によって、リスク評価により高い客観性を持たせることが期待できるが、実際の運用を行うためには、各製剤担当者を含めて幅広くコンセンサスが得られるリスク評価の手法を確立する必要がある。さらに、リスク評価に基づいて国家検定における試験実施頻度を設定する際の基本的な方針及び考え方について検討した。また、乾燥製剤のロットが同じであっても添付溶解液のロットが異なる場合は国家検定の申請を分ける必要があるが、これを適切に見直すことにより、品質確認の質的な低下等を招くことなく検定試験の不必要な重複を避けて、国家検定の効率化が見込めるため、早急に検討すべき課題である。
2)動物実験については、人道的エンドポイントの新たな指標として体温に着目し検討したところ、体温測定部位は剃毛が不要な肛門周囲の温度と被毛の薄い腹部の温度が、直腸温度と強い正の相関を認めた。また、体温を指標とした人道的エンドポイントの設定は、ボツリヌス抗毒素力価試験において有効であることが示唆された。はぶ毒素(出血II)に関して、ヒトの血清中には十分な抗出血II価が含まれているという科学的根拠に基づき、生物学的製剤基準からはぶ試験毒素(出血II)関係の記載が削除された。また、狂犬病ワクチン、B型肝炎ワクチン、4種混合ワクチンに含まれるセービン株由来不活化ポリオワクチン、破傷風トキソイドの力価試験について、実験動物を用いて免疫原性を評価するin vivo試験から抗原量を測定するin vitro試験への移行のための検討を進めた。インフルエンザHAワクチンの力価試験については、現在国家検定として実施されているSRD試験において、感染研成績と製造所成績の間に一部乖離が認められた。この原因の究明と適切な対応法の確立が、全ロット試験から一部ロット試験への移行には必要であると考えられた。
3)ワクチンに対する品質リスク評価手法の改善を図るため、これまでに実施した品質リスク評価(試行)に対するアンケート調査に基づいて、共通重要度の導入を行い、各製剤のリスク区分の区分けを試みた。共通重要度の導入によって、リスク評価により高い客観性を持たせることが期待できるが、実際の運用を行うためには、各製剤担当者を含めて幅広くコンセンサスが得られるリスク評価の手法を確立する必要がある。さらに、リスク評価に基づいて国家検定における試験実施頻度を設定する際の基本的な方針及び考え方について検討した。また、乾燥製剤のロットが同じであっても添付溶解液のロットが異なる場合は国家検定の申請を分ける必要があるが、これを適切に見直すことにより、品質確認の質的な低下等を招くことなく検定試験の不必要な重複を避けて、国家検定の効率化が見込めるため、早急に検討すべき課題である。
結論
血液製剤、抗毒素製剤等へのSLP審査導入については、令和3年7月に予定されている本格施行に向けた試行において明らかとなった問題点等の解決を図った。動物試験の検討では、本研究の結果を踏まえて生物学的製剤基準が改正され、狂犬病ワクチンの力価試験への人道的エンドポイントの導入(実験動物の苦痛軽減等)や、乾燥はぶウマ抗毒素におけるはぶ毒素(出血II)関係の記載の削除が行われた。国家検定に用いられる試験法については、主に動物試験の改良及び開発を行うことにより、試験精度及び再現性等の改善並びに3Rs対応を進めた。ワクチンの品質リスク評価については、共通重要度の導入を行い、各製剤のリスク区分の区分けを試みた。共通重要度の導入によって、リスク評価により高い客観性を持たせることが期待できる。国家検定にリスク評価を導入し品質リスクに応じて試験を実施することで、限られたリソースの有効活用、試験を実施しないロットでは検定期間の短縮が可能になる。
公開日・更新日
公開日
2021-05-31
更新日
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